21話
ビクターとハンスが女子と夕食を共にしたという噂は、すぐに女子寮の上級生の間をかけめぐった。
「どういうことなの?誰か詳しいこと知らない?」
「レストランで食事をしてた女子にビクター様とハンス様から相席を申し出たらしいわよ」
「なによっそれ、誰がお誘いしても食事をご一緒にできなかったのよ」
「どうやら新入生らしいわ」
新入生に知り合いのいる女子が情報を集めに走り回り、様々な情報が寄せられた。
問題の新入生は先日の夜会に招かれた成績優秀な生徒である。
ひとりは留学生である。
白銀の髪は男の子である。(問題なし)
ビクターもハンスも終始機嫌よくしていた。
ビクターはひ弱そうな女の子の頭を撫でていた
……
「ということは夜会で仲良くなったということなのかしら?」
「なんにせよ許されないわ」
「新入生なんかに盗られてたまるもんですか」
翌朝の女子寮の朝食では異様な雰囲気に包まれていた。
「なんか見られてるような気がしますね」
「なんなのかしら?」
「別に気にすることないんじゃない?」
「やなかんじ~」
周囲からの視線を無視してラン達はさっさと朝食を終え教室に向かった。
すでに教室に来ていたイシュア達に食堂での雰囲気を話してみた。
「そういえば上級生がランちゃん達のことを嗅ぎまわってたわよ」
「どういうこと?」
「よくわかんないけど、昨日の夕食がどうのこうのって」
「昨日の夕食?リンダちゃんのお兄さんとルイスのお兄さんと一緒に食べただけだけどなぁ~」
「気にしなくってもいいんじゃない?」
「そうね。それよりイシュアちゃん、いろいろ決まってきたみたいよ」
「ランちゃん、なにが?」
「例のティーサロンのことよ」
「ほんと?早くできるといいなぁ~」
「そうね。学院のオープンカフェとかでも食べれるといいのにねぇ~」
一方、のんびりと教室に向かっていたルイスは数人の上級生の女子に囲まれた。
「あんたね、昨日ビクター様やハンス様と食事をしたのは?」
「ええ、そうですけど」
「あの方達に新入生が近づくなど言語道断です。以後慎みなさい」
上級生達は言いたい事だけ言い立ち去っていった。
しばらくポカァ~ンとした後でルイスは教室に向かった。
朝のHRで担任のガーランドから連絡事項があった。
「本日の午後の授業は中止となった。
王都出身の者は知ってると思うが、1ヶ月後に開催される騎士団対抗戦に学院も参加するんだが、その選手選考会を行うためだ。
代表に選ばれるのは大学部から4人、高等部から6人だ。
その中から個人戦に3人、団体戦に5人が出場する。
二人は補欠ということだな。
武術競技だから、身体強化以外の魔術は禁止されている。
新入生も参加資格があるので、参加希望のものは着替えたうえで自分の武具を持って運動場に集合するように。
残った者は応援に参加しろよ」
「「はーい」」
「質問はあるか?」
「どこの騎士団がでるんですか?」
「各地の騎士団だな。国の4大騎士団は参加しない。
この対抗戦は4大騎士団への入団試験でもあるからな」
「うちの学院は強いんですか?」
「昨年の団体戦は初戦敗退だが、個人戦では3位と5位に入ったぞ」
「団体戦って?」
「5対5で戦って相手の大将を先に討ち取ったほうが勝ちだ」
「初戦敗退ってのは弱いんだねー」
「馬鹿野郎、相手はレジアス騎士団だったんだぞ。勝てる訳ないだろ」
あはははは
午前中の授業が終了して、早めに昼食をとったラン達は気合充分で運動場に来ていた。
観客席にリンダと並んで座っているルイスの襟首を後ろから掴んで声がかかった。
「ルイス、お前こんなところで何してるんだ?」
首が絞まってジタバタしているルイスを横目にリンダが声をかけた。
「お兄様、何してらっしゃるの?」
ビクターはルイスを地面に降ろし寮を指差して「さっさと着替えて来い!」と言い放った。
ルイスは涙目になりながら寮に向かって走り去っていった。
「リンダ、ルイスは強制参加させるぞ」
「あらら、ルーちゃん大変ね~」
全然大変そうでなさそうに言うリンダに苦笑しながら
「リンダ、お前はアネット教諭の助手で治癒に参加してもらうぞ」
「それなら、わたくしでもできそうですわね」
リンダはビクターに手をひかれアネットの所に連れて行かれた。
「アネット先生、こいつを助手に使ってください」
「あら~リンダちゃん。あなたなら治癒魔術大丈夫そうね~」
「せんせ~、よろしくおねがいしまぁ~す」
一見頼りない治癒係り兼マネージャーであった。
運動場に集まった生徒は、各学年から約20名づつ合計60人程度が集まっていた。
武術教師のギャランと大学部の代表4人が現れ、集まった生徒達に声をかけた。
「集合!」
ギャランの前に生徒達が集まってきた。
「これから選考を始める。
俺が代表チームの監督をする。
こっちの4人は大学部の選手だ。
俺とこいつらで選考メンバーを決めるから、指示に従うように」
「「「はい」」」
「まず注意事項だ。
身体強化以外の魔術は使用禁止、それはいいな?」
「「「はい」」」
「選考は学年や過去の経歴なぞ考慮しない、今の実力がすべてだ」
「「「はい」」」
「高等部からは6名選ばれる。みんな存分に力を発揮してくれ」
「「「はい」」」
「それから万一怪我をした者がいたら、あちらに控えているアネット教諭と助手の者がいるから治癒してもらえ」
ギャランが指差した方向を見ると、アネットとリンダがヒラヒラと手を振っていた。
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