2話
入学式当日、大講堂に全校生徒が集まった。
父兄の参加は禁止されており、最前列に高等部新入生、後ろにいくほど高学年という席順で座っていた。
「みなさん入学おめでとう。本校は……」
長いありきたりの挨拶を延々と聞かされ、生徒達はうんざりしていたが黙って聞いていた。
「新入生の諸君は、この後出口に掲示してあるクラス分けを確認して各教室に行くように。
以上、解散」
生徒達はゾロゾロと退出して行き、新入生は掲示板の前に集まって自分のクラスを確認し教室に向かった。
「お~いルイス。起きてるかぁ~?」
眠そうな目でボーとしているルイスにロンウッドは話しかけた。
「僕はどのクラスだろ?」
「みんなA組で一緒だぞ。よかったなぁ」
「そうなんだ。じゃあ教室にいかなきゃね」
ロンウッドは、まだボーっとしているルイスの背中を押しながら教室に向かった。
空いている席に適当に座ってルイスはウトウトしはじめた。
パッカァァァ~ン
いきなりルイスの後頭部を殴りつけ、赤いショートカットの女の子が腕組みをしてルイスを見下ろしていた。
「何はじめから寝てんのよ。私に挨拶はないわけ?」
「ランちゃん、ひどいよ~」
唖然として見ている外野をよそにクスクスと笑いながら3人の少女が近づいてきた。
「ルーちゃん、あいかわらずね」
「リンダちゃん、フランちゃん、おはよ~」
「ルイスさん、おはようございます」
「ちょっと、私には挨拶なしなの?」
「ん?ランちゃんもおはよ」
「なによ、その扱いは。私はついでなの?」
クスクスと笑っているもう一人の女の子を見て、ルイスは首を傾げた。
「あっ、この子はねマリアちゃん。リンダちゃんと同じ部屋の子だよ。
昨日友達になったんだよ」
「マリアです。グランディアからの留学生です。よろしくお願いします」
『ルイスです。リンダちゃんは僕の従妹で、ランちゃんとフランちゃんは幼馴染です。よろしくね』
ルイスは流暢なグランディア語で挨拶した。
『とてもお上手なグランディア語ですね』
「ちょっとぉ~ 私にも分かるように話してよ~」
「ランちゃんもグランディア語は勉強したでしょ?」
「だって苦手なんだもん」
あはははは
ガラガラガラ
「よーし、みんな席につけっ」
全員席に着いたのを確認し話しはじめた。
「みんな、おはよう。俺が担任のガーランドだ。みんなには数学を教えることになる」
「みなさぁ~ん、おはよ~~~~。わたしは副担任のアネットよ~。魔術を教えるわぁ~」
生徒達は少し可愛そうな目でアネットを見ていた。
「まず、この学校での注意事項を説明しておく。
この学校では身分は一切関係ない。
家柄をひけらかせ迷惑をかけた者は罰を受けることになるからな。
次に、校内では名前だけで呼ぶことが決まっている。
これも身分を意識させない為だ。
それ以外は概ね自由だ。
わかったか?」
「「はい」」
「それじゃあ、まず自己紹介をしてくれ。こっちの端から順番だ」
いきなり指差されたランは戸惑いながらも立ち上がり自己紹介をはじめた。
「ランでーす。生まれも育ちも王都です。武術、特に剣術が得意です。よろしくね」
「フランソワです。10歳の頃からランちゃんの家に居候してます。よろしくお願いします」
「リンダです。わたくしも王都の出身ですが、身体が弱かったので王都の町を良く知りません。よろしくお願いいたします」
「マリアです。グランディアから留学してきました。ローレンシア語は大丈夫です。みなさん色々教えてください。」
………
「ルイスです。僕も王都出身です。おいしいお茶を淹れるのが趣味です。よろしくね」
腰まで真っ直ぐに伸びた白銀の髪を首の後ろで束ね、美形なのにどこかのんびりとした姿に女子生徒は溜息をついた。
「これで全員終わったな。これから3年は同じクラスになるんだから仲良くな」
「それじゃあ、班を決めてもらっちゃおうかなぁ~」
生徒達は首を傾げた。
「班ってのはだな、野外活動や、掃除当番なんかを一緒にやる単位だ。
5人一組で必ず男女混合するのが決まりになってる。
男女混合とはいっても、変な間違えおこすんじゃねえぞ」
あははははは
「それじゃあ班と班長を決めたら紙に書いて提出してくれ」
全員席を立ち、知り合いごとに集まっていった。
ロンウッドはピーターと共に積極的に女の子に声をかけはじめ、ロビンは子犬のように後ろをついてまわっていた。
ルイスはランにひっぱられ連れて行かれた。
「あんたは私達の班に決まりね」
「え~~~~僕の意思は?」
「そんなもの関係ないわ」
他の女の子から羨ましそうな目でみられルイスの班は決定した。
ロンウッド達はお嬢様風の女の子に追い払われたりしながらも、比較的出身地の近い女の子二人と班を組むことにした。
「私達の班の班長は誰にする?」
「僕は嫌だよ」
「じゃあリンダ?」
「わたくしは身体が弱いですから、皆様にご迷惑をかけるかもしれませんわ」
「フランちゃんが良いんじゃない?」
「ルイス、なんでよ」
「だってランちゃんの暴走を止められるのはフランちゃんだけだもん」
「わたくしですか?」
「そうですわね、フランソワさんなら面倒見も良いし賛成ですわ」
「じゃあフランソワにけってーーーい!」
ランは、さっさと紙にメンバーと班長を書き込みアネットに提出した。
しばらくして全員の班が決まりアネットに紙を提出した。
「次はクラス委員を決める。
クラス委員はクラスの代表として生徒会に参加したり、クラスの取りまとめをしてもらう大事な役目だ。
班長の中から選出するぞ。班長は集まってくれ」
4人の生徒が教室の前に集まった。
「誰かやりたい奴はいるか?」
「俺のような優秀な者がやるのが筋だと思う」
「キャメルよ、この学院に入学出来た者は全員優秀だぞ?」
「俺は入学試験で平均90以上だ。それより優秀な者などおらんだろう」
「お前は学年の10位にも入ってないぞ?」
「んな馬鹿な……」
「今年は満点合格者が4人もいたからな。お前は自意識過剰だ」
「他に誰かいるか?」
「せんせぇ~ 面倒だからアミダくじでいいんじゃない?」
「「賛成」」
アミダくじの結果、ロビンがクラス委員に決定した。
ロビンを教壇に残し全員が席に戻った。
「僕がクラス委員になりました。よろしくお願いします」
「他の班長は補佐をするように。今日はこれで解散だ。
教室の掃除当番は先ほどの紙の提出順に1班からだ。
明日からは授業が始まるから、みんな予習をしておくんだぞ」