新しい居場所
誤字脱字お知らせ下さい。
話の都合上長めになっています。
転載は禁止です。
侍女殿に付いていくと1つの扉の前で説明された。
「こちらが聖女殿のお部屋となります。準備が足りなければ何でもおっしゃってくださいませ。」
そう言われて部屋の中に入るととても1人の部屋とは思えないほど豪華な広い部屋だった。
学校教室4部屋ぶんはあるかな?
とんでもなく豪華。私どこに居たらいいんだろう?案内されたはいいがどうしろと。
壁には透かしのダマスクス模様が入った淡い白でシンプルだが華やかさがある。ソファなどの家具は重厚かつ可愛く女性向けのデザインがされている。
夏らしく薄い青と金糸で花の庭の刺繍が巡らされていてたカーテンがゆらゆらとたなびく。日当たりのいいこの部屋が暑すぎない事から日差しが計算されているのを感じる。
洗練された部屋だが、庶民の私には豪華すぎて足がすくむ思いになった。綺麗な部屋は嬉しいけれど落ち着かない。たまに行く旅行で充分である。こんな部屋で毎日過ごすのは疲れそうだ。繊細そうな家具を壊したらと思うと触れるのも怖い。
私が所在無く立ち尽くしていると彼女は中央のローテーブルのある場所の大きなソファに座る様に誘導する。
最初の部屋とは異なり人目がなくなった事で気持ちも落ち着いてきた。やっと私の頭は回り始めたが頭の中の疑問に答えはまだ無いと言う事は理解できた。
絨毯が沈む…なんて歩き心地の悪い地面なんだろうと思いながら移動し、ソファに座った。ふわふわなのに安定感があるとか初めてだわぁ…
"コンコン"
侍女頭が入室を許可するとカートを転がして3人の侍女服を着た女性が入ってきた。
入ってきた綺麗な女性いや女の子達の可愛いさにぼーっと見とれている間に、テーブルには甘い優しい香りを漂わせながケーキやクッキーをサーヴされ紅茶を注がれた。
この香りはアールグレイかな?この世界にもあるのね?そう思いながらも喉は緊張でカラカラになっていたようで、遠慮なくゆっくりお茶を味わわせてもらった。
考えようとしてもなんだか何も判らない?
モヤがかかったような。それとも私が変なんだろうか?
こんな不思議な事ばかりなのに何だか違和感が拭えないようなそうでも無いような…
そう考えていると
「聖女さまにお仕えする指示を紹介させていただきます。右から聖女様付侍女であるマリアーナ=ラスクート、カリノ=テスタ、ヴァネッサ=クロスヴェーラでごさいます。」
と、侍女頭が並んだ少女達を紹介してくれた。
初めの1人。ウェーブした腰までの長い赤髪で瞳は琥珀色。右目の下には特徴的な泣きぼくろがある。
「私はラスクート伯爵が1子マリアーナです。よろしくお願いします」
少女は一歩前に出ると低めの耳に心地よい声で名乗り美しくカーテシーした。
2人目は、愛らしい顔の長い金髪をポニーテールにした緑眼の女の子だ。
「私テスタ伯爵が3女カリノですぅ。お側に仕える事ができてとっても嬉しいです!よろしくお願いしますねぇ。」
ぴょこんと音がしそうな程元気よく挨拶し、カーテシーした。自己紹介した声は顔に似合って可愛いく甘ったるい。
最後は長いウェーブの金髪の女の子。前髪は編み込んで右から左耳に流し後髪はお団子のハーフアップにしていた。水色の猫眼に意思の強さを感じる。
「私、クロスヴェーラ侯爵が2女ヴァネッサと申しますわ。どうぞ仲良く致しましょう?」
少し高めの可愛い声で名乗り美しいカーテシーをして微笑んだ。
3者3様の挨拶が終わると侍女頭は用事があるのか退出していき侍女3人が部屋に残される。
2人はそっと壁際に待機した。そこが定位置なのかな?
クロスヴェーラ侯爵令嬢は1人だけこちらに向かって来ると挑むように私に話しかける。
「私、あなたとお話がしたいわ!こちら座っていいかしら?」
突然の行動に私は首肯する間もなく、彼女は流れる様に美しい所作で正面の椅子に座った。
彼女が近づいて気づいた。耳には美しい紅い石のついた金色の細やかな細工入りのイヤーカフが飾られていた。おしゃれが似合っていて可愛いなぁ。みんな私と同い年位かな。
口元は親しげに笑んでいるが、こちらを探るように見つめる水色の瞳は私を強く意識していると感じた。
「私は先程申しましたがヴァネッサ=クロスヴェーラですわ。あなたのお名前窺ってもよろしいかしら?」
「ヴァネッサさん。皇太子殿下がいらっしゃるまでお待ちするのが筋ではありませんか?」
侍女仲間の突然の行動に、壁際に待機していたラスクート伯爵令嬢と名乗った赤髪の侍女から少し厳しめの声がかかる。
もう1人のテスタ伯爵令嬢と自己紹介していた金髪のポニーテールの侍女も
「そうですよぅ。私だって聖女サマとお友達になりたいけれど我慢してるんですからぁ。抜け駆けはズルいですぅ。」
と、注意か意見かわからない言葉を漏らす。
こんな時どうしたいいかわからない。私が声かけていいものなのだろうか?とりあえず答えて名乗らなければ会話にならないだろうか?と思い
「私の名前はマサミです。初めまして。」
と名乗って様子をうかがう。
「まぁ、マサミさんとおっしゃるのね。私あなたと仲良くなりたいわ。
どんなことができるのかしら?」
侍女って友達でいいのかな?
できる?できるとはなんだろう?
と、思っていると…扉の外から声がかかった。
"コンコン"
「聖女様。ご説明に参りました入ってもよろしいでしょうか?」
クロスヴェーラ侯爵令嬢が、「どうぞ。」と入室を許可すれば先程の筆頭魔術師と皇太子殿下と知らない2人の男性が入ってきた。
室内の様子を流れるように眺める。不穏な空気が感じとれたのかもしれない。流石だ。
「これはこれは…聖女様に何をされていたのかな?ヴァネッサ孃?」
皇子が椅子に座っているクロスヴェーラ侯爵令嬢に目を細め含みのある視線を向けた。
「いえ何も?私はマサミ様とただ仲良くなっただけですわ。」
そう言って彼女は席を立ちあがり、美しいカーテシーをして壁際に下がった。その姿を男性達は一瞥し見送る。
なんだろ?何かあるのかな?仲良く無い…のかな?
男性達4人はそれぞれ椅子に座ると話はじめた。
「先程も自己紹介したが、私がこのタンタルティア帝国皇太子のアーレント。そしてこちらのローブを着た筆頭魔術師が今回の聖女召喚を行ったコンテスタだよ。」
そう言って正面の長椅子に座ったアーレント皇太子殿下が再度説明してくれる。
「そして、こちらの二人も紹介しよう。
聖女様の左の男性がこの国の宰相であるアストムル伯爵。右の男性が聖女様の護衛の長となるエシャロット伯爵メルクリオン=ハッサムだ。」
そう言われて左側を向くと老年にさしかかる髪も瞳も茶色い、丸顔の人当たりの良さそうな優しい眼をしたおじさまが立ち上がる。
「紹介いただいたアストムル伯爵の宰相のサムスト=ガイリャスです。聖女さまにはこの国に来ていだき感謝致します」
挨拶の後、ソファに座ったままの私の斜め前で跪きあたまを垂れる。
紹介されながら、真ん中だけ無くてサイドと後ろに残る髪がふわふわしてなんだか可愛いなぁとか思いながら現実逃避していたら突然の平伏…ぴゃっと逃げてた魂戻ってきた。
「ひぇぇ。」
情けない声が出た、なんて事なの!宰相なんていう立場の偉そうな凄そうな方に頭を下げられるなんて、心が小市民にはどうしたらいいか動転してしまうぅ…。
私の口からそんな声が漏れてしまうと、皇子殿下は少し驚き可笑しそうにしてクツクツと笑ってこちらを見ていた。
一般庶民の私には普通の年上にすら頭を下げられる経験などある訳がない。色々とおそれおおすぎた。
そんな私などお構い無しに、今度は右の椅子に座っていた黒い隊服を着た筋肉質な背の高い男性が立ち上がる。
面長の偉丈夫で金の癖毛の短髪が似合っている。切れ長の意思の強そうな新緑眼でしっかりと見つめられる。
「私は聖女様を護衛する任を預かりましたエシャロット伯爵メルクリオ=ハッサムで有ります。
聖女殿が安心して過ごされます様に何事よりも私共がお守り致します。常時警護させていただきますので、いつ何時でもお呼びくださいませ。」
これまた堅苦しい顔つきで礼をしたのちに跪かれた。
「…。」
私はもういっぱいいっぱいで声も出ない。
表情もきっと固まっているだろう。
そんな私の様子をずっと苦笑しながら見ていた皇子殿下が手を差し伸べてくれた。
「お二人共。座られるがいい。
聖女殿が驚いていらっしゃるようだよ。
マリアーナ。お茶をお願いできるかい。」
そう言って1度場を整えようと動いてくださる。跪いていたお二人が元の椅子に戻られ、ラスクート伯爵令嬢が淹れたお茶を飲んでみんなで一服するのを待つ。私も新しいお茶を飲んで緊張と衝撃で乱高下な心を落ち着かせた。
"コンコン"
「エリシェル=ポートラム、戻りました。入ってよろしいでしょうか?」
「待っていたよ。入ってくれ。」
侍女頭ポートラム伯爵夫人は部屋に入って来るなり
「あなた達三人はしばし他の仕事をしていて下さい。また後ほど呼びます。」
と侍女達に退出するようにと声をかける。
「私達もこちらで待機しても構いませんか?私。聖女様がご不安で無いか心配ですの。いかがかしら?」
クロスヴェーラ侯爵令嬢は可愛らしく思案する様子で語り出し不敵に微笑みながらそう言うと、こちらを向いて私に同意を得ようとしているのか。
彼女からの私への視線を遮る様に、筆頭魔術師様が立ち上がり私の前を塞いだ。
「君の気遣いは不用だよ。聖女殿には侍女頭が付いている。何も心配あるわけないよ。退出して構わない。」
彼女の提案をばっさりと叩き落とすかのように、低く冷静な声だった。
「左様でございますか…。
では、聖女様何かありましたら私を呼んでくださいな。」
彼女は筆頭魔術師様に対して一瞬だけ不満そうな視線を向けたものの、指示をうけいれたようで私ににっこりと笑って退出した。
続くように、二人の侍女もテスタ伯爵令嬢は不安げにラスクート伯爵令嬢はきっちりと礼をして退出して行った。
何だかギスギスしてるみたい。仲良くできるかなぁ?と思うのであった。
再び静けさを取り戻した室内。
気がつけば侍女頭は私の後ろに待機していた。いつの間に移動したのよ?気配が無かった…と思うも、皇子殿下達が残っていたんだった。まだまだ緊張は続く。
「やっと落ち着いたかな。
何だか悪かったね。これで落ち着いて話し合いができるね。
ところで聖女殿のお名前を教えていただきたい。」
皇子殿下は本題を切り出しす事にしたようだ。
「私は…マサミ…です。」
「そう。マサミ殿と言うのだね。
聖女マサミ殿。この世界には聖女が必要なのです。その為に聖女様を召喚しました。どうか、この世界のためにこの国に留まってくださいませんか?」
「聖女?なんで?私は…帰れないのですか?」
「申し訳ありません。
女神様が選びこの世界に召喚された聖女さまは帰ることができないのです。その代わり、可能な限りで過ごしやすい生活を保証いたします。なんなりとおっしゃって下さい。」
柔らかい笑顔で断言され、私は返す言葉を失った。
帰れない…のか。帰れない。
頭がぼんやりする。なんだろう。私は…。
「いきなりの事で混乱しているかと思う。
詳細は明日からの方が良いかな。ゆっくり考えて行って下さい。我々は援助を惜しまないと誓う。まずはこの国の事を知って貰いたいと思っている。何か私達にできる事はないだろうか?」
「では…この世界…の事を知りたいです。あと、聖女とは…なんですか?」
「そうだね。…聖女マサミ殿は勤勉なのだね。この世界の事を知ろうとして下さる。ありがたい事です。
ならば、まずは学習の時間を作ろう。最初は聖女についてとこの国と世界の事を。先生を手配しておこう。」
「ありがとうございます。助かります。」
やっと緊張が少し解れたのかお菓子に私の手がのびた。
「…美味しぃ…」
間が持たなくてサクサクと小さなクッキーを少しだけかじった。
私の様子に現状ち受け入れられていそうだと安堵したのか。宰相は頷いて聞いてきた。
「お口に合う様でよろしゅうございました。
聖女殿のお世話に歳の近そうな者達を揃えましたがいかがでしたか?何か問題あればご相談下さい。すぐに対応させていただきます。」
先程の3人を思い出す。うーん。まだわからないかな、と言うのか今の所の感想だった
「えっと、、ありがとうごさいます。」
「では、今日のところはゆっくりお休み下さい。また細かいことは追々明日にでもお時間いただきたいとと思っております。」
「はい。わかりました。」
考えてもしょうがない。出来ることからやって行こうと切り替え了承すると、4人は立ち上がり退出すると言う。
私もお見送りをしようと立ち上がると、騎士様がゆっくり振り返る。
「私は今以降、護衛任務にあたります。交代の人員も居ますので随時ご挨拶させていただきたく思います。」
連絡事項のように述べてきっちり45度の礼をして退出するとこの部屋の扉の前の廊下に立つ。
私は部屋を出る4人にいつも通りにペコリと礼をしようとすると遮られた。
「なりませんよ。聖女殿は何者にも頭を下げなくてもよいのですよ。」
私の斜め後ろに立っていたポートラム伯爵夫人から小声で注意をうけた。私は驚きつつも、どうしたらいいのか狼狽えていたら4人はあっさりと退出して行った。
日本人の性として挨拶て頭を下げないのは落ち着かないなぁ…今の立場も。そんな気分のまま、ソファに戻って座る。
人目が気になって落ち着かない。ゴロゴロしたいよぅ…うぅ。
ふと外を見るといつの間にか夕暮れになろうとしていた。朱から青に変わりゆく空が綺麗で、惹かれるようにバルコニーに出ようとするとポートラム伯爵夫人が手を取り連れ出してくれた。
じっと空を眺める。
たった数時間で色々あった。
私はどう生きていこう?
懐かしい?なつかしい…何が?この空が?
相変わらず考えてる事がぐちゃぐちゃな様だ。世界が違っても夕暮れは変わらない。
涼しい風がそよぎ服をなびかせる。
吸い込む空気は大自然の中にある様に美味しく感じられる。
でも、切ない。満たされない。
この世界で私は1人だ。そう感じた。夕日が暮れきるまで空を見つめぼんやりしていた。
「聖女殿。寒くなって参ります。
お食事になさいますか?お身体を潔められますか?」
驚いた。もうこんな時間…2時間ほど眺めていた様だ。
「今日は疲れてしまって。お風呂に入って休みたいです。いいですか?」
「勿論でございます。どうぞこちらへ。」
先導された先にあったのは部屋付きの湯殿だった。
…広い。これまた何処の浴場なのかと。水の流れ出る女神らしき像の水瓶。美しいモザイクタイルの壁に真っ白大理石の床。室内の一角には外窓から光が入った小さな花壇のお庭まである。
「お手伝いの女官を呼んで参りました。
どうぞこちらに。」
侍女頭が呼んでいたと思われる女官達は私の服を脱がせようとする。
「聖女様のお召し物を替えさせて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「え?!待って!私は1人で入りたいです。」
「お1人では大変ではございませんか?」
「いやいや!私の世界では大人は1人で入るんです!だから、安心してください!1人でできますから!!」
「……了解いたしました。
何かございましたらお呼び下さいね。すぐお側で待機しておりますので。」
どうするか悩んだようだが渋々ポートラム伯爵夫人は私を湯殿に残して、居室へと渋々ながら退出して行った。はぁ…お風呂すらひとりになれないかと思った!良かった!!
薔薇とカミツレの良い香りのするお風呂に浸かって、やっと人心地ついた様にぐったり座り込む。
目まぐるしい一日だった…疲れた。
考えようとすると頭にモヤがかかる気がする。コレなんだろう?
でも、ここで生きていかなきゃ…はぁ
生きて来た世界が違いすぎて…はあ。
広くて豪華なお風呂なのに楽しめない。湯の中に顔を沈めてぶくぶくとため息をついてみる。
長々と入って少し湯当たりしたみたい。よし出よう。そう切り替えてお風呂から出るとなんだかスッキリした。
湯殿の出口には沢山のタオルと着替え用の頼りない下着と夜着と思われる柔らかな白いシンプルドレスが用意してあった。着ていた服は回収されたのかコレしかない。仕方なしに着替えて浴室を出ると、侍女頭と三人の侍女が待っていた。
「お疲れ様でございました。お食事はこちらに運ぶ予定ですが、いかがなさいますか?簡単なものにする事もできますよ。」
「では、簡単な果物か何かでお願いします。あと、喉が乾いてしまって。何か飲み物を頂けませんか?」
「お飲み物とお食事にサンドイッチとスープとフルーツをお持ちしましょう。カリノ、料理長にお願いしてお持ちして。」
侍女頭の指示でカリノが取りに行く事になった様で、そっと退出して行く。
「本日の夜番はマリアーナが致します。控え室にて待機しておりますのでこちらのベルでいつでもお呼び下さい。」
そう言って"ちりんっ"とテーブルにある金色の花の彫刻を模った可愛らしいベルを鳴らして見せた。
「本日は私がお世話させて頂きます。」
「わかりました。今日はありがとうございました。また明日からも色々とお願いします。」
挨拶を終えるとポートラム伯爵夫人は退出して行く。ずっと人がいる生活なのかなー?慣れなくて疲れちゃいそう…
「お髪が濡れてお風邪を召されない様に乾かさせて頂いてもよろしいですか。」
そう言われて、そう言えば簡単にタオルドライしただけだったと思い出す。夏とは言え油断したら風邪ひいちゃうかも?と思いお願いした。
おしゃれで煌びやかなドレッサーに座らされた。鏡の周りの彫刻が美しい。まるでお姫様のドレッサー。そんな鏡に映り込むのは典型的な普通の日本人で…場違いさにちょっと笑っちゃう。
「失礼しますね。…"乾燥"…」
そう言って櫛を通しながら髪にふわっと温かい風がそよぐ。
びっくりした!そう言えば魔法…魔法陣が有るくらいだから…魔法もあるのか!うわぁ!と異世界に驚いた。
「これ…魔法…?」
「失礼しました!熱かったでしょうか?強すぎましたか?」
「いえ!初めてだったので驚いただけです。ごめんなさい。凄いですね!魔法…」
「こちらは魔術です。聖女殿も使う事が可能かと存じます。ご興味がありましたら学習できるよう伝えておきますが、いかがしましょう?」
「私にも…使えるの?是非使ってみたいわ!
お願いできる?」
「はい。楽しみでございますね。」
そう言いながら、ラスクート伯爵令嬢は無表情だった顔にほのかな笑みを乗せ私の肩までの短い髪を整えてくれた。
ミーハーな様だが魔術に触れて初めて異世界で楽しくなってきた。彼女は思いの外優しそう?だと認識を変える。
"コンコン。"
ラスクート伯爵令嬢は私に目配せするように顔を見つめてきた。何の目配せか分からず間が置き、私が許可を出すのか!と思い至って入室許可の返事をした。
「どうぞ入って。」
「お食事をご用意致しましたぁ。」
テスタ伯爵令嬢が食事をカートで運び込み窓際のテーブルに食事をセットすると退出して行った。
テーブルに座り注いでもらったレモンの果実水を飲みながら、慣れないナイフとフォークでトマトとハムのサンドイッチを食べる。
手で食べたい…。しかしどんな時でもお腹は減るんだなぁー、そうしみじみと思いながらメロンの様な果物を食べてみる。味は…変わらない。ちゃんとトマトでちゃんとハムでちゃんとメロン。
夜空を眺めると星空の中に青い月と赤い月が二つ並んでいた。あっ!異世界だぁ!月が2つも有る!こんな所は異世界らしいんだなぁー。
異世界なんて物語の中のモノだと思っていた。ゲームの中のモノだの思っていた。空想の世界だから楽しめるモノだ。それが現実…夢かもしれない…実感は未だ無い。
思いを巡らせながら淡々と食事を済ませる私を、ラスクート伯爵令嬢は不安そうな瞳で見つめていた。
食事を終えると、続きの間になっていた寝室に案内された。
これまた広い…
これだけで教室ひとつは軽く入りそう。天蓋付きベッドなんて初めて見た!レースのあしらわれた白と薄桃色のクイーンサイズのベッドがふかふかのラグと共に鎮座して居る。
とっても飛び込みたい!!でも流石に遠慮しよう…うわぁうわぁ!ゆったりと座ってふわふわなベッドを堪能しながら寝転ぶと、広すぎで真ん中が遠い…。
広すぎるのも大変なんだ…知らなかった。
ベッドサイドには可愛いステンドグラスのスタンドとベルにデキャンタが置いてある。こんな所もおしゃれだわ。
「こちらのベッドサイドにもベルがござますので御用がありましたらお呼びくださいませ。おやすみなさいませ、聖女殿。」
彼女はそう言って控えの間に下がって行った。
やっと1人になれた。つかれた…
そんな風に考えているとあっという間に眠ってしまった。
読みやすくなるように頑張ります。




