9話
「おっはよ~~~~」
休み明けの教室に生徒達が元気に登校してきた。
教室のあちこちで仲良くなった者同士が集まり、休みの間の出来事などを賑やかに話していた。
ガラガラガラ
「おはよう。みんな席につけ」
担任のガーランドとアネットが入ってきて生徒達は席についた。
「みなさ~ん、おはよ~」
「「「おはようございます」」」
「今日は連絡事項がある。
今週から選択授業も始まるので、履修する教科を今週末までに届けてくれ。
外国語1教科と科学1教科の選択だ」
「はぁ~い」
「それから先週最後の掃除当番をさぼった班は今週全部掃除するように、以上だ」
キャメル達2班のメンバーは忌々しそうな表情を浮かべガーランドを睨み付けたが、ガーランドは涼しい顔で教室を後にして行った。
ガーランドとアネットが出て行った教室がまた賑やかになった。
「なあルイス、選択科目は決めてるのか?」
「科学は決めてるんだけど、外国語はどうしようかな~、ロン君はどうするの?」
「俺とピーターはシンカ語だな。俺達の町はシンカ共和国に近いからな」
「ルイスっ、外国語はグランディア語よ。ちゃんと私に教えなさいよ」
「ランちゃん、僕に教わる前に自分で勉強しようね」
「うっさいわね。私が勉強苦手なの知ってるでしょ」
「ランちゃん、それ自慢になんないから……」
「ルイスはグランディア語に決定だな」
あはははははは
「みなさん、そろそろ歴史の授業を始めたいんじゃが、いいかの?」
いつのまにか入ってきていた老教師が声をかけた。
生徒達は慌てて席に着き授業の準備をした。
教師は目を閉じ、世界のはじまり『創生神話』を語り始めた。
生徒達は幼い頃から聞き馴染んだ話に目を閉じ夢の世界に旅立っていった。
続く数学の授業では、ガーランドの分かりやすい教え方で順調に教科書が進んでいった。
途中、居眠りをしているルイスにガーランドが練習問題をやらせてみたが、スラスラと解いてしまい怒られることもなかった。
この学院では、人に迷惑をかけない限り実力さえあれば居眠り等問われることはないのである。
昼休みルイス達は売店でサンドイッチや飲み物を買い、校舎の間にある芝生で昼食と摂っていた。
「みんな午後の選択授業は何とるの?」
「わたくしは栄養学をとろうと思ってます」
「マリアさんが栄養学?」
「栄養学には調理実習もございますでしょ。
少しは自分でも何か作れるようになりたいですもの」
「では、わたくしもマリアさんとご一緒させてもらいますわ」
「じゃ私も~」
「ルイスさんはどうされるんですか?」
「僕は薬草学に決めてるよ」
「あんたの頭の中はお茶のことしかないんでしょ」
「ひどいなぁ~ランちゃん」
「お肌に良いお茶とか痩せるお茶とか、もっと役にたつお茶考えなさいよ」
「ん?痩せるお茶なんて必要なの?」
「お菓子を食べても太らない、これは乙女の永遠のテーマなのよ」
胸をはって言い切るランを見てルイスは不思議そうな顔をした。
「ランちゃん、痩せたら困らない?」
「何処見ていってんのよ、馬鹿ルイス!」
あははははは
昼食後ルイスは薬草学、他のメンバーは栄養学の授業へ向かった。
選択授業が終わり、全員が元の教室に戻ってきた。
「ルイス、選択は何を受けたんだ?」
「ロン君、僕は薬草学だよ」
「へぇ~難しそうだな。俺は農業を受けたんだけど、凄い人数だったぜ」
「農家出身の人が多いんだろうね。僕の受けた薬草学は5人だけだったよ」
「農業が学問になるなんて驚いたよ。
精霊にお願いして豊作になるもんだとばかり思ってたからな」
「精霊に頼るだけでなく、自分達も努力することが大事ってことだね」
ガラガラガラ
「みなさぁ~ん、アネットせんせ~の授業だよ~」
生徒達は脱力しながら席についた。
「今日は魔術じゃなくって~生命学おしえちゃうよ」
アネットは、一年間で生命を支える魔力の役割や動物の生態、食物連鎖を順序だてて教えることを話した。
「今日はここまでね。連絡事項もないし、お掃除ちゃんとしろってガーランド先生が言ってたわよ~。じゃあねぇ~」
生徒達は帰り仕度を整えて、各々教室を去っていこうとした。
「おい、お前ら掃除やっとけよ」
キャメルが言い放ち帰ろうとした。
「ちょっと待てよ、掃除は君達が当番じゃないか」
「ロンウッド、俺達に掃除しろというのか?」
「当たり前だろ、朝もガーランド先生に怒られたばかりじゃないか」
「タダでやれとは言わん。掃除をした者には武術で使う剣をくれてやる」
「へ?剣ならみんな持ってるぜ」
「なにっ?それなら銀貨をくれてやる」
「お断りだね」
ロンウッドとキャメルの口論にロビンが口を挟んだ。
「キャメル君、自分達の役割は果たしてくれないと困るよ」
「ロビン、クラス委員だと思って生意気なことを言うんじゃない」
「生意気?理不尽なことを言ってるのは君じゃないか」
「それが生意気って言うんだ」
ランの目が鋭く変わり、今にも飛び出そうとするのを感じルイスはロン達に声をかけた。
「ロン君、ロビン君、かえろ~よ。
どうせ怒られるのは彼らなんだから、好きにすればいいんじゃないの?」
「それもそうだな、ロビン行こうぜ」
「おお」
ルイスに促され生徒達は教室を後にした。
残されたキャメル達も荷物を持ち教室を後にし、学院内の喫茶店に集まっていた。
「なんなんだあいつらは、生意気にもほどがある」
「キャメルさんの思惑もはずれたようですわね」
「ああ、すでに剣を持っていると言ってたな」
「どこで手に入れたんでしょうね」
「バズル、アルト探ってみろ」
「「はい」」
「キャメルさん、次の手は考えていらっしゃるの?」
「ドロシー、少しやつらの情報を集めてから効果的な策を考えたいと思うんだが、協力してくれるかな?」
「どのようなことかしら」
「女子の情報は俺達では集めにくいから、そちらを頼みたい」
「レイチェル、あなたにまかせるわ」
「かしこまりました、ドロシー様」
「バズル、アルト、お前達は男子の情報を集めろ、どんな些細なことでも弱みを握るんだ」
「「わかりました」」
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