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白銀の流星  作者: 世捨人
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11話

体術の授業が終わった後、全員教室に向かった。


「わたくし手を洗ってくるわね」


リンダは一言言って教室のドアを開けた。


    ドン


リンダはドアの向こうにいた人にぶつかり、尻餅をついた。


「あいたたたた」


「ふん、人にぶつかっておいて侘びもなしか」


「あ、ごめんなさい」


「この無礼者めがっ!」


キャメルは尻餅をついているリンダにおもいきり蹴りを放った。


    ガンッ


「キャァァァァ」


「ううう」


リンダは頭を抱えて身を縮こまらせ、キャメルは足を抑え蹲っていた。


「リンダちゃん、大丈夫?」


「う、うん」


ルイスがリンダに近寄り声をかけてリンダを引き起こした。


何が起こったのか分からず呆けた顔をしていたリンダは首を傾げた。


「なにがおこったの?」


「リンダちゃんの周りに守りの結界を張っただけだよ」


「ありがとう、ルーちゃん」


ルイスはキャメルに振り返り、いつものノンビリとした表情を一変させた。


「おい、どういうつもりだ」


キャメルは押さえていた足をはなし立ち上がった。


「無礼者に制裁を加えようとしただけだ」


「無礼者だと?」


「下賤の者が俺にぶつかるなど許されるものではない」


「ぶつかったのはキャメルもリンダちゃんもお互いが不注意だったんじゃないのか?」


「お前は世間を知らぬようだな。

平民は俺達のように高貴な者を敬うのが当たり前なんだ。

その平民が俺にぶつかるなどという無礼を働いたんだ、制裁を受けて当然だ」


キャメルの後ろにいたドロシー達は頷き、教室内にいた生徒は怒りの表情を浮かべた。


「この学院では身分など関係ないということを忘れたのか?」


「平民が俺達を敬えば何も問題は起きないのだ」


「話にならんな。規則を破り他人に迷惑をかけて平気な顔をしているような人間を敬う者などこの学院にはいないよ」


「おのれ、この俺を愚弄するかっ!」


キャメルはルイスの胸倉を掴み殴りかかったが、ルイスはほんの少し顔を動かしただけで拳をよけてしまった。


「体術も稚拙だな」


キャメルは怒りで顔を赤く染め、再度殴りかかろうとした。


「お前ら何やってるっ!」


担任のガーランドが教室に入ってくるなり大声をあげた。


キャメルはガーランドに目をやりルイスから手をはなした。


「無礼者に制裁を加えようとしただけだ」


キャメルは踵をかえし教室から出て行った。






生徒達はそれぞれの席に着いた。


「お前ら揉め事はいかんぞ」


ガーランドの言葉にルイスは立ち上がり謝罪した。


「お騒がせして申し訳ありません」


「先生、ルイスは悪くないですよ」


ロビンが事の経緯を説明した。



「すいません、わたくしがぶつかったばかりに皆様にご迷惑をかけてしまいました」


「リンダは気にしなくて良いぞ」


ガーランドはリンダに声をかけた後、少し考えこんだ。


「毎年この時期には少なからず揉め事はあるんだが、あれほど身分に拘る奴は珍しいな」


「先生、キャメル達ってそんなに身分が高いんですか?」


「はっきりと教えることはできんが、貴族としては中位だな」


「それより上位の人に意見してもらうわけにはいかないのですか?」


「この学院では身分は関係ないのが原則だから、それを学院側が崩すことはできん」


「とりあえず、学問と武術を頑張って彼らより上位になればいいんじゃないか?」


「おお!?ピーターがまともな事しゃべった」


「ロン、俺だって真面目になる時はあるぞ」


    あははははは





「くそっ!忌々しいやつめ」


「キャメルさん、少し落ち着いてくださいよ」


「やつらの弱点、なにも出来ないリンダを甚振る絶好のチャンスだったんだぞ」


「それじゃあ、やつらの弱点っていうのは?」


「リンダのことだ」


「それにしてもルイスが、魔術まで使うとは思いませんでしたわ」


「バズル、アルト、奴らの素性はまだわからんのか?」


「ええ、王都に家があること以外わかりません」


「今度の休みに後をつけてでも突き止めるんだ」


「わかりました」





ルイス達は掃除を済ませ寮に帰った。


「ルイス、あいつらの事大丈夫なのか?」


「ん?なにが?」


「だってルイスの家は王都だろ?やつらに嫌がらせとかされないのか?」


「あはははは、そんな事気にしないで良いよ。

王都に代々住んでれば、それなりに人脈はあるからね」


「それならいいんだが」


「ロン君こそアルバイトとか困ってないの?」


「それがな、先生の勧めで奨学金申請したらあっさり通っちゃってなアルバイトしなくても大丈夫になったんだ」


「それなら学業に専念できるね」


「ああ、他のみんなも仕送りの無い者は奨学金を受けられるようになったんだぜ」


「それはよかったね」


「それでな、ルイスに頼みがあるんだが……」


「なに?」


「俺達に武術を教えてくれないか?」


「授業だけじゃダメなの?」


「今日のルイスを見て思ったんだ。

俺達は見ているだけで何もできなかった。

それが恥ずかしくってな」


「僕でよければ教えてもいいよ」


「ありがと、恩にきるよ」


「じゃあ、夜明けから朝食まで練習ね」


「げぇ~朝かよ」


「だって夜は宿題やらなきゃ」


「それもそうだな、他の奴も誘って良いか?」


「かまわないよ」




女子もランに同様の依頼をしたようで、翌朝運動場に集まったのは2班を除くクラス全員であった。


「おはよ~」


みんな口々に朝の挨拶をかわし、柔軟体操や体術の基本を練習した。


「みんな、わかってるとは思うけど、習ったからといって直ぐに強くなるわけじゃないからね。

基本を繰り返し練習して身体に覚えこませるには時間がかかるから、焦らないようにね」


ランは教え慣れてるので、個人個人に的確なアドバイスを与えていった。


ラン達経験者はマリアとお互いの体術を教えあい、研鑽を深めていった。

誤字・脱字がございましたらご連絡ください。

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