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白銀の流星  作者: 世捨人
35/70

34話

騎士団対抗戦当日、学院に割り当てられた控え室でルイス達は作戦会議を行った。


「いよいよ本番だぞ。みんな気合はいってるな?」


「「はいっ」」


「ルイスは昨日の疲れ残ってないか?」


「大丈夫です」


「よし、団体戦は16チームの出場だから決勝まで4試合だぞ」


「先生、いきなり決勝狙いですか?」


「当たり前だ、出る以上常に勝つことしか考えてないぞ」


ギャランの言葉に選手達は笑い緊張をほぐしていった。


「さっそく団体戦のメンバーだが「先生」」


マイクはギャランの言葉を遮った。


「僕は今回見学させて欲しいんです」


「どうしたんだ?怪我でもしてるのか?」


「そうじゃないですよ。僕と他の人達では実力が違いすぎます。それに……」


「それに?」


「女子だけで優勝ってのも格好良くないですか?」


くったくのない笑顔で言うマイクに全員顔を見合わせ笑顔で答えた。


「それならマイク先輩は敵戦力の分析をお願いできませんか?」


「そういうのは得意だから良いよ」


「よし、それじゃあ出場メンバーは女子5名だ。マイクは敵戦力の分析を頼む。それと万一怪我人がでた時は出場できるよう覚悟だけはしとけ」


「「はい」」


「個人戦は……まあ頑張れ」


「扱い酷いなぁ~」


「仕方ねえだろ。お前達次第なんだから」


    あははははは




女子の着替えの為、男は全員部屋を追い出され廊下で話をしていた。


「俺達が当たるのは準決勝からだな」


「全員進出できると面白いんだけどなぁ~」


「面白いのはわかるが、難しいだろうな。相手は現役の騎士だぞ」


「そりゃそうだね。精一杯頑張るしかないね」


軽口を叩いていると控え室から女子が出てきた。


「おまたせ~」


「おお~、お揃いなんだね」


「どう似合う?」


クルリと身体を回転させ笑顔を見せるランは、ルイスの防具に似たデザインで真紅の防具を身に纏っていた。


「「似合ってるよ」」


「何時の間に作ったの?」


「ルイスの防具を見て直ぐにガリア君に頼んだのよ。そしたら工房主さんも手伝ってくれたみたいよ」


「そっか、後でお礼に行かなきゃね」


「当たり前よ。優勝旗持ってお礼に行くわ」


「ランちゃんらしいね」





開会式の後で組合せ抽選が行われ、個人戦の1回戦から開始された。


ハンスとビクターは危なげなく勝ち上がり、ロイは相手が防御した剣ごと吹き飛ばすという破壊力を見せ付けた。


ルイスは前日の試合と同じく防御に徹して隙をみつけて一撃で勝利を収めた。


個人戦全員が1回戦を突破したことを喜んでいるうちに団体戦の1回戦がはじまった。


相手チームはラン達を見て楽勝と思ったのか薄笑いを浮かべ余裕の表情を見せていた。


「レイラ姉さん、あれやっちゃう?」


「そうだな、どうせ上位には通用しない作戦だからな」


レイラは大将の印の襷をかけながらメンバーに耳打ちをして作戦を伝えた。


大将のレイラの前方をフランソワ、ラン、マリア、タニアの順で一直線に並ぶ陣形をとり、相手もそれぞれの正面に立つという陣形をとった。


「はじめっ」


前衛4人が正面の敵に斬りかかるかにみえたが、マリアは相手の脇をすりぬけ、まだ構えもとっていない敵の大将に飛び蹴りを放った。


相手の大将はなすすべもなく顔面に蹴りをくらい場外に吹き飛ばされてしまった。


「それまで」


たった2秒で決着が付き、相手チームや観客は呆気にとられ呆然としていたが、やがて会場から拍手と笑いの渦が巻き起こり相手チームは恥ずかしさで顔を赤くして試合場を去って行った。


ラン達はお互いにハイタッチをして会場に手を振りながらギャラン達のもとに帰っていった。


ギャランの横では男子メンバーやサポートのアネットやリンダまでが笑い転げていた。


「お前ら面白いこと考えたな」


「こんなに上手くいくなんて思ってなかったですわ」


ギャランの言葉にマリアが答え、ランやレイラも笑い転げていた。


「これで相手チームも油断しなくなるから、次からが大変だぞ?」


「先生、作戦はいっぱい考えてあるから大丈夫よ」


「そうなのか?」


「最悪正攻法でやっても負ける気はしないわ」


ランの力強い言葉にギャランは笑顔で頷いていたが「俺が監督なのに…」とひとりごちた。





2回戦もルイス達は個人戦を勝ちあがり、ラン達の団体戦を待っていた。


マイクは調べてきた情報をメンバーに伝え、レイラとランで次の作戦を決めメンバーに内容の確認をした。


「兄さん、ランちゃん達また何かやりそうですね」


「今度は相手も警戒してるから難しいが、突拍子もないことやりそうだな」


「ハンス、こういうのは面白いんだが、真面目なタニアさんやマリアさんが悪影響を受けなければいいんだがな」


「ビクター兄さん、もう遅いと思うよ」


「せめてリンダが影響をうけなきゃいいんだが……」


リンダに目をやると、ワクワクした顔でラン達を見ていた。


「手遅れか……」



試合場にあがったラン、フランソワ、マリアは軽くダッシュを繰り返し足元を確認した。


審判が用意を促すと、最前列にフランソワ、ラン、マリアの順に並び、ランの後方にタニア、レイラが縦にならんで全員が腰を落とし低く構えた。


相手チームは前列に4名で脇を抜かれないように壁をつくり、後方の大将は壁の左右に注意を注ぎ油断なく構えた。


「はじめっ」


フランソワとマリアは一瞬左右に走り始めたが立ち止まり、剣を構えた。


     ガシイイイィィィン


突如相手チームの後方で大きな音があがり、大将は地面に倒れ気を失っていた。


「それまでっ」


何が起こったのか分からない相手チームはオロオロしていたが、倒れた大将に駆け寄りなんとか抱えて試合場を去っていった。


会場からは大きな拍手と爆笑がわき上がり、ラン達は手を振って歓声に答え試合場から降りていった。


「やったやったぁ~」


上機嫌で戻ってきたランにギャランは尋ねた。


「何が起こったんだ?ここからじゃ見えんかったんだが」


タニアが笑いながら解説してくれた。


「単純なことですよ。前衛が左右に注意を引き付けている間に、わたくしがランちゃんを踏み台にして上空から踵落としを決めたんです」


「わはははは、相手もまさか上からくるとは思いもよらんかっただろうな」


話を聞いたルイス達も笑い転げ涙を流していた。


「あははははは、笑いすぎて試合より疲れるよ~」


「しかしランよ、次はエルザリアだろ。もう奇策は通用せんぞ?」


「次からは正攻法でいきます。個別撃破」


「それしかないだろうな」


笑いすぎで疲れてしまった男子達はリンダに回復魔術をかけてもらい次の試合に臨んだ。

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