17話
デロリアン親子を見送った後、ルイスはフランソワの父スタイン伯爵に話しかけた。
「スタイン伯爵、面倒をおかけしました」
「いえいえ、娘から凡その事情は聞いておりましたから、いつかお灸を据えてやろうと考えてたんですよ」
「大体ルイスは甘すぎるのよ。もっとガツンとやればよかったのに」
「ランちゃん、それをやったら僕たちも彼等と同じだよ。
家名や家柄で相手を威圧するなんて僕にはできないよ。
それに僕はランちゃんや兄上と違って家を継ぐ立場じゃないからね」
「それもそうね。
私もまだ家名を継げるほどの腕じゃないわ。
もっと頑張ってビクター殿下やハンスさんに勝てるくらいの腕にならなきゃ恥ずかしいわ」
「頼もしいかぎりですな。
若者が頑張る姿をみせられては、我々大人も手本となるよう心がけねばなりませんな」
雰囲気が和らいだところで、やっとイシュアは平静を取り戻した。
「ランちゃんとルイス君が公爵家、リンダちゃんが王女様?いや、ラン様、ルイス様、リンダ様」
「あはははは、イシュアさん今まで通りでいいよ。学院の同級生それだけさ」
「うん、わかった」
ガリアとガーランドは再び猛烈な勢いで食べ始めた。
一段落したところで、ランとフランソワは先ほど声をかけてきた子女達のところに行き談笑を始めた。
ルイスは兄ハンスに手招きされて席を立った。
子女に囲まれたハンスとビクターのもとに近づくと子女達は少し場所を空けルイスを通してくれた。
「なにか用?」
敬意など欠片もない物言いに子女達はルイスを睨みつけたがハンスは気にかけた様子もなく答えた。
「良い機会だから父上達と例の件を少し話したくてな、お前の意見も聞きたいんだ」
「僕は別にかまわないよ。ビクター兄さんも一緒に?」
ルイスはビクターに目をやり、ビクターも頷いた。
「ああ、みんな こいつは俺の弟のルイスだ。
夜会は初めてなんだ。今後は顔を出すだろうから仲良くしてやってくれ」
「「「はい」」」
子女達は途端に笑顔になりルイスに頭を下げた。
「申し訳ないが、聞いての通りこれから父上や陛下と用事があるんで失礼するよ」
ハンスとビクターはルイスの肩を抱きながら立ち去っていった。
「兄さん達、脱出の口実に僕を利用したんでしょ」
「あはははは、細かいことを言うな、話合いは本当のことだ」
ルイス達は国王や公爵家が集まっている集団に近づき、話をはじめた。
ルイスが経緯を話しハンスが細かい需要予測を加えて問題点を並べ、エルザリア家だけでは対処が難しい現状を話した。
すでに父マックスから話を聞いていた国王や他の公爵達はハンスやルイスから細かい情報を得て近日中に答えを出すことを約束した。
テーブルに残ってデザートを食べながらマリア、イシュアと話していたリンダに背後から声がかかった。
「リンダ、お友達もできたみたいね」
「お母様」
「「リンダ様、お久しぶりですわね」」
「カレン伯母様、ロザリア伯母様、おひさしぶりです」
3人の貴婦人がイシュアを見て声をあげた。
「まあ、こちらがパメラちゃんの娘さんね」
「そっくりだわねぇ~」
「ほんと、よく似てるわ」
「あ・あの……母をご存知なのですか?」
「ええ、よく知ってるわよ。
私達とは学院で同級生だったのよ」
婦人達もデザートを食べながら、ひとしきりイシュアの母の昔話で盛り上がった。
リンダとマリアは話があまり分からないので、デザートをつつきながら今日のデザートの話をしていた。
「マリアさん、グランディアのお菓子ってたくさん種類があるのね」
「そうかな?わたくしからみればローレンシアのお菓子は珍しい物ばかりだわよ」
「こんなお菓子がいつでも食べれればいいのにね」
「それはそうだけど、太ってしまいますわよ」
「だってルーちゃんが太らないお茶って作ってくれたじゃない」
いきなり横から婦人達が話しに割り込んできた。
「その話はルイスから聞いたけど、味はどうなの?」
「お茶だけで飲むと少し渋いけど、お菓子と一緒だとお菓子の甘味がひきたってとても美味しかったですよ」
「そのお茶があれば甘いものが沢山食べれますわね」
一同は拳をにぎり目を輝かせた。
「沢山のお菓子……お茶……太らない……ティーサロンでもあればいつでも買いに行ったり、外出した時に寄ったりできるのになぁ~」
イシュアがポツリと独り言を言った。
「それいいわね。おしゃれなティーサロンで美味しいお菓子とお茶」
「ルイスにお菓子ごとに合うお茶を組合させてセットで……」
「ルーベシア商会でやりなさい。資金はわたくし達が出してあげるから」
誰一人反対意見を出すはずもなく、面倒なことはルイスに押し付ける形でティーサロン開店計画が始まってしまった。
少し離れたところに居たランやフランソワも話に加わったことで、ルイスは拒否権すらも失ってしまった。
マリアは大使を呼び、大使館同士の繋がりで料理人にお菓子の提供もしくは製造の指導が可能か否かを早急に調べるよう申しつけ、最早ティーサロンは開店することが前提で話が進んでいった。
婦人達に呼びつけられたルイスは脱力し、ハンスは薬草の需要予測を再計算し薬草増産計画の見直しを迫られた。
誤字・脱字がございましたらご連絡ください。