22話
「それじゃあ、みんな適当な間隔で広がって、体術の型をやってみろ」
参加者達は付近の生徒の邪魔にならないように広がり、得意な体術の型を始めた。
ギャランと大学部の代表は生徒の間を回り、実力不足の生徒に次々と失格を言い渡していった。
おおよそ半分が失格となったところで「止め」の声がかかり生徒達は動きを止めた。
「次は剣を持って俺達のところに来い」
生徒達は何のことかわからないまま、剣を持ってギャラン達のところに行き鞘から剣を抜くよう指示された。
ギャラン達は1本1本丁寧に剣を見ていき、5名の者に失格を言い渡した。
「先生、俺の剣が安物だからですか?」
失格を言い渡された生徒がギャランに抗議した。
「剣の質ではない。手入れだ。人を守り、人の命を奪うかもしれない物を粗末に扱うような奴に参加資格はない」
その生徒の剣は薄汚れ、刃こぼれし長い間手入れをした様子はなかった。
「さあ、もう1回広がって、今度は剣と使った型をやってみろ」
体術の時とおなじようにギャラン達は見てまわり、次々と失格者をだしていった。
失格した者は、「やっぱりな」とか「くそっ」とかいいながら観客席に移動していった。
残り10名となったところで「止め」の声がかかり、参加者達は一息ついた。
「今から協議をするから、みんな休憩しててくれ」
ギャランは声をかけた後、大学部の4人と話し合いを始めた。
残された10名は、剣を鞘に仕舞い汗を拭ったり、知り合いと話をしたりしてすごしていると、直ぐにギャランから集合の声がかかった。
「よぉーし、今回は揉めることもなく、ほぼ意見が一致した」
10名の生徒と観客は息を呑み発表を待った。
「それじゃあ発表するぞ。まず3年のタニア」
観客席から拍手が巻き起こり、タニアと呼ばれた女子生徒は一歩前に進み出て頭を下げた。
「さすが去年のメンバーといったところだな。次、2年のマイク」
マイクと呼ばれた男子生徒は観客に手を振って一歩前にでた。
「ここからは学院史上初だ。新入生から4名、ルイス、ラン、マリア、フランソワ」
観客席からどよめきが起こり、当然と言わんばかりに胸を張ったランが一歩前に進み出た。
「先生、俺達が新入生より劣ってるということですか?」
選考から漏れた生徒が怒りで顔を赤く染めて抗議した。
「そういうことだ。全員一致だと言っただろう?」
「納得できるもんか!」
選考から漏れた生徒が次々と抗議の声をあげ、観客席からも批難の声があがった。
「タニアとマイクについては問題ないんだな?」
「タニア先輩とマイクは学院内でも有名ですから問題ありません」
ギャランはポリポリと頭を掻きながら新入生の方を見て話しかけた。
「こいつらが納得せんようだが、試合してもらっても良いかな?」
「もちろん、かまいません」
ランはイキイキした表情で答えた。
「そういうことで、試合をしてみろ。相手はお前達に選ばせてやる」
新入生と上級生は左右に分かれ、用意された木剣を片手に出番を待った。
「俺が審判をやる。誰からでもいいぞ」
一番先に文句を言った生徒が前にでて、フランソワを指名した。
フランソワは特に意気込むわけでもなく、相手の前に進んで剣を構えた。
「はじめっ!」
フランソワは、相手の正眼に構えた剣の周囲をクルリと剣で螺旋を描くと上に跳ね上げた。
剣は手を離れ宙に舞い上がり、その間にフランソワの剣は相手の咽喉元に突きつけられていた。
「それまでっ!」
あっけないほど簡単に試合が終わり、相手の生徒も呆然としていた。
「次っ!早く前に出ろ」
次の生徒はランを指名したが、試合開始すぐにランが相手の剣を叩き落し試合終了。
次の生徒はマリアに剣を使われることもなく頭部に蹴りを入れられ意識を失った。
最後に残った生徒はルイスにヤケクソ気味に突きをいれたが、あっさりかわされ足を引っ掛けられ無様に転倒してしまった。
「これで納得したか?」
ギャランの言葉に項垂れて生徒達は観客席に帰っていった。
「これで選手は決定だな。改めて紹介するぞ。
今回の主将 大学部1年のハンス 前年個人3位だ。
副将 大学部1年 ビクター 前年個人5位だ。
それから、昨年のメンバー 大学部2年 レイラ。
同じく 大学部2年 ロイ。
同じく 高等部3年 タニア。
新メンバー 高等部2年 マイク。
同じく 高等部1年 ルイス。
同じく 高等部1年 ラン。
同じく 高等部1年 フランソワ。
同じく 高等部1年 マリア。
監督は俺 ギャランが勤める。
治癒担当はアネット教諭。
助手は高等部1年 リンダ。
以上だ」
観客席から拍手が沸き起こり、選手達は手を振って声援に答えた。
選手達はギャランに連れられ、教員用の小会議室に入っていった。
「今回は顔見知りが多そうだな」
「そうなんですか?」
ギャランの呟きにマイクが問いかけた。
「ああ、新入生4人はクラスでも同じ班だし、ルイスはハンスの弟だ。
治癒助手のリンダはビクターの妹だしな」
ランはレイラの顔をじっと見て、首をかしげながら声をかけた。
「もしかしてレイラ姉さん?」
「覚えていてくださいましたか、ラン様」
「やっぱりレイラ姉さんだぁ~、ほれフラン、レイラ姉さんよ」
フランソワは目をまるくして驚きながらもレイラに抱きついた。
「レイラ姉さん、会いたかったわぁ~」
「お二人ともかわりませんね」
様子を眺めていたギャランがレイラに聞いた。
「レイラ、知り合いなのか?」
「はい、わたしが武術を習ってた先生の娘さんと後輩なんです」
「そうか、それじゃあ紹介の手間はいらんな」
と横を見るとマリアとタニアも抱き合って再会を喜んでいた。
「おいおい、こっちも知り合いか?」
「はい、父がグランディア大使をしておりました頃、お世話になった方の娘さんなんです」
「武術の同門でもありますわ」
まったく無関係のロイとマイクは顔を見合わせた。
「それじゃあ、ロイとマイクの紹介だけでいいな。
ロイは学院に入ってはじめて武術を学んだんだが、才能に恵まれていてな高等部3年から選手になったんだ。
それからマイクは高等部2年では最強と言われてる天才だ」
「「「よろしくおねがいしまぁ~す」」」
新入生は元気良く頭を下げた。
「先生、治癒助手はなんでリンダさんに決まったんですか?」
マイクの質問にビクターが口をはさんだ。
「俺の推薦だ」
「先輩、大丈夫なんですか?」
「リンダは子供の頃から身体が弱くてな、治癒魔術をずっと勉強してたんだ。
俺が練習で怪我をした時などは、いつもリンダが治してくれていたんだ。
治癒魔術の腕はアネット先生と同等くらいだぞ」
「それはわたしが保証するわよ~」
アネットとリンダが人数分の飲み物を持って入ってきた。
その後、しばらく練習日程や談笑をしてから解散となった。
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