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朝の夏の庭

誤字脱字あればお知らせ下さい。

無断転載は禁止です。

「ふぁあぁー。あれ?ここどこ?」


寝起きの見覚えのないお布団と風景に私はぼけた声がでた。そうだった。夢じゃ無かったんだ…

それにしてもよく寝た。周囲を見回すうち私の頭が働き出した。私、召喚されたんだった。


カーテンも空いていないのでまた薄暗い部屋の中、ベッドでモゾモゾまどろんでいた。

あ!トイレってどこ?!と、急いで薄暗い寝室を出る。

居室のまだ覗いていない部屋の扉を開いてトイレを探した…。ふぅ、危なかった!!間に合わないかと思った。この歳になって恥は晒したく無い。それにしても部屋が広い!多い!

トイレの使い方はほとんど変わらない様で助かった。これは風と水の魔術なのかな?水洗ボタンで魔術が発動する様だ。不思議だなぁ?などとトイレをあちこち眺めながら調べていると音がした。


"コンコン"


「失礼致します。聖女殿お目覚めでしょうか?」


入室許可するとラスクート伯爵令嬢が侍女の控え室から居室に入ってきた。

朝早くからきっちり髪を整えて化粧して服も折り目正しくキリッとしている。できる侍女の雰囲気だった。


「おはようございます聖女殿。

寝室に洗顔用のお湯をお持ちしますね。」


寝室まで戻ると窓は開けられ明るくなった寝室に早朝の爽やかな風が抜ける。揺れている白いレースカーテン。昨日は早く寝てしまい起きるのが早すぎた様だ。

早朝から働く事になりごめんなさいと侍女に心の中で謝る。

用意してもらった水で顔をうとスッキリし目が覚めた。


「聖女殿、今日はどのような服をお召しになりますか?クローゼットはご覧になりましたか?」


「クローゼットってあの服だらけの部屋の事ですか?あの服は私が着るの?」


「勿論にございます。その為に準備させて頂いた物でございます。」


そう言ってクローゼットに連れて行かれ、服を選ぶ様にと言われる。部屋の中にはズラッと並ぶ昔の絵や映画でしか見た事の無い美しく高そうなドレス。ドレスを着るのは1度はやってみたい女の子の夢ではあるが、いざ着るとなると慣れない事で困惑する。ドレスの選び方がわからず、私はもだもだしてしまい決められなかった。


「聖女殿はどんな色がお好きでしょうか。」


「私は青か緑が好きです。あんまり派手じゃ無いもので…」


「でしたら、こちらとこちらの青いドレスはいかがでしょう?」


どちらもとても可愛い!

右の服は五部ほどヒラヒラしたスリーブで上半身は派手すぎない羽を模した白い刺繍で飾られていて、スカートはオーガンジーがふわっと重なっていて裾はグラデーションになっていて凄く綺麗。

左の服はスリーブ無しで上半身は少しデコルテの開いていて小さな花を模した白い刺繍で飾られている。スカートはサテンのふわっとした軽そうな素材で腰のビロードの大きなリボンで切り替えがあってとてもお洒落。


どちらも素敵だが、私に似合うのだろうか。まぁそんな事考えても無駄か…この世界キラキラしい人多そうだものね。よし、好きな方を選ぼうと決めた。


「右の服にしてもいいかな?」


「かしこまりました。髪型やアクセサリー、靴などははいかが致しますか?」


「私じゃわからないのでお任せしても構わない?」


「喜んで。僭越ながら私が選ばさせて頂きます。」


そう言って、彼女は迷いなく白いローヒールなビジュのついた靴と白い真珠に真っ青な大きな石の付いた髪留めと金細工に青と水色の石を使ったそこそこ豪華なネックレスを持って来る。

私をドレッサーに座らせると、薄化粧をされた。髪型は右片側に白いリボンを混ぜた編み込みを作り髪飾りを飾る。毛足はくるくると巻いて遊ばせて暗髪なのに重苦しく無い。

首元には先程のネックレスを飾り靴を履き替えたらどこから見てもお嬢様のできあがりだった。

侍女って凄い仕事なんだなぁーとひたすら感嘆である。ものの30分で別人かと思う程垢抜けた!姿見で変身具合を眺めてニヤケてしまう。


「聖女殿。朝のお支度整いましてございます。テーブルにどうぞ。」


いつの間に朝食の準備ができていた。

パン、新鮮なサラダ、魚のムニエルにゼリーの様なデザート。美味しくて朝からお腹いっぱいになってしまった。


「本日は午前中に筆頭魔導師様との話し合い。午後には国史授業の先生がまいります。」


「そうなんですね…。

朝から沢山食べたので少し散歩したいのですが時間ありますか?」


「筆頭魔道師様とのお約束まで2時間程ありますので、お庭に出られますか?」


「お願いできますか?。」


「承知致しました。」


朝食の片付けは女官がやってきて片付けてくれた。人が多い…落ち着かない。



♢ ♢ ♢



部屋を出て廊下に踏み出すと昨日自己紹介されたエシャロット伯爵が黙礼で挨拶し、私の斜め後ろに立った。

そこが護衛騎士の定位置なのだろうか。


「おはようございます。エシャロット伯爵。

今日からよろしくお願いします。」


「おはようございます聖女殿。

わたしの事はメルクリオとお呼び下さい。」


「わかりました。メルクリオ様。」


立ち姿の印象通り声も態度もきっちりと武官らしさのある方だ。


「それでは聖女殿、わたしの後ろに付いてきて下さいませ。夏のお庭にご案内いたしますわ。」


ラスクート伯爵令嬢に先導され連れて来られた庭はとっても広かった。


朝の日差しでしっとり青々とした新緑とオレンジ色の薔薇が咲き誇る緑のゲートを潜ると爽やかな香りがふわっと流れる。

花壇には色とりどりの花が咲き乱れているというのに、全体には一体感があり、センスがあるとはこういう事かと思わされる庭だ。

中央に程よい高さの噴水が設置してあり、時折飛沫を上げていてとてもきれいで涼しい。


私はいわゆるガゼボと言われる白い屋根付きのテーブル席に案内された。

席には初めて見る男性が立っていた。茶金の髪色をした黒い制服の背の高い人。その男性がガゼボに設置された椅子をひき私にその椅子に座る様にとエスコートした。この人誰だろう?


「おはようございます聖女殿。

私は聖女様次護衛騎士のテオドラント侯爵家が3男ルスタリーシュです。本日より聖女殿のお側で護衛任務に当たらせて頂きます。

よろしくお願いいたします。」


「は…初めまして。私はマサミです。よろしくお願いします。テオドラント侯爵子息様?」


「私の事はルスタリーシュとお呼び下さいませ。」


「聖女殿。護衛官は名前で呼んで構いません。また敬語も不用です。

護衛官長は私ですが、護衛官は5人で本日より交代にて2人ずつ付かせていただく予定です。」


「わかりました。よ…よろしくお願いします。」


「聖女殿。こちらの世界は今は夏なのですが、いかがでしょう?お寒くありませんか?」


「とても過ごしやすいです。ラスクート伯爵令嬢。」


「もうお名前をお覚えになりましたのですね。私共侍女の事も護衛官様同様マリアーナと名前でお呼び下さい。」


早朝の日差しの中で彼女の赤い髪が爽やかな風にゆらゆらと揺れて綺麗だった。

つい見とれていたら、彼女の琥珀色の瞳と視線がかち合う。見つめていた事がバレたようで気まずくなる。


「あなたの赤い髪が日差しのにあたってとても綺麗だと思って…不躾にごめんなさい。」


「聖女殿にその様に言っていただきありがとうございます。」


真っ白な頬がうっすら桃色に色づいたのは気のせいでは無い…かな。うふふっ。


「私の国では黒髪が一般的で。あなたみたいに混じり気ない赤はとっても綺麗で、ついつい見惚れちゃった。」


「聖女殿の国では黒い色が当たり前なのでしょうか?

この世界では黒は聖女様以外には少ないのです。黒髪と黒眼が召喚される聖女殿の代名詞と言われる位です。」


「そうなの?私の国はほとんどの人が黒髪の黒眼だから、こちらの世界に来て驚いたわ。」


そう言ってまじまじと見てしまった。

綺麗な色は羨ましい。生まれてから黒だから何の有り難みなんて無い日本人には身近すぎる色だし。


「お茶とお菓子をお持ちしましたぁ。」

声がした方を向くと庭の入り口から昨日の、確かカリノ=テスタと名乗っていた侍女がカートを推しながらガゼボにやって来る。


「おはようございますぅ。聖女さまぁ。

今日は散策日和ですねぇ。」


そう喋りながらテーブルにお茶を淹れ、菓子をサーヴした。


のんびりとした舌ったらず口調でお茶を淹れると、私の前の椅子をひいて座り話し始めた。


「聖女さまはぁ、何がお好きですのぅ?

今日のお菓子はラルッタの有名なチョコレートケーキですよぅ。とっても美味しいのですぅ。」


「あ…ありがとう。」


何をするんだ?と驚いていたマリアーナさんはカリノさんの目を見てはっきりと指摘する。


「カリノさん。

聖女殿はあなたのお友達ではございません。

お仕えする尊きお方です。態度を改めなさいませ。」


カリノさんは長いポニーテールの金髪を綺麗な白く細い指でクルクルと遊ばせながら私とマリアーナさんを見比べた。


「えぇ?私は聖女さまと侍女なだけでなくお友達になりたいですぅ。ねぇ聖女さまぁ。私ぃお友達ですわよねぇ。」


そう言って下から可愛く甘えた声で私を見上げる。


「えっ。あの…私は…」


突然の事に右往左往していると援護が入った。


「横から失礼したします。

テスタ伯爵令嬢は勘違いなされているのか?侍女はオトモダチではなく使用人の1人では無いのか?」


「使用人ではありますけどぉ、私達はお話し相手でもあるでしょう?聖女様には一番近い女性の友達でしょう?」


ルスタリーシュ様が鋭く目でカリノを咎めだてするも、気にした風もなく彼女はそう言って私を再び見つめて手まで握ってくる。


あぁーなんて言ったらいいのか。これが距離無しなのかしら。


私はどういう立場なのかわからないからどう動いたらいいか正解か判断つかないわ…。私は対応に困ってしまった。


「君の言動は貴族令嬢として如何なのかな。侍女は侍女だよ。

聖女殿のご友人候補は後ほど紹介されると聞いているよ。勘違いがすぎるのでは無いかな。」


そう言ってメルクリオ隊長はカリノさんに冷たい目を向けている。流石に伯爵から言われると身の置き場所がなくなったようで、カリノさんは椅子から立ち上がり頭をちょこんと下げた。


「えぇ。そうなのですかぁ?

知らなかったですぅ。申し訳ありません。聖女さまぁ。」


「い…いえ。私も立場がよくわからなくて。ごめんなさい。これからもよろしくね。」


私が答えると、あっさり頭を上げて満面の笑を向けた。


「はいー。よろしくお願いしますぅ。」


一連の流れがあって、なんだかマリアーナさんの眉は少し下がっているようにみえた。


私もなんか…疲れた。

カリノさんは注意されてからはマリアーナさんの隣に並んで立ち何事もなかったかの様に待機していた。


「エシャロット伯爵様。先程は聖女殿をお守りいただきありがとうございました。」


「気にする事は無いよ。君の立場では難しいからね。私は伯爵でもあるから話を通しやすい。何かあればいつでも相談してくれ。我々は護衛が仕事なのだから。」


マリアーナさんではカリノさんに対処出来ないのか…。爵位って面倒なんだなぁと後ろで小声で話す話を聞きながら噴水に癒されてチョコレートケーキをいただく。むっ。確かに美味しい。伯爵令嬢の薦める有名店なだけあるな!!そう思ってつい口が綻んでしまった一瞬をルスタリーシュ様が見ていた様で護衛しながらも綺麗な顔を傾げながらクスクス笑っていた。

綺麗な人は得だねぇ。どんな姿も美しいとは。


「聖女殿。そろそろ魔術師長がいらっしゃるお時間です。お部屋に戻りましょう。」


ケーキのおいしさをゆっくりと堪能しひと息ついた頃に部屋に戻る時間だと知らされて、マリアーナさんに先導されて戻った。


夏の庭から私の部屋への道順は…複雑すぎて覚えられなかった。

読みやすくなるように頑張ります。

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