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…side マリアーナ

読みやすくなるよう頑張ります。

転載禁止です。

私には小さな頃に仲の良い婚約者が居た。アッシュ=ニールセンという3つ年上の可愛い男の子。


5歳の時に始めて会った彼は隣の領地に住んでいて幼馴染として仲良く遊びながら共に育った。1人っ子の私にとっては遊び相手の頼りになるお兄さんだった。


泥だらけになったり、木の上に登ったり、本を読んだり、野原でお昼寝したり、気質が合うのか年が離れていても私達は仲良く遊んでいた。

彼の兄達は10こも上で私とっては一緒に過ごすことは無かった。



大きくなりそろそろ学院に入る前に伯爵家跡継ぎになる私に婚約者を決めようと両親が話し合い、私達は婚約者になった。


先に学院に通っていた彼の評判は悪くなかった。むしろ良かったと思う。学院でも頑張っていて将来の志望先は近衛騎士だそうだ。今の所は不可能では無いらしい。凄いっ。


お互いに嫌いでは無い。好きでは無いかもしれないが、どちらかといえば好きな方。

歳と共に気持ちを育てて行ければいいと思っていた。こんなものかな…と。

彼も同様だと言っていた。このままずっと仲良くやれそうだと思った。


私達の左耳には互いの瞳の色石の入ったカフスがついた。一緒に選んだ細工飾りと石の色だった。2人で並んでソファに座り「ああでも無いこうでも無い。」とあれこれ言いながら選んだのはとても楽しい思い出。



10歳になり、新しい年になると学院に入学した私は新しい友達と仲良くなった。その中にメリナが居た。互いに1人っ子で、私とメリナは3ヶ月も経つと気の合う友達になった。


私は婚約者としてなるべく彼とのお出かけや関わりを持つようにしていた。偶に私と特に仲のいいメリナが一緒になるのは必然だったと思う。

私と一緒にいる事で彼と彼女の距離も次第に近くなる。

そして、彼はメリナを好きになった。私の好きな素敵な彼女を彼が好きにならない訳がなかったのかもしれない。

彼は少しずつ少年から青年になっていく。私の知らなかった彼になっていく。

それでも彼にとって私はいつまでたっても婚姻相手では無く妹のようなものだったのだ。


初めは気づかなかった。半年もした頃、メリナが彼と2人きりで仲良く話している場をたった一度だけ目撃した。

2人は私が来た事に気づくと何事もなかったかのように、いつもの3人のように共に過ごした。


1年も経つころには、私は2人が特別な関係になりたいと思っているんじゃないかと感じるようになった。

彼との関わりで気づく。2人のふとした際のほんの一瞬の互いの眼を合わせ交わすやり取り。私とのお出かけで彼女の好きそうなものを見つけた時の焦点の合わないぼんやりと考え事をした後の彼の顔。

自分では気付いていないのだろう、彼の顔は私の知らないふにゃりとした本当に幸せそうな笑顔だった。きっと彼女の笑顔を想像したのだと思う。

貴方とは長い付き合いだもの。にぶい私でもそれくらいわかるわ。


2人は私の前では決して周囲に悟らせないようにしていた。けれど、2人を好きな私には分かっていた。お互いがどれほどに我慢しているのか。


成長した11歳の彼は幼い顔立ちに似合わず強くて凄い生徒になり、学院の騎士科で実施された模擬戦の勝率は高い。戦う時の彼は普段と違い、武術に真剣に向き合っているとかんじさせる硬質な独特な常にない空気感がある。ちょっとだけいつもと違う彼のかっこよさに目を奪われた。


幼い私の幼すぎる恋心。

家族から恋に変わったばかりの小さなほの暖かい気持ちは2人の気持ちに気付いた事で冷や水を浴びたかのように凍えて溶けた。彼女達が思いあうのを目の当たりにして私のとてもとても小さな恋の炎はふっと消えてしまった。

良かった。大きくなる前で。

今なら間に合う。心を閉ざし、切り替える。


彼女にとって私は親友。彼にとって私はただの幼馴染。だからただ昔に戻るだけ。

それでも今日だけはベッドに潜り込み、泣いてしまおう。今日だけ。明日からはまた笑い合える。



メリナには婚約者が居なかった。

後継なのに居ない理由は、彼女の父母が貴族には珍しい恋愛結婚だったからだった。だから子供であるメリナにも好きな人を見つけて、自分達のような幸せを見つけて欲しいと特に婚約者を立てなかったそうだ。


それなら、私達が婚約を解消すれば良いのでは?私は迷った。政略ではないが家同士の婚約。解消するにも妥当な理由が必要だと。


私は考えた。



彼女は私の大切な親友。今までにいっぱい話した。2人でいい事も悪い事もたくさん話した。

私達はそこそこの伯爵家の後継。男であればと何度も言われたし私ですら思った。


家族に恵まれて友達にも恵まれて、だから私は幸せだけれど重荷が辛かった。伯爵家という圧倒的な立場、歴史も権力も先祖が積み重ねた努力があってこその。

私が受け取れるようなものでは無いのに私にのしかかってくる。父母の期待は嬉しい。けれど怖い。私の力で手に入れたものではないから私のせいで無くしてしまう事がいつか来るのではないかと。

思い切れる自信が無かった。


同じ立場なのに、彼女は強かった。

1人なんかじゃ無いって。家族が一緒、家臣も一緒、友達も。不安な事はいくら考えても無くならないんだから、一緒に考えて答えを探していけばいいんだって。


何度も何度も私の悲観的な言葉を否定して、私の心を受け入れた上で肯定した上で出来ると。私なら出来ると。「貴女ならできるわ。」「自信を持って!。」そう彼女の顔と声と優しさに励まされた。弱かった幼い私は彼女には色んな事が素直に話せた。


そんな優しい彼女だから、私は彼女を悲しませたく無かった。彼女だけの片想いなら…心苦しけれど譲れなかっただろう。

けれど、彼女達は両思い。

とっても悲しい2つの別れより、少し悲しい1つの別れの方が良いと思った。

私は彼との別れを選んだ。



私にとって兄のような彼と姉妹のような親友の彼女。2人には心から幸せになって欲しい。

私は彼女達の為に動く事にした。



私の両親の説得は難しくないだろう。元よりただ仲良くやれそうだからという理由の婚約だったから、この縁にこだわる必要は無いはず。

そう考えていた私は婚約の解消について両親に話した。私が思っていた通りには行かなかった。

両親は私を心配した。本当に彼の事が好きではないのか?解消してもいいのか?他に好きな人がいるのか?次の婚約のあてがあるのか?結婚したくないのか?…もっと言われたと思う。

私は2人がこんなに私の事を思っていてくれたのかと思い知ることができて嬉しかった。愛してくれているのはわかっていたけど、こんなにも考えてくれるくらいに…愛されていたなんて。


私は正直に話した。

彼と彼女が思い合っているけれど、私のために忘れようと努力しているのだと。私はそんな2人が好きで幸せになって欲しいから、婚約を解消したいのだと。私はこのまま結婚しても、疑心になり幸せになれないと思うとも伝えた。

両親は私の思いを受け止め、私のわがままをきいて婚約の解消を了承してくれた。



問題は彼の家の説得だ。

彼の家は利が有れば許して貰えると思う。私とメリナは爵位も時期当主であるという事も同じだから問題無いのではないかと考えて、彼に相談した。


私は貴方と彼女の気持ちに気づいていて婚約も解消しようと思っているのだと。彼はとっても驚いていた。私に気づかれていた事に気付いたいていなかった。隠し通せて居たって…その辺りは鈍感、だったのね。


あっさり同意を得られると思っていたのに彼にも父母と同じような理由で反対された。ああ、やっぱり彼は私の家族なんだと心が温かくなる。私の恋心はもうさっぱり消えていたのだ。

私は必死に説得した。婚約を解消しても私の心は傷つかない。このままでは誰も幸せになれない。だからどうか本当の気持ちを教えて欲しいと。何度となく話し合い、やっと彼は素直になった。

それからは早かった。私の家の同意も既に有る為、メリナも私と同様に爵位持ちである、3人共に納得していると言えば彼の両親は婚約解消に頷いてくれた。


最後に、どんなに私の心が傷つかなくても解消は残念だと、私の事と次の婚約の心配をしてくれた彼の両親はとても素晴らしい人達だと思った。



後は彼女次第。

私は彼との婚約を解消する事をメリナに伝えた。両家の同意の下である事も。その理由の1つにメリナが彼を好きな事を私が分かっているという事も。


彼女は目を見開き驚く。彼女の瞳がこぼれ落ちそう。声も出ないようだ。ハクハクと何度も口を開いては閉じてそれでも何も語らない。


「もう決まった事なのよ。知らせるのが遅れてごめんね。色々と忙しくて終わってからの報告になっちゃった。」


彼女の顔見つめてしばし反応を待つ。

彼女は納得できない顔をして、なんとも言えない顔になり、やがて諦めたのか悲しそうな顔をした。そして彼女はやっと口を開き、何度も私に謝る。


「ごめんなさい…。私が悪いの。彼はマリアーナを裏切ってないわ。絶対に。」


私の報告を呆然として聞くメリナ。そこに喜びは見えない。きっと彼よりも私の事考えてくれている。そんな貴女だから私は行動したの。貴女の為に。


「わかってる。メリナも裏切ったりしていないでしょう?私はこれからも変わらないわ。貴女も彼もずっと友達よ。それとも、私の事嫌いに…なった?。」


「嫌いになんてなれない。…羨ましいとは思っていたけど、私には手の届かない2人だと思っていたわ。」


「彼に手が届きそうよ?どうする?貴女は掴むの?諦めるの?。」


「私に掴む資格は無いわ。これは…横恋慕よ。謝っ…」


「私は私を好きじゃない人は要らないわ。友達としてなら良いけど。彼は最初から最後まで友人のまま。だから彼は貴女にあげる。」


「…そんな。」


「ねぇ。私の事友達だと思ってくれているなら、受け取って欲しいな。彼の気持ちも大事にしてあげて?私は2人共幸せになって欲しいわ。」


「本当に、本当にそれで良いの?マリアーナ。貴女の幸せは?。」


「私?私の未来はまだこれからだわ。

何言ってるのよ。私まだ死なないわよ?。」


「貴女こそ何言ってるの?。」


「ねぇメリナ。私この決断に後悔は無いわ。だからお願い。貴女の心に素直になって。」


微笑み続ける私に、硬い表情のメリナ。2人の間に長い沈黙が降りる。


「分かった。私、素直になる。彼が好きなの。ずっと。ごめんなさい。」


「そこは、ありがとうでしょう?。」



これで全ての家族か納得できる。私と彼の婚約は解消された。12歳の終わりだった。9歳から一緒だった彼との道が分たれた。



私と彼の婚約を解消して1年経ち、2人は無事に婚約した。3人で盛大にお祝いをした。



学院を卒院する前もしてからも2人との友情は変わらず、時折3人に出でかけては昔みたいに笑い合い怒り合いながら過ごした。


伯爵家を継ぐのなら高等学院に行くかと問われたが私にはそこまでの自信が無かったので侍女になる事にした。いずれ継ぐだろうがそれまでは父母に甘えさせてもらう。

父母は新しい婚約者を探してくれている。少し心配させて迷惑をかけたけれど、親孝行できるまで次の将来の相手が見つかるまで自分なりに頑張りたいと思っていた。


侍女にも試験があり、運にも恵まれたのか高位貴族に仕える立場になった。選ばれたからには今の私にできる事を頑張る事にした。仕事は大変だった。知らない事ばかりで甘えは許され無い。


そしてどういう理由か、聖女様に仕える栄誉まで頂いた。人生何があるかわからないんだ。こんなの未来は想像していなった。

優しい聖女様にに仕える事ができるなんて頑張ってきた甲斐があった!私は今幸せだと思う。



結婚式に招待された。

とってもとっても素敵な式だった。


彼女の母が刺繍した清楚な真っ白なドレスを着て刺繍の入った美しいベールを被り美しいティアラを被った彼女は輝かんばかりの美しさと清らかさだった。彼は白いタキシードを着て彼女を包み込む様な温かさと強さのある偉丈夫になった。2人共とてもお似合いだった。


「おめでとう!2人とも!。幸せになってね!」


「ありがとう!絶対に幸せになるから!」


「オレが幸せにするし自分も幸せになるさ。

今日は来てくれてありがとな。マリアーナ!」


「メリナを泣かせたら殴りに行くわよ!」


皆んなに祝福され、彼女と彼が幸せそうにしているのを見て嬉しくて涙が溢れた。私の大切な親友達。


2人が幸せになれそうで良かった!


達成感があった!私がこの2人を幸せにした!なんて、今日位は思ってもいいかな?

私の決断に今も全く後悔は無い。

彼から貰ったカフスは未だに私の宝石箱に入っている。私の大切ないい思い出として。



父から婚約者が決まったと連絡がきた。顔合わせがある。新しい婚約者はどんな人だろうか。私も婚約者と少しでも愛し愛される関係になれるだろうか。

誤字脱字あればお知らせください。

読んで頂きありがとうございます。

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