16話
夜会当日の午後、男子寮の前にルイス達出席する生徒が待っていると正装をしたガーランドと学院長がやってきた。
「みんな揃ってるな」
「「「はい」」」
ガーランドは緊張した面持ちで服装を気にしながら落ち着かない様子だった。
「先生、少しは落ち着いたら?」
「そうは言ってもな、俺も初めてなんだよ」
ランとフランソワはガーランドの服装を整えてやり、学院長は苦笑いしていた。
「ガーランド君、緊張するのは分かるが生徒に心配されるようではいかんぞ」
「まことに申し訳ありません」
やがて王城からの迎えの馬車が到着し、一同は馬車に乗り込んだ。
王城に到着した一行は案内係に控え室に通され、先に到着していた各国の大使達と挨拶を交わした。
生徒達の到着を聞き、部屋を訪れた教育省の役人と学院長、ガーランドは挨拶を交わした後、今後の予定の説明を受けていた。
何もすることがない生徒達はソファーに腰掛け、用意されたお茶とお菓子で寛いでいた。
イシュアはティーカップや調度品などを眺めては感心し、「さすがに一流品ね」と感想を漏らしていた。
やがて案内係が部屋を訪れ、一行を夜会会場に案内した。
司会進行役の役人が魔術で会場内に声を響かせ、生徒の入場を知らせた。
会場内には多数の着飾った人々がおり、生徒達の入場を拍手で迎えた。
一段高い場所に生徒達と国の重鎮達が揃い、重鎮達の長い挨拶のあとで国王自らが生徒達に歓迎の言葉を述べた。
生徒の代表としてマリアが国王やローレンシア神聖王国に対し謝辞を述べ、歓迎式典は終了し夜会へと移行した。
全員が舞台から降り、談笑している国王陛下や国家の重鎮達のところに学院長に連れられた生徒一同が赴き、挨拶をかわした。
「陛下、今夜のお招き感謝いたします」
学院長以下生徒達は深々と頭を下げた。
「よいよい、マリア殿も立派な挨拶であった。
今宵はゆっくり楽しまれるが良い」
「ありがとうございます」
挨拶を終えた一同はバイキング方式に用意された食事を手に、空いたテーブルに座って食事をはじめた。
なかでもガリアとガーランドは皿に大盛りにした食事をあっという間にたいらげて周囲を驚かせていた。
その頃、ビクターとハンスは貴族の子女に囲まれ身動きが取れない状態ながら、顔では笑みを浮かべたまま脱出する機会を窺っていた。
ルイスはラン達の食事がそろそろ終わりデザートに意識を向け始めるのを感じ、給仕の者にリンダ専用のお茶を用意させるように頼んだ。
ラン達がデザートを選びに席を立つと、遠巻きに眺めていた子女達がランとフランソワに近づき話しかけた。
「ラン様、フランソワさんおひさしぶりです」
「あら、ひさしぶりね~。デザートの後でゆっくり話そうね」
気軽に返事をしてデザートコーナーに足をむけた。
そこにはグランディア、ソヴィエ、シンカのデザートも用意され、乙女達の関心をそちらに向けた。
マリアやイシュアが自国のデザートを簡単に説明し、それぞれお皿に好みのデザートを乗せ席に戻った。
ルイスは用意された茶器でみんなに、お茶を淹れた。
「今日のお茶はリンダちゃん用の物だから、体内の浄化と内臓の強化の効果があるよ」
みんながデザートとお茶に舌鼓をうっていると、ルイスの後ろから声がかかった。
「おい、こんなとこまできてそんなお茶だすんじゃない」
「同じ学院の生徒として恥ずかしいですわ」
周囲の人間がギョッとして注目が集まった。
「ああ、キャメル君にドロシーさん 君達も来てたんだね」
「当たり前だ。俺達は伯爵家だからな」
ふんぞり返って偉そうに言うキャメルに向かってノンビリとした口調でルイスが答えた。
「そんなとこに立ってないで、一緒にデザートどう?おいしいよ?」
「ここは学院ではない。もう少しましな言葉遣いをしろ。そもそも身分の上の者にむかって座ったまま受け答えするとは何事だ!」
周囲の者はテーブルの方に向かって冷ややかな視線を送った。
でっぷりと太った中年貴族が近づきルイスに声をかけた。
「お前はこの前の失礼な小僧であったな。
まだ我々にむかって失礼な態度をとるのか。
お前の家を潰すことなぞ訳もないことなんだぞ」
何も知らないイシュアやガリアは蒼い顔をしてルイスを見ていた。
学院長とガーランドは苦笑いをし、リンダとマリアは冷めた目で親子を見た。
ランとフランソワは必死で笑いを堪えていたが、ついに吹き出してしまった。
「小娘、なにが可笑しいか!」
「いやぁ~だって~、あはははは」
ドロシーは異様な気配を感じ取り、デロリアン親子から離れた。
デロリアン親子の後ろからふいに声がかかった。
「デロリアン伯爵、どうかなさいましたか?」
「これはスタイン伯爵、この者共が我等に失礼なことばかり申すものですから」
「それにしても家を潰すとは穏やかではありませんな」
「この小僧は儂に対し『自分のことは自分でできるよう躾けろ』なぞと愚弄したんですぞ」
それを聞いて益々笑いはじめたランとフランソワをデロリアンは睨みつけた。
「お前達も同じ目にあわせてやろうか」
「それは困りますな」
「ん?スタイン伯爵?」
「うちの娘ですからな。高名なデロリアン伯爵に潰されるとあっては、弱小ながら我が家としても抵抗させていただきますぞ」
「お父様、我が家の危機を招き申し訳ございません」
フランソワは笑いで涙を流しながら父スタイン伯爵に頭を下げた。
「な・なんと……」
「それでデロリアン伯爵はエルザリア公爵家ご次男のルイス様とレジアス公爵家令嬢のラン様のご実家を潰されるのですよね」
「公爵家?」
デロリアン親子は完全に血の気がひき真っ青な顔になった。
「ついでだから教えてあげるけどキャメル君、君が足蹴にしようとしたリンダちゃんは第一王女様だよ」
「お・おうじょさま……?」
キャメルは全く表情を失い、ガタガタと震えはじめた。
デロリアン伯爵はキャメルの頭を押さえつけ自分も深々と頭を下げた。
「知らぬこととは申せ、まことに失礼の数々、平にお許しを」
ルイスは飄々とした口調でキャメルに話しかけた。
「僕は気にしてないよ。
貴族の家柄はご先祖様が拝領したものであって、僕たちが自分の力で手に入れたものじゃないんだ。
その家柄に恥じないよう自分自身を磨いて家柄にふさわしい人間になることが大事なんだよ。
今度から学院でも仲良くしようね。
それと僕たちの身分のことは絶対口外しないでね」
ルイスはリンダとランを交互にみた。
「ルーちゃんがそれでいいなら、わたくしもかまいませんよ」
「ルイスがいいならそれでいいわ。ただし、今度なにかしたら許さないわよ」
「デロリアン伯爵、今回はルイス様の顔をたてて不問としますが2度はないですぞ」
「もちろんわかっております。それでは失礼します」
デロリアン親子は脱兎のごとく逃げ出していった。
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