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冬のともだち

作者: もみじ山
掲載日:2025/12/20

藍色の空。


きらめく星。


雪に埋もれた道路脇。


塾帰りの田舎道。




僕は雪に埋もれた道の端を、ザクザク音を立てながら歩いていた。

まだ夕方5時だというのに辺りはまっくら。


冬は日が沈むのが早いなあ・・・


空を見上げれば、チラリホラリと雪が舞ってきた。


街灯の明かりが反射して、キラキラ、キラキラ。


僕はこの景色が好きだ。

暗闇の中で照らされる真っ白な雪。

辺りの家々から漏れる優しい明かり。


音が消えて、自分だけの世界になった気持ちになる。



僕の吐く白い息が風に乗って流れていく。

あまりの寒さにマフラーに顔を埋めた。


ふたたび顔を上げれば、瞬く星空が見える。


頭上にある星は北極星。

星座は・・・なんだっけ。

たしか、こぐま座だったかな?


そんなことを考えながらぼんやりしていたら。


「呼んだ~?」


きらきらの雪と一緒に、真っ白な雪のこぐまが降ってきた。

なんだこれ、こぐまのカタチをした雪人形!?


こぐまは「よっ!」とでも言いたげに片手を上げた。

街灯の明かりを反射した目が、キラキラと輝いている。




「は? えっ? ふぁっ!?」


驚きすぎて変な声がでてしまった。

だって、こぐまの形をした雪人形がしゃべったんだ。

変な声が出るってもんだ。


「なんだよヒカル、ぼくのこと、忘れちゃったのか?」

「え?」

「ほら、この胸元に付けてる青いリボン。きみがくれたんだぞ。」


そして遠い記憶を思い出す。

小学校に入る前のお正月。

庭で小さな雪だるまをたくさん作ったことがある。

同じ形ばかりじゃ飽きるから、ウサギやクマなど動物の形も作った。

クリスマスプレゼントを包んでいた青いリボンがあったから、雪人形に飾ってあげたんだ。


その子をすごく気に入って、名前も付けて、保育園に持って行くと言って止められたっけ。


「もしかして、ブルー?」

「やっと思い出したか!」

「本当にブルー!?」

「そうだよ。ヒカルは大きくなったな。」

「中学生になったからね。」

「体が大きくなったって、こんな暗闇でぼんやり歩いてると危ないぞ。」


ブルーは街灯の光を反射しながらニヒヒと笑う。

あまりに嬉しそうだから、僕まで笑顔になった。

なんでいるの?とか、なんで喋ってるの?とか、そんな細かいことはどうでもいいやと思えてきた。




立ち止まっていた僕はザクザクと雪を踏みしめながら再び歩き出す。

ブルーは僕の数歩前をゆっくり浮遊している。


ときおり行き交う車。


近所の犬が吠える声が聞こえた。


「そういえば、あの時も犬が吠えてきたよな。」

「そうそう、ブルーに噛みつこうとしたんだ。」

「ヒカルがぼくを抱えて怒ってさ。」

「その辺はあまり覚えてないや。」

「ワンワンって吠えてきたから、ヒカルもワンワン!って吠え返したんだよ。」


「そ・・・そうだっけ?」


「そしたら犬がウーって唸って、ヒカルはぼくを頭の上まで持ち上げてガルルルッガウガウ!!って。」


「うっそだぁ~。」


ふたりでアハハと笑う。

本当はなんとなく覚えている。

その数日後、いつのまにか溶けていなくなってしまったブルー。




もうすぐ家に着いてしまう。

ブルーはどうするんだろう?

このまま連れて帰ったら皆びっくりするかな?


その時、家の前の曲がり角から除雪車が出てきた。

大きな車体で雪を集め、道路脇の空いているスペースへと雪を寄せている。


危なかった。


一人で普通に歩いていたら遭遇してた。

運が悪ければ、あの車体に巻き込まれていたかもしれない。


チラリとブルーを見上げる。


「・・・ありがとう。」


小さく礼を言うと、ブルーは瞬きをしてにんまり笑った。


「あの時、きみは震えながらぼくを守ってくれたからね。今度はぼくが助けに来たんだ。」


そう言って街灯の下でくるりと回転した。


「本当にありがとう。」


手を差し出すと、冷たい手で握り返してくれた。




「ぼく、そろそろ空に帰らなくちゃ。」

「もう行っちゃうの?」

「そのうちまた会いに来るよ。」

「本当に?」

「ともだちだもん。約束だ。」

「絶対だからね、ブルー。」


そうして、雪のともだちは空に消えていった。


残されたのは暗闇と、街灯に照らされる雪だけ。


チラリ。ホラリ。


街灯の下で光を反射しながら優雅に舞う雪。


キラキラ。


キラキラ。




「ヒカル? そんなところでどうしたの。寒いから早く家に入りなさい」


門の前で立ち止まっていたらお母さんに見つかった。

僕は急ぎ足で玄関に向かう。


後ろを振り返ると、相変わらず雪が静かに舞っていた。


空には北極星。


街灯の下でキラキラと舞う雪。


冷たい空気が、僕の息を白く染める。


うん。


きっと、またこんな夜にはブルーに会える気がする。




僕は笑顔で玄関に飛び込んだ。


「ただいま!」


「おかえりなさい、ヒカル。」

読んでくださった方、ありがとうございます!

少しでも面白いと思いましたら評価やリアクションなど押していただけると有り難いです。

他にも童話を投稿していますので、もし興味がありましたら作品一覧からどうぞ。

ほっこりして頂けたら嬉しいです。



読み返してみて気になったところを少し調整しました(12.24)

評価とリアクションをありがとうございます! とっても元気が出ます(*´∇`*)

今日はあいにくの雨ですが・・・メリークリスマスー!

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