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彼女の事情

読みやすくなるよう頑張ります。

転載禁止です。

午後から淑女授業があるが、その前に午前中に約束したヴァネッサさんのお兄様と面会する事になってしまった。場所は自室を使っての面会はルスタリーシュ様に「護衛の関係上駄目だ」と言われて少し離れた空き部屋を使うことになった。

お掃除や準備にちょっとだけ大変になってしまい………申し訳無く思う。



♢ ♢ ♢



面会の部屋はオレンジと白で構成された夏色のお部屋だった。ラベンダーを中心にした霞草や大ぶりの葉っぱが飾られていて良い香りが部屋いっぱいに広がっている。

落ち着いたこのお部屋でお茶を飲みながらの面会をする…予定らしい。


「初めてお目にかかります。聖女殿。私クロスヴェーラ侯爵家嫡男、ヴァルドール=クロスヴェーラでございます。よろしくお願いしますね。」


入ってくるなり、私がソファから立ち上がる前に跪かれた。その動作が早業すぎて私は驚くよりも固まる。固まっている間に挨拶は済んでいて、彼は私の斜め前の椅子に座った。


長身のふわふわ金髪の水色眼で、ヴァネッサさんそっくりの男性。身形に気を使うタイプなのか官服には繊細なアクセサリーが飾られている。替えボタンはトパーズ?かな、肩口のマントを留める部分には金鎖のチェーンが垂らされ襟にはピンブローチが刺してあった。

色々と高価そうな装飾の装いでより華やかな雰囲気をまとわれる方。第一印象から、既に彼と気が合わなそうな気配がした。


ヴァネッサさんが紅茶を淹れてくれた。さっぱりとしたレモンティー。気合いを入れ直そうとゆっくりと味わいながら心を落ち着かせた。

彼は私の後ろに立つヴァネッサさんをちらりと見ると、後は気にした風もなく話し始める。


「ヴァネッサがお世話になっています。ここはいかがですか?。」


「こちらこそ、とてもお世話になっています。少しずつ慣れてきた所です。」


「そうですか?ここから出ることも叶わないのでしょう?思うようにできなくて困る事はありませんか?。」


にこにこと優しげな笑顔で話しを続けているが、何だ?私から何を聞き出したいのだろう?


「まだ外には出られませんけど、皆さん良くして頂いてますよ。ありがたいです。」


「そうですか?ヴァネッサからは外に出られないと嘆いていると聞きました…が。」


眉を下げ心配した風を装ってはいるが…私、貴方とは初対面です。何故そんなに私に気を配ってもらえるのか…が判らない。


「そんな事ないですよ?私はのんびりさせてもらっています。」


「私は貴女をここから出してあげたいのです。城の外は楽しいですよ。ここの街も他の街も旅も出来ますよ?買い物だって自由にできますよ。」


「街も旅は…その内には行きたいですが、無理を推してまでと言う訳では…」


「私と婚姻すればすぐにここから自由になれますよ。いかがでしょう?外に、出たいんでしょう?。」


「え?!外出も、その内に許可されると思うから…」


「このまま皇帝の言いなりになって良いのですか?!貴女はそもそも自由なのですよ!ここに居なければならない理由はない筈だ。」


「そうかも知れません。けれど、私はそこまで不自由とは思っていません。」


私をここから出したいのだろうか。目的がありそうだけど、私ではわからない。ヴァネッサさんは何で彼に合わせたかったんだろうと…彼女の思惑もわからず悩ましい状況だった。


「ハッ!籠の鳥でいたいのですか?自分の力で自分の意思で何もさせてもらえないのに?。」


何だか小馬鹿にするように笑い、大きな手で笑いをこらえるように口を覆い隠している。彼の目は…私の事を絶対に馬鹿にしているっ。鈍い私でもわかるようないいよう。

誰にでもこんな態度の方なの?それとも私にだけ?


「どうでしょうか。私は私なりの考えでやっているつもりですが、貴方は私に何をお求めでしょうか?。」


「フンッ。貴女は彼らの操り人形になってるって言っているんだよ。わからないかな?鈍い頭だね。

俺はこっちに来ればもっと自由にさせてあげるって教えてあげてるんだよ。君が賢いならこっちに来るだろう?。」


私が察しの悪いのは言われなくとも知っている。あっちこっちってなんかの派閥なのだろうか。おそらく帝国?皇帝?に反する勢力に来いと言っているのよね。私はどう答えたらいいの?

正直に言ったら…ヴァネッサさんのお兄様は苦手、だ。自分勝手がすぎる。

勧誘されている内容は悪くないのかも知れないけれど、この人の態度に私は反射程に拒絶してしまいそう。

どうしよう。拒否していい?いいのかな?


「私は自分の考えでここにいます。」


「本当に?本当にそう思ってる?思い込みじゃなく?囲い込まれている訳じゃなく?。」


そう言われると…そんな事もあると納得してしまう自分もいるが、ただ彼に賛同したく無い。きっと私の顔は情け無い状態だろう。


長考に入る私を見て好機と捉えたのか、彼は椅子にどっしりと座り私を煽るように上から見ると薄く笑う。

まるで"答えは1つ"…と言わんばかりだ。


私は答えない事にした。

風の音しかしない、ただ静かな時間が流れる。



"コンコン"


「お話中に失礼しますね。宰相補佐のエックト=エッケルです。クロスヴェーラ侯爵令息に至急のご相談があります。よろしいでしょうか?。」


「っチッ。……はぁ。わかった。今行く。」


「はい。お待ちしています。」


部屋の扉をひと睨みし、ため息を吐いて優雅に立ち上がる。


「あーっ。お返事はまたの機会に。良いお返事を期待していますね。それでは。」


そう言って苦い顔をしながら彼は颯爽と部屋から出て行った。



「ふーーーー。疲れた。」


私はつめていた緊張をといて思いっきりため息を吐いた。言いたい放題だ…何だったんだ?


「兄が、申し訳…ありません。」


ヴァネッサさんは小さな声で謝ると頭を下げる。私はなんと返していいか分からず彼女からの謝罪理由の説明を待った。


"コンコン"


「失礼します。護衛のルスタリーシュ=テオドラントです。入室しても構いませんか?。」


「どうぞ入ってください。」


入ってきたルスタリーシュさんは私の正面の椅子に座ると頭を下げているヴァネッサ様に自分の横に来るよう指示する。


「ヴァネッサ譲、そこに居ては説明できないだろう。私の横に来てくれ。」


彼女は指示に従い彼の斜め後ろの私と正対する位置に立つ。正対しているのに私と目を合わせない。合わせようとしない。


「今回の事は迷惑をかけたね。けれど、クロスヴェーラ侯爵令息に会わなければ、ヴァネッサ譲が辛い立場になりかね無かったから…聖女殿に協力してもらったんだよ。

何も言わなくて済まなかったね。」


説明したく無い出来ない事があるけど、ヴァネッサさんの為に皇帝の派閥?の為に今回は私エサにされたの…かな。


「なんとなく…なんとなくわかりました。彼女は悪く無いのですね?。」


良かった、でいいんだよね。私はこれでいいんだよね?


「そうだね。彼女は今回の功労者になるね。」


「わかりました。ヴァネッサさんに危険が無いのなら良いです。先程の方は協力者ですか?。」


「そうなるかな。」


「上手くいったって事、ですか?。」


「うん。ありがたい事にほぼほぼ、ね。」


「マサミ様、ご迷惑をおかけしました。でも、ありがとうございました。」


彼女は再度頭を下げた。けれど、結局私には詳細を話す事は無いらしい。はぁ。


「わかった。頭あげて。何かがなんとかなったなら良かった。じゃ、先生来るからそろそろ部屋に戻ろっか?。」


「はい。わかりました。」


いつもの口調じゃない彼女に私は何だか悲しい気持ちになってしまう。いつかは教えて欲しいけれど…私、信用無いのかな…。



♢ ♢ ♢



部屋に帰ると淑女講習が始まる。今日も本を頭に乗せて歩く練習が続いた。

足が痛いけれど慣れてきたんだろうか?本を落とす回数が前回よりも減っている。少しずつ必要な筋力がついてきているのでは?。


更に…美しい姿勢での立ち・座りの練習が行われた。立ち・座りは良い。立つと歩くで筋力がついたのか比較的わかりやすく馴染み易かった。作法の勉強に近かったように思う。

問題があったのはスカートの捌き方だった。これが…慣れない。私が元から服の皺を気にする事無く生活していた為か、咄嗟にぐしゃり…とスカートに皺が入ってしまう。

日本人って大雑把?それとも私だけ?私だけだったら…地味にへこんでしまう。


"優雅"に過ごすのはいかに大変な事なのだと…しみじみと思いながらマナーの授業をうけている。日々の意識と努力の積み重ねが大事なのですね?エストラーナ先生!

誤字脱字ありましたらお知らせ下さい。

読んで頂きありがとうございます!

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