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白銀の流星  作者: 世捨人
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25話

「最後はロイとルイスだな」


ロイとルイスは剣を構え対峙したまま、しばらく動きはなかった。


地の技も水の技も守り重視なので仕方ないのだが、フッとルイスが軽く動きロイに打って出た。


ロイはルイスの攻撃を弾き飛ばし、力強く踏み込み渾身の斬撃を与えた。


ルイスは弾かれた勢いをそのまま利用して身体を回転させ斬撃をかわしざまロイの懐に入り肘を鳩尾に叩き込んだ。


ロイは身体を『く』の字に曲げ地面に蹲り気を失った。


ルイスはそのままロイの腹部に手をあて治癒魔術を使った。


すぐに気がついたロイは、その場に座り大笑いした。


「いや~勝てるとは思ってなかったが、こうまであっさり負けちまうとわなぁ~」


「先輩、申し訳ありません」


「いや、いいんだ。俺の修行不足だからな」


「先輩は剣の選択を間違ってます。先輩ほどの力があれば大剣のほうが良いと思いますよ」


「そうなのか?」


「こんどギャラン先生に習ってみてはいかがですか?」


腕組みしたギャランが答えた。


「学院内では危険だからあえて教えなかったんだが、ロイも来年は卒業だから仕上げとして教えようとは思っていたんだ」


「危険?木剣でもですか?」


「ああ、お前の力で大剣を振れば受けた相手は最低でも骨折するだろうな」


「先生、今度は騎士団相手ですから遠慮なんかいらないんじゃないですか?」


「あははは、ルイスお前も意外と容赦ないな」


「だって周りの人達が容赦ない人達ばかりなんだもん」


ルイスはグルリと周囲を見回した。






「これで一通り実力はわかったな」


ギャランの言葉にニヤリと笑いながらハンスが話しかけた。


「先生、本当のルイスの力をみたくないですか?」


「どういうことだ?」


「ルイスは、まだ半分も力を見せてないってことですよ」


ビクターもニヤニヤ笑って様子を見ていた。


「ランもいつも手加減されてるの気付いてんだろ?」


「ええ、わかってたわよ」


「ランちゃんは負けると泣いちゃうからとか言い訳してたけどな」


「誰が負けて泣いたのよ、馬鹿ルイス!」


「だって~5歳の時泣いちゃったから~」


「そ・それはあんたが居なくなるって言うから……」


言った後でランは赤面しルイスに蹴りを入れ、周りの者は笑い転げた。


「まあ夫婦漫才はほっといて、ルイスやるぞ」





剣を持ったハンスに対して、無手でルイスは構えた。


ハンスの猛烈な攻撃をルイスは悉くかわしていくが、反撃には移れないでいた。


「ルイスどうした。本気で来い!」


ハンスは魔力で身体強化を行いどんどん加速していった。


ルイスが押され始めた時、急に目を閉じ動きが変わった。


それまで水特有の大きな円の動きだったものが小さく螺旋の動きに変わり、数cmで見切っていたものが数mmで躱すようになっていた。


それを見ていたフランソワが感嘆の言葉を漏らした。


「あれは風の防御……それも人間業とは思えないほど高度な技」


周囲の目にはハンスの攻撃がルイスをすり抜けているようにしか見えなかった。


一瞬ルイスの身体が揺らいだように見えた瞬間、ルイスはハンスの背後から肩を叩いていた。


「ふう~」


「やっぱり勝てなかったな」


見ていた者は唖然として言葉を失っていたが、いち早く正気に戻ったランがルイスに食って掛かった。


「ちょっとルイス、どういうこと。なんであんたが風の技なんて使ってるのよ!」


「え~変かな?」


「変とかそういう問題じゃないでしょ。なんで隠してたのよ」


「いやぁ~隠してた訳じゃなくって、ランちゃんや兄さんは火の技だから相性の良い水の技を使ってただけなんだけどなぁ~」


「まさか他にも使えるんじゃないでしょうね」


「一応全属性使えるよ」


さらりと答えるルイスに全員が呆れかえり言葉を失った。




ギャランは周囲を見回して溜息をついた。


「今日の練習を非公開にしといてよかった」


「確かにそうですね。もし今日の練習をだれかが見ていたら大騒ぎですわね」


ギャランとレイラは顔を見合わせ苦笑していた。


「ルーちゃんすごぉ~い」


武術に関しては全くの素人のリンダは無邪気にルイスに飛びつきニコニコしていた。


「リンダ、凄いっていうレベルじゃないんだぞ?」


「兄様、そんなに凄いことなの?」


「魔術に置き換えてみろ、全属性の魔術を使えるのと同じことなんだぞ」


リンダは不思議そうな顔をしていたが、みるみる目を見開き驚きの表情をうかべた。


「そんなに凄いことじゃないよ~」


「凄い敗北感があるわ」


「だってランちゃんだってレイラさんとの試合で水の技使ってたじゃん」


「あれはレイラ姉さんの気をそらすためでしょ」


「レイラさんはどんな感じがした?」


「そうね、ラン様と私は同門だから全ての攻撃を知ってると思ってたから、戸惑ったわね」


「でしょ、みんな相手の属性は一つだと思い込んでるだけなんだ。

でも兄さんは僕と何度も練習してるから知ってて、戸惑うこともなかった。

今度の大会では、これが勝利の鍵になると思わない?」


「どういうことよ」


「大人達は僕達以上に既成概念に捉われてるってことだよ。

特に騎士団の人達は自分の属性に拘ってる」


「ああ、そこに他の技を混ぜるわけね」


「そういうこと」


ラン達は悪戯を思いついた子供のような表情で笑った。


ギャランは腕組みをして、しばらく考えた後ルイス達を見て笑った。


「おいおい、お前らとんでもないこと考えやがるな。

その方法なら騎士団の連中ぶったまげるぞ」


「みんな武術の基礎を習った時に、一通り他の型も習ったでしょ?

それを使っちゃいけないなんて誰も決めてないんだ。

勉強だって外国語や数学とか色々習って、全部を知識として使うんだから武術でも一緒だよ」


「確かにそう言われるとそうだよね。

もっとも僕はその基礎すらやり直さなきゃいけないレベルだけどね」


マイクは自嘲気味に笑いながらルイスの言葉に納得した。


「なんとなくルイスさんの強さの秘密が分かったような気がしますわ。

自由な発想と行動力、これが最大の武器なんですね。

あの美味しいお茶もその発想から生まれたのなら納得できますわ」


マリアの言葉にレイラとタニアは首を傾げた。


「お茶?昨日飲ませてもらった物ですか?」


「レイラさん、タニアさん ルイスブレンドって聞いたことございませんか?」


「ルーベシア商会で売ってるお茶でしょ?我が家でも……ルイス…ブレンド……もしかして」


レイラとタニアは顔を見合わせた後でルイスを見た。


「あはははは」


「ご愛用ありがとうございます。ルイスブレンド支配人ハンスでございます」


汗を流しながら空笑いするルイスの横で、ハンスは悪戯っぽく笑いながら頭を下げた。



誤字・脱字がございましたらご連絡ください。

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