ガラスの庭園と可愛い出会い
読みやすくなるよう頑張ります。
転載は禁止です。
今日もとても良い天気。今日の侍女はマリアーナさん。朝の支度を整えて貰う。
「本日の予定は午後の淑女授業です。」
午前は何しようかなぁと考え、外出は許可制だったと思いだした。
「暇な時間が勿体無いから、午前中はお散歩と魔法練習をしたいです。お願い出来ますか?」
「勿論にございます。」
今日の服装はスリット入り5部丈の白い袖に濃いオレンジに赤い刺繍の入ったドレス。髪型は三つ編みのハーフアップには白いダリアが乗った髪飾りに白地に赤いリボンの付いたストラップの低いヒールパンプス。首にはパールのチョーカーをしている。勿論マリアーナさんの選んだものだ。今日も本当に素晴らしいです!
「今日はどちらに向かいますか?
許可されているのは今滞在されている離宮の周辺と夏の庭、薔薇の庭、ガラス庭園、図書室が御座います。」
「図書室が気になるけど…ガラス庭園に行ってみたいです。お願い出来ますか。」
「はい。今の時期は薬草と季節違いの冬の花が見られますよ。希少ですので是非ご一覧の価値があります。」
部屋を出るといつもの様に廊下で新しい護衛の紹介がある。
「お目にかかれて光栄にございます。ダッシェ伯爵家が2男リオン=ダッシェでございます。本日より護衛に着きます。よろしくお願い致します。」
黒い隊服に水色の髪をボブに切り揃えた青い眼の可愛い男性だった。
カフスが無くてバングルが有るから妻帯者だと気づいた。思い出してみると護衛官長様もバングルしていた気がする。
お子様とかいらっしゃるのかしら…。いや、ついつい子供好きな血が騒いでしまったわ。
今日の護衛はアンリ様とリオン様のお2人の護衛みたい。
人が多くて覚えられそうに無いと思いながら、マリアーナの先導でガラス庭園に向かった。ガラス庭園は滞在する離宮の3階にあたる屋上にあるため、長く無い階段を登って行く。
リオン様に手を取りエスコートしていただき階段を登ると、低木の樹々の植えられた庭が見えてきた。屋上の真ん中にガラスで作られた部屋が見えてきた。
ここにはコンサバトリーが併設されており今日はそちらでお茶をするようだ。
「こちらの4つのガラスの部屋はそれぞれ春夏秋冬の季節に設定されており、季節の花や薬草を絶やさない為に設置されております。
室内には限られた人しか入れませんが、この様に外から愛でる事が可能になっております。」
コンサバトリーを囲むように配置された4部屋はそれぞれとても美しい八角形のガラスの宝石箱のようになっている。其々に色々な木々や植物、花に薬草が沢山植えられている。
広めのソファとテーブルに座ってマリアーナさんに淹れて貰ったお茶を飲んで周囲を眺めていると、何処からか小さな黄色い丸っこい小鳥が飛んできてテーブルの上で頭を傾げる。
「そちらはここで飼われて子ですね。タフィと呼ばれています。可愛いですよねっ。」
"ちゅ、ちゅ"
鳴きながらお菓子を見つめる黄色いシマエナガ(仮)。リオンの説明によるといつの間にか番でやって来て居着いたの為、城のみんなが可愛がって居るらしい。
"ちゅぴ、ぴっ"
もう1羽赤い小鳥がとんで来て私の肩に乗る。
間近にみてもシマエナガ(仮)そっくり。とても人懐っこくて可愛い!2匹共に、こちらを見ながらちょこちょこ跳ねてつぶらな瞳でこちらを見つめて首を傾げる。
「お菓子の催促でしょうか。
聖女殿、お嫌で無ければあげてみませんか?懐いてくれると時々やってきてくれるようになり、かわいいんですよ!」
リオン様は可愛いものが好きなのかな?凄くご機嫌でにっこにこ状態…任務が無ければすぐさま構いに行きたそう。可愛い人が可愛いものを構い倒す、眼福ですね!
「是非。こちらのサーヴして頂いたクッキーは小鳥さん達はたべても良いの?」
「普通のクッキーですので構いませんよ。聖女殿。」
控えていたマリアーナさんがクッキーを砕いて小さなお皿に入れてくれた。
「赤い小鳥はディアと呼ばれています。タフィが雌でディアが雄なんですが本当に仲良くて!いつも一緒に飛んでますよ!!」
「ほんと好きなんだなぁ。どんだけ餌付けしたんだよ…」
「だって、可愛いじゃないか!懐かれると呼べば来てくれる事もあるんだぞ!羨ましいだろー!」
「いや俺は動物は要らない。可愛いのは女の子だけでじゅーぶんだっ。」
護衛のお2人は仲がいいのね。口調が砕けてじゃれ合うように見えて微笑ましく思い思わず笑顔がこぼれた。
私が見ていた事に気づいたお2人は、気まずそうに頬を掻いている。
「任務中に気が緩んでしまいました。申し訳御座いません。」
顔を引き締めて直したアンリ様に謝られる。
「いえ、気にならないで下さい。
堅苦しい口調が必要なのはわかるんですけど…私は元々平民のようなものですから。侍女と護衛だけの時は普通の口調にして貰えると嬉しいです。」
「聖女殿。それは侍女の立場として難しい事ですわ。」
控えて待機していたのに我々の会話が耳に入ったのか、マリアーナ様が思わずといって注進してきた。
「わかっています。
わかっているのです…が、ずっとご一緒する事が決まっている侍女と護衛のは、できたら仲良く息のしやすい普通の姿に近い方がありがたいと思ってしまうのです。だめ‥でしょうか?」
3人の顔を見てお願いしてみる。やはり職務上難しいかな。仕事だもの。3人の心の距離が遠くてちょっと悲しい。
こちらに来てずっと敬語ばかりで疲れてしまったのもある…。必要なのも理解しているんだけど…な。
落ち込む私を見て、3人は目を見合わせ頭を抱えた…。聖女殿はこの世界の最高位と言って良い存在。そんな方に普段通りに会話するなんて無理に決まってる。
しかし…聖女殿の願い…でもある。
立場を取るか状況の成り行きにまかせるか。
「命令とかでは無いんです。無理なら…仕方ない…と諦めます。」
徐々に目線が下がりきゅっと両手を握りこんで落ち込む姿に何と声をかけて良いのか…。
2羽の小鳥は、聖女殿の膝の上で様子を伺うように首を傾げる。夏の眩しい日差しは温室のガラスに当たってキラキラしている。温かい空気が吹き抜けた。
聖女殿を悲しませたい訳では無い。しばし話し合い悩んだ末に、3人は頷き合い代表するかの様にアンリ様が口を開く。
「わかりました。特定の条件下、侍女殿と護衛だけの時は口調を崩させれ頂いて良いですか?それ以外は譲歩できかねます。護衛の任務に支障をきたさない場合においてのみ。
いかがでしょうか?」
下がり切って真下を向ていた聖女殿の顔が弾けるように上がり、驚いたように3人を見つめる。
「構いません!ありがとうございます!
無理だと思ってました!」
勢いこんで口調は早くなる。
「私達は聖女殿を敬う態度を示しただけなのです。それがご負担になるとは思ってもみなかった。想像力が足りず…申し訳ありませんでした。」
マリアーナは私のソファに跪き顔の高さを合わせると悲しそうな瞳で深々と礼をする。
「いえ、謝って欲しい訳では無くて。私が環境に馴染め無かっただけ…なんです。こちらこそ色々と…ごめんなさい。」
いつまでも頭をさげ、謝り合う2人を見て終わりが見えなくなったリオンは
「じゃ、今日から聖女殿は仲良しって事だね!」
と暗い空気を切るように明るく提案した。
「お前…いきなり。調子いいな」
「だって、結果は決まったんだから!いつまでもこんな空気だとお昼になっちゃう…今日のご飯なんだろう?」
「今日はシチューだってコック長が言ってたぜ?聞いてなかったのか?そ・れ・よ・り・今日は俺が先に休憩だぜ?」
「あーそうだった。僕のごはんーんー」
こそこそとした突然の護衛達の掛け合いにマリアーナは目を見開いて彼らを見ていた。私もびっくりした。けれど、2人はこの場を和ませようとあえていつも通りにしてくれたのだと2人の表情から気づく。
何て優しい人達なんだろう。優しさに目に涙の膜ができる。でも今は泣く時では無い。折角お2人が空気を変えてくださったのだから!
私は彼女を心配させないように、嬉し涙を振り切り満面の笑みで口を開いた。
「護衛の方達って仲良いのですか?」
「ぼちぼちじゃないですか?今回の6人は集められたばかりだし。けど訓練て顔合わせる事も多かったから顔は知ってるし話もした事がある奴ばかりだぜ。」
「そうそう。隊長は別格として皆んな顔見知りなんだよ!僕たち2人はただ気が合うから昔からからよく喋るってだけ!ねー!」
「気が合う、か?」
そう言ってアンリ様がリオン様を揶揄う。
「お2人は普段は気軽い感じなのですね。私は普段とあまり口調が変わらないかもしれません…。」
マリアーナさんは赤い髪を揺らし口元を手で隠して上品にクスクスと可愛らしく笑って会話に混ざってきた。
「マリアーナさんはマリアーナさんの普段通りで良いです。無理に砕けた話し方で無くマリアーナさんらしい話し方でお願いします!
それと、ついでに…聖女殿じゃなくて名前で呼んでくれませんか?」
どさくさに紛れて願いを追加してみる。
「マサミ殿…ですか?」
「せめて様で…」
彼女は考える仕草をして、諦めるように
「仕方ありません。
それではマサミ様と呼ばせて頂いたきますね。ところで、本来侍女呼び捨てにするものなんですけれど?名前の呼び捨てをして下さいますか?」
と今更ながらの正論な意見を述べた。
確かに。それを言われると困ってしまう。未だに偉い立場…ていうものが私には受け入れきれない。
「呼び捨ては、ちょっと慣れないかな。お互いに呼び捨てする…ならわかるけど、一方的にはちょっと難しいです。」
私は眉をへにょんと下げるしか無い。
3人は聖女殿の考えを推し量るが、前提となる常識の意識が違いすぎて理解できない。それでもできないなりに考え、聖女殿のお願いをきく事にした。
聖女殿の御心に叶うと信じて。
「私達はマサミ様と仲良くなれて光栄です。」
マリアーナはその白く細い手で私の両手を優しく包み込みしっかりと握る。彼女の美しく照れたかすかな微笑みが眩しかった。
3人が私の心をを受け止めてくれたようでただただ嬉しかった。
2匹の小鳥達は楽しそうにテーブルの上を飛び跳ね何処からか摘んで来た丸い木の実をコロコロと遊ばせていた。
小皿のクッキーはいつの間にかカケラも残さず空っぽになっていた。
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