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白銀の流星  作者: 世捨人
31/70

30話

ロイとガリアが工房を訪れていた頃、ルイスは一人で精霊神殿を訪れていた。


「ようこそいらっしゃいました、ルイス様」


「神官長、お忙しいのにわざわざお時間を頂戴して申し訳ありません」


「いえいえ、今日はいったいどういうご用件で?」


「はい、精霊神殿に伝わる神剣のことなんです」


「今はルイス様がお持ちであることは精霊から聞いておりますよ」


「装飾を取り外されて酷い状態で長年ルーベシア商会に眠っていたそうです」


「さようでしたか」


「誰にも抜けないので売られることはなかったようですね」


「その剣をルイス様が抜かれたということですな」


「そうなんです。剣が僕を主と認めたということらしいです」


ルイスは手をかざし剣を召喚した。


「この通り、呼べばいつでも手元に来てくれます」


「少し拝見できますか?」


ルイスは剣を手渡した。


「見事な装飾ですな。酷い状態だとおっしゃられたのに」


「ええ、地の精霊が修復してくれたんです」


「それはようございましたな」


ひょっこり現れた火の精霊ベヒモスがしげしげと剣を見て呟いた。


「すっげぇ力だな」


「こんにちは、火の精霊さん」


「おお、お前はこの前来てた奴だな。小憎らしいアーサーのガキにそっくりだ」


「あははは、アーサー様の子孫ですから」


「ルイス様、この剣はルイス様がお持ちになっててください」


「それをお願いしようと伺ったんです」


「さようでしたか。どうせルイス様にしか使えませんからな」


「ありがとうございます。大切に保管させていただきます」




同じ頃、ランはフランソワと共にレイラの部屋を訪ねていた。


    コンコン


「どうぞ」


「レイラ姉さん、おじゃま~」


「おじゃまします」


「これはラン様、フランちゃん」


ランはキョロキョロと部屋を見回し感想を言った。


「相変わらず色気がないわね~」


「色気でございますか?」


「せっかく美人なんだから何時男が尋ねてきても良いようにしなきゃだめよ」


「そういうランちゃんだって色気の欠片もないじゃない」


「私は良いのよ」


「あはははは、相変わらずですね」


「今日はレイラ姉さんに聞きたいことがあってきたの」


「恋愛の相談は無理ですよ」


「ち・ちがうわよ。試合のことよ」


「どのような事でしょうか」


「たぶん私達は団体戦のほうになると思うのよね」


「そうでしょうね。個人戦はハンス君、ビクター君、ルイス君で決まりでしょう」


「それでね、過去の実績での優勝候補が聞きたかったの」


「優勝候補ですか?それならレジアス、エルザリアでしょうね」


「やっぱりね~、それ以外に有力なところは?」


「シュベルトも強いですわね。あとはアッサム、ボガードってとこでございますね」


「そっかぁ~、身内ばっかりね」


「なにかお考えなのですか?」


「えへへ」


「ランちゃん、今のメンバーだったら相当良いとこまで行けるんじゃない?」


「そうですよラン様、フランちゃんの言う通りです」


「私が狙ってるのは優勝よ。それも個人と団体の完全優勝」


「あははは、ラン様らしいですわね」


「それでね、騎士団の連中って個人技に走りたがるでしょ。だから連携とかの作戦を考えたいなぁ~って」


「それは言えてますね。団体戦とはいっても1対1が5組という戦い方が主流ですからね」


「個人技でも負ける気はしないんだけど、せっかく団体戦なんだから楽しまなくっちゃ」


「ランちゃん、ルイス君の影響?」


「それはあるわね。あのハンスさんとの戦いを見たら、とても勝てそうにないってわかったの。

ルイスほどの実力を持った人がいるとは思えないけど、団体には団体の戦い方があるんじゃないかって思えたのよ」


「それは懸命なお考えですね」


「なぁ~んだ、ルイス君の悪戯好きの影響かと思ってたのに」


「フラン、そんな影響いらないわよ」


「それでは、こちらの戦力から作戦を考えましょう」


それから夜遅くまでラン達は様々な作戦を立案していった。





精霊神殿を出たルイスはルーベシア商会に立ち寄り、ティーサロンと交流館(仮称)の見積りを受け取った後で寮に戻りハンスの部屋を訪れた。


「兄さん、パトリックさんから見積り貰ってきたよ」


ハンスはルイスから書類を受け取り、一通り目を通した。


「思ったより安いな。これなら全然問題ない」


「そりゃよかったね。早くしろってランちゃん達が煩いんだよ」


「あははは、明日にでもお金は届けさせるさ」


「これで一段落だね。兄さんも練習に専念できそうだね」


「ああ、そうだな」


「兄さん、パトリックさんに貰った剣のことなんだけど」


「何かあったのか?」


「今日、精霊神殿で色々聞いてきたんだ」


「何か分かったのか?」


「うん、あの剣はアーサー様が精霊神殿に預けていた剣だったよ」


「それがなんでルーベシア商会にあったんだ?」


「100年以上前に盗難にあったらしくって行方不明になってたらしいんだ。

装飾部分は全部剥ぎ取られて、剣は転売されてルーベシア商会に流れ着いてたようなんだ」


「それじゃあ精霊神殿に返さなきゃな」


「そのことも神官長に話したんだけど、剣が僕を主と認めちゃってるから僕に預かって欲しいって」


「大事にしなきゃいけないな」


「地の精霊が剣を修復してくれて、凄く綺麗にしてくれたんだよ」


「そりゃ良かったな」


「こんなこともできるんだよ」


ルイスが手を伸ばし、何もない空間から剣が召喚された。


ハンスは驚き目を瞠った。


「心で願えば剣を呼んだり返したりできるんだ」


「すっげぇ~」


「当主の剣でも同じことができるって教えてくれたよ」


「そんなの初耳だぞ」


「実戦で使わなくなったから、使い方が忘れられていったんじゃないかな?」


「そうかもしれないな。平和であることは良いことだが、大事なことが失われていってるのかもな」

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