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秘密のヒーローに大変身

作者: 井上さん
掲載日:2026/07/01

名前とセリフを借りました

 ある日、森の中、熊…じゃなかった、狼の魔物と戦う騎士の格好をした子どもを見かけた。


 騎士は、怪我をしている。

足元に倒れている狼の魔物がいるから、多勢に無勢で、怪我をしたのだろう。

木の陰から様子を見ていた。


助けなきゃ…でも、武器が無い。


周りを見渡す。


…ビー玉のお◯だって、ビー玉投げてたから、石でもいける!


 私は、そこらにある石をいくつも拾って、何度も狼の魔物達に投げつけた。


魔物が怯んだ隙に、騎士は、魔物を倒した。


「ありがとう…助かった…」


 騎士が声を掛けてきた。


「大丈夫ですか?」


「あぁ…大丈夫…」


 本当かな?


「止血だけでもしましょうか?」


「え?」


「血が出ています」


 左腕から血が出ていた。


「え?あぁ…」


「きつく縛りますからね」


「あぁ…」


 私はハンカチを出し、傷口を縛った。


「すまない…」


「気にしないでください」


 その時、誰かが呼ぶ声がした。


「あ、すみません…もう行かないと」


 私は、立ち上がり、声のする方へ走り出した。


「ありがとう!」


 後ろから声を掛けられた。


私は、この後叱られるのが気になって、振り返らずに走った。




 森の中を探検していた私は、案の定、両親から叱られた。


「魔物が出るのに武器も持たずにフラフラして!」


「武器を作ってください!」


「え?」


「良い武器を思いついたんです!」




 私は両親を説得し、銀細工の職人にヨーヨーを作ってもらった。




 私ファラド・ウェーバーは、この世界に転生したらしい。

前世の私は昭和の終わりの方に生まれた。

ヨーヨーで悪と戦うドラマも、全シリーズ見た。


 当時の女児達は、憧れて、ヨーヨーで遊んでいたものだ。


私は、ヨーヨーで魔物と戦おう。


 ビー玉は無いから、そこら辺の石を集めておいた。

 石なら、後で拾いに行かなくても良いし(お◯が、帰る前にビー玉を拾っていたかは謎である)。



 ヨーヨーを、魔物に当てる練習をする。


領主の娘として、魔物討伐をしたいのだ。


 でも、令嬢が、そんな事をしていたら、嫁の貰い手が無くなると言われて両親から反対された。


 それなら、私と分からなければ良いのでしょ?

と、変装する事にした。




 兄のヘンリー・ウェーバーは次期領主として、父と剣の稽古をしている。

私も、一緒に稽古した。

ヨーヨーの練習もした。


勿論、変装して討伐にもついていった。


 最初はあまり役に立たなかったから、補給とか治療とかを手伝った。






 それから、学園に通うようになってからも、休日は魔物討伐に行った。

勿論、変装して参加した。



 体型が分からないように魔法使いみたいなローブを着て、フードを被る。念の為に眼鏡を掛けてポニーテールにして。

声も低めにして。


 変身ヒーローみたいで、まだ誰にも正体がバレていなくて、とても楽しい。




 領地に魔物が出ると、変装して討伐に行く。

近隣の領地から救援要請が来たら、兄様達と一緒に行く。



 的にヨーヨーを当てられるようになっても、動く魔物にヨーヨーが当てられない。

だから、なかなか前線には出られなかった。




 補給部隊や、看護部隊の誰かが魔物に襲われそうになった時は、ビー玉代わりの石を投げる。


怪我人がいたら、介抱したり、護衛をしたりする。


 兄様の婚約者が、薬草に詳しくて、傷薬を作ってくれたので、持ち歩いている。




 接近戦になると弱いので、なるべく距離を取った。


 慣れた頃が1番危ないから、と、何度も注意を受けた。


油断はしない、と思っていても、気付かないから油断なのである。


 後方支援をしながら、次に何が必要か、とか、周りの様子はどうか、とか、考えていた。




 魔物の数が少ない時は、前線に連れて行ってもらった。

剣は持っているが、新人の騎士より弱い。

だが、実戦で使わなければ、強くならない。


 魔物と対峙してからヨーヨーで攻撃しても避けられる。


 それなら、魔物を発見して気付かれないうちに、すぐにヨーヨーで攻撃すれば良い…というのも、前線に出なければ分からなかった事だ。




 魔物を見付けると、真っ先に突撃して、ヨーヨーで怯ませ、怯んだ魔物を兄様が斬りつける、という作戦も考えた。


 この作戦は上手くいった。

兄様との息もピッタリで、討伐は順調に進んでいた。


 慣れた頃が危ないから、と、時々は後方支援を担当する事にした。

 前線、後方支援の両方からの視点で考えられるようになり、兄様と色々話し合った。



 私は女性だから、体調の悪い日もある。そんな時は後方支援か、討伐を休んだりもした。


 それでも、何度も実戦を経験していると、小型の魔物だけでなく、大型(牛とか馬サイズ)の魔物も、ヨーヨーで上手く怯ませる事ができるようになった。


 他の領地の討伐依頼にも何度も行った。




 私は、兄様の相棒のサキとして、それなりに有名になった。






 学園では、楚々とした令嬢に擬態している。

髪色は、黒。結ばずに下ろしている。化粧は薄い。

そもそも、大人しく引っ込み思案でもあるので、擬態は、そんなに難しくない。


 それなのに何故か、魔物を見ると、テンションが上がるのだ。


魔物を狩る為に生まれてきたのかもしれない。




 魔物の生態を調べようと、学園の図書室で本を読んでいた。


「熱心に読んでますね」


 声を掛けられた。


「もうすぐ閉まりますよ」


 知らない男子生徒だった。が、重要な事を言われた。


「ありがとうございます!」


 私は礼を言って、本を元の場所に戻した。


図書室を出ると


「魔物に興味があるのですか?」


 と聞かれた。


「いえ、領地の魔物を討伐したくて、弱点を探してました」


「弱点?」


「はい。いかに素早く魔物を狩れるか、参考になればと調べてました」


「そうか…偉いんだね」


 何故か褒められた。


「領地や領民の為です」


「普通は、そこまでやらないよ」


「そうですか?知らずによく戦えますね?」


「え?」


 男子生徒は首を傾げた。


「剣だって、相手がどんな戦法でくるかとか、どんな剣筋かとか、調べませんか?」


「そういえば…そうだね」


 納得してくれたみたいだ。


「時間を教えてくださり、ありがとうございました。それでは」


 私は、改めて礼を言い、学園をあとにした。




 次の日、図書室で本を探していると、また男子生徒が声を掛けてきた。


「魔物の弱点の話をまた聞きたくて」


「貴方の領地も、魔物の被害に?」


 まぁ、どこの領地も同じか。


「あぁ。君の意見を参考にさせてもらいたい」


 そこで、お互いに自己紹介しあった。


ドルーデ侯爵家の子息ラジアン様らしい。

やはり、魔物討伐に参加しているとか。


私達は、情報を交換した。






 そんな私に、婚約者ができた。


相手はキルヒホッフ伯爵家の子息カンデラ様。政略結婚だけど…かなり嫌がっている。


 擬態がバレたか?


と思ったが、私の身分が下(男爵家)なのと、性格が大人しく、見た目が地味なのが嫌だったらしい。


ネチネチ文句を言ってくる。


 この婚約を決めた、お前の親に言えよ。


お前の親に土下座されたから、仕方なく受けたんだぞ(両親が)。

嫌なら嫌って言えよ。お前の口は、何の為にあるんだ?


「あぁ…こんなのが婚約者なんて…不幸だ…」


 って言われる、私の方が不幸だわ。


我が領の、魔物討伐の技術が欲しくて、土下座して婚約を頼んできたお前の親に言ってくれ。


 私、お前みたいな弱い立場の人には威張るくせに、強い立場の人にはヘコヘコする人間が大嫌いなんだよね。


 早く婚約破棄しないかなぁ?



 両親には、きちんと『あぁ…こんなのが婚約者なんて…不幸だ』と言われている事を報告している。


 私を大切にしないなら、技術提供しないと相手に伝えているから、改善されるか?

されなければ、永遠に技術提供は無しだ。

 契約違反だもの。


婚約者の交流のお茶会には来ないし。

贈り物も無いし。

エスコートもしないし。

学園でも、ほとんど顔を合わせない。


 これって、婚約者って言える?




 学園の廊下を、カンデラ様と知らない令嬢が歩いていた。


お?とうとう浮気したか?

私は様子を見ていた。


 最初は並んで歩いていただけだったが、そのうち腕を組みだした。


 私は知らん顔をしていた。


すると、何も言われないのを良いことに、学園の至る所でイチャイチャしだした。


 これは、婚約破棄も間近ですな?

私はワクワクしていた。


早く人間…じゃなかった、婚約破棄した〜い!






 魔物討伐の依頼が来た。


魔物は、学園の授業も待ってはくれない。


 学園には家の事情で、と早退し、討伐に向かった。


依頼先が学園の近くで、学園に通う私や兄様が早く現場に到着するからだ。






「元気爆発だ〜!」


 私は雄叫びを上げて魔物に近付く。


「気炎万丈!」


 兄様は令和の高校生だったらしい。


魔物討伐のゲームをしていたと言っていた。

猫ちゃんの存在だけは知っていた人気のゲーム。


そして、兄様は西洋の剣ではなく、太刀を愛用している。


私がヨーヨーを作った時に便乗して、太刀を作らせたのだ。



閑話休題。



 私がヨーヨーで魔物を怯ませ、兄様が太刀で狩っ…斬りつける。



今日は二足歩行の鳥型魔物だ。


「クルルルル〜!」


 人間サイズの鳥型魔物が20頭…羽?くらいが鬱蒼と木が茂る森の中を走り回っている。ダチョウ系統か?走り回っているのである。


ヨーヨーで攻撃する。当たり所が良かったのか、頭の羽が飛び散った。


怯んだ隙に兄様が斬りつけた。


 魔物が倒れるのを確認すると、次の魔物に向かう。



 そんなこんなで討伐が終わり、邸に戻った。


討伐の報告をしたあと、カンデラ様の浮気の報告も父にした。






「お前とは婚約破棄だ!」


 学園の食堂のテラスで、カンデラ様が言った。


浮気相手と腕を組んでいる。ちなみに名前は知らない。


「お前とは婚約したくなかったんだ!やっと俺に相応しい相手を見つけた。だから、お前とは婚約破棄だ!」


「ありがとうございます!それじゃ!」


 私は、先生に言って早退し、父に婚約破棄の手続きをしてもらった。

両親と兄は喜んだ。


カンデラ様の両親は顔面蒼白になった。 


 でも、大勢の前で言ってしまったから、取り消せない。


浮気したカンデラ様有責で、きっちりと婚約破棄してもらった。




 元婚約者は、浮気して、勝手に婚約破棄した事と、私を大事にしなかった事で少しも魔物討伐の技術を提供してもらえなくて領地を危機に陥れたとして、廃嫡されて、領地の片隅に、浮気相手と共に押し込められた。


 浮気相手は、婚約者がいる男を誑かしたとして、周りから冷たい目で見られ、勘当されたのだった。

何を仕出かすか分からないから、2人を結婚させて閉じ込めたのだ。


 当然、2人からそれぞれ慰謝料をもらった。






 ラジアン様が、婚約を申し込んできた。


そして、魔物討伐に連れて行ってほしいと。

領地への参考にしたいらしい。

両親に挨拶に来た時に約束を取り付けていた。




 魔物討伐の日。


「私は留守番しているから」と言い、サキに変装して討伐隊の後を、こっそりついて行った。


 討伐は順調に進んでいた。

兄様は単品でも強いのだ。


 今日の魔物は猫科の魔物だった。複数いるが、一頭だけ馬よりでかいのに動きが早いのがいた。

森の奥の開けた原っぱで、猫と巨大な猫が暴れまわっていた。


 ラジアン様が襲われそうになった時、私は石を投げた。


それから、私のヨーヨーで魔物が怯んだのを見たラジアン様が討伐した。


「ありがとう。助かった」


「あぁ…」


 つい、助けちゃったけど、早く帰らなきゃ…


周りを見たら、討伐は終わっていた。


 ラジアン様は、私の目をまっすぐに見た。


「見つけた」


 ラジアン様が言った。


「お前だったのか」


「え?」


「昔、この森で、騎士を助けなかったか?」


「騎士?」


 私は首を傾げた。


「怪我をしていた騎士にハンカチで止血しなかったか?」


 そんな事もあったかな?


「このハンカチだ」


 ハンカチを持ち歩いていた。

私の拙い刺繍がしてある。 


お恥ずかしったら、ありゃしない。


「あの時のお礼がしたくて、持ち歩いていたんだ」


 ラジアン様が私の目の前に跪いた。


「あの時、助けていただいて、ありがとうございました」


「…いえ…」


 どうしよう。帰るタイミングを見失った。


「ファラド嬢」


「え?」


「ファラド嬢だろう?」


「…何で…?」


 何でバレた?


「目が同じだ。私は、ファラド嬢の目を、いつも見つめていた」


「え?」


「学園で見かけて、貴女に惹かれた。どうしてかと思っていたが、探していた私の恩人だったからだ」


 探していた?


「ずっと会いたかった。でも、男だと思っていた」


 あの時は髪が短かったし、シャツにズボン姿だったから、男だと思っていたらしい。


「どうか、私と結婚してください」


 跪いて見上げたラジアン様は、真剣な目をしていた。


「え?本当に、私で良いんですか?」


「ファラド嬢以外に考えられない」


「魔物討伐に行く女ですよ?」


「魔物討伐には、私も行く。図書室で、貴女と話していると、とても楽しくて幸せな気持ちになった」


 それは…私もそうだけど…


「どうか…貴女のそばにいさせてくれ…」


 どうしよ…


「ちょっと待ったぁ!」


 兄様が割り込んできた。


「ファラドに結婚を申し込むなんて!本当に本当の本気なのか!?」


「はい!本当に本当の本気です!」


 兄様とラジアン様が睨み合った。


「お前、分かってるじゃないか!」


「へ?」


 喧嘩が始まるかとヒヤヒヤして見ていたが、おかしな方向に進んでいた。


「ファラドの良さが分かるなんて、良い奴だな!」


 兄様が、ラジアン様の肩を叩いた。


「ファラド嬢ほどの素晴らしい令嬢はいません!」


 ラジアン様が叫んだ。


「そうだろう!よし、帰って茶でも飲みながら、ファラドの話をしよう」


 未成年だから酒は飲めないのだ。


「はい!」


「よし、帰るぞ」


 兄様が私に手を伸ばした。


「いや、私が」


 ラジアン様も私に手を伸ばした。


エスコートか?これエスコートなんか?


…どちらかを選べない。


私は両方の手を取った。


 2人は満足して、両側から私の手を繋いだ。




 兄様と兄様の婚約者ジュール・レンツお義姉様と、ラジアン様と私で、我が邸の庭でお茶をしている。


兄様もジュールお義姉様も、私の事を可愛がってくれる。


ジュールお義姉様は、末っ子なので、私という妹ができるのが嬉しかったらしい。

私も、姉ができるのが嬉しかったから、懐いた。


 私が、兄様と一緒に討伐に行く、と言ったから、ジュールお義姉様は傷薬を作るようになった。

有り難い事だ。


 という話を、ラジアン様にする兄様とジュールお義姉様。


 ラジアン様もラジアン様で、幼い頃に、魔物に襲われた時に助けてくれて、傷の手当てをしてくれたから、探していた…と言った。


「学園の図書室で偶然話し掛け、親しくなって、婚約を申し込んだら、探していた人だったので運命だと思いました」


 なんて言い出した。


「まぁ素敵!」


 お義姉様がウットリした。


兄様が、いつの話だ!?と立ち上がった。


「たぶん、ヨーヨーを思い付いた日です」


「あの時か!…まぁ良い…どこかのバカ男みたいに、ファラドを蔑ろにしないで、大切にするなら」


 兄様、本音がダダ漏れです。


「勿論、大切にします。あの浮気男は、こんなに可愛いファラド嬢という婚約者がいたのに浮気して婚約破棄するなんて正気じゃありません!」


 ラジアン様、そんな風に思ってたの?


「話の分かる奴で良かった!」


「本当に」


「絶対にファラド嬢を幸せにします!」


 私の過保護過激派が増えたようだ。



読んでいただきありがとうございます

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