皇太子殿下と…
読みやすくなるよう頑張ります。
転載不可です。
昨夜は寝つきが悪くて、朝の目覚めもスッキリしない。それでも1日は始まるのだ。
今日の侍女はヴァネッサさん。
支度はお任せで、薄紫のガウンドレスになった。胸下で切り替えてボタンと刺繍のデザインが豪華に彩る。髪型は前髪を上げ額を出しハーフアップに百合の花のバレッタで留めらていた。ネックレスは金鎖にドロップ型の青石でシンプルに、靴は白のストラップシューズ。
鏡を見る度お姫様な気分になる。寝不足も…少しは晴れた。
「本日は午前中に皇太子様が訪問なさいます。午後は淑女授業を予定しておりますわ。」
「いつもありがとう。暇な時間に魔術練習したいのだけれど、手伝ってもらえるかな?」
「喜んで。きっとできる様になりますわ!」
彼女から花のような微笑みで了承され、私の元気も満たされる。やっぱり、この世界でも普通に友達になりたいな。
「うん。頑張るね!」
♢ ♢ ♢
「いかがお過ごしかな?聖女殿。
昨日は建国の聖女殿の肖像画を見に行ったと聞いたよ。」
今日の皇太子はベストにコートにハーフパンツの三揃えが爽やかな青だ。金銀のモールで華やかで仕立ての良さがみてとれた。
いつ見ても所作も表情も常に微笑みの皇子様で居られるのは"凄い"と思う。
「はい。とても美しい方だったのですね。」
「そうだね。とても美しく賢い方だったと聞いているよ。妃としても聖女としても大層国民の支持の厚い方だったようだ。」
「凄いですねぇ。聖女様の記録は、私でも見ることができますか?」
「ふむ。そうだねぇ。陛下に許可を頂いておこう。今度一緒に書庫に行こうか。」
「よろしくお願いします。」
私の知りたい事がかいてあるといいなと思う。聖女様について、もっと詳しく知りたい。知らなければ何もできないもの。私に何ができるのか、私に何かなすべき事があるのか、無いのか…も。
「利用許可が出たら知らせるね。
魔術もマナーも頑張られていると報告を受けているよ。お身体を大事に、休憩はしっかりととって下さいね。
それに、護衛に侍女らも今のところ問題無さそうだね。」
「はい。先生方も皆様とても良くして頂いています。凄く助けられています。」
「そうか…それはよかった。お披露目までは大変かと思うけれど、どうか頑張って頂きたい。」
「はい。出来るだけがんばります。」
皇太子殿下は、優しい顔で満足そうに頷いていた。
ヴァネッサさんが紅茶を淹れて菓子をサーヴしてくれた。今日はレモングラスかな?爽やかなレモンの香りがしっかりたっている。プチパイが沢山並んでいて可愛い。黄、赤、紫、緑、橙と色とりどりなジャムが乗っていてどれから食べようか迷ってしまう。
まずは紫を食べる。想像通りのブルーベリーのようだ。とても甘酸っぱくて美味しい!思わず紅茶の手が進んだ。
「せっかくだから、魔術練習してみるのはどうだろう?まだ相性のいい相手は見つかっていないのだろう?私も協力しよう。」
「え?!いや、。良いのでしょうか?婚約者様がいらっしゃるのでは?!」
「気にしないくれ。彼女は了承済みだよ。
それに今度紹介しようと思っていたんだ。どうだろう?」
固辞するのも無礼になるのかな。
確かに早く魔力を感じられるようにはなりたいんだけど…「婚約者がいるのにベタベタするな!」とか言われない…よね?皇太子様が良いって言っているのだものね?
そう自分に言い訳しながら魔力の感知が早くできるようになる為に練習する事に決めた。
「では…お手伝いをお願いしても良いでしょうか?」
互いに近づき過ぎない距離で椅子に座り、手と手を合わせ魔力を送ろう…とやってみる。
相手が年頃の男性だと途轍もなく緊張するんだね。心臓をバクバクさせながら試してみるものの、魔力は感じていない…と思う。
やっぱりダメか。相性のいい人って本当に居るの?などと少し投げやりになる。いやまだ4人め…だし。
「どうだろう?何か分かる?」
「申し訳ありません。わからないみたいです。手伝って頂いたのにごめんなさい。」
「謝る必要なんてないのだよ。
聖女殿は気を使い過ぎのようだね。そういった配慮は目下の者がするものだ。貴女がしなくていいのだよ。」
そう言われても。癖のようなものだからすぐには変えられないし、私の立場が目上なのもなんだか身の置き場が無いというか何というか納得できない。
私、そんなに偉く無いでしょ?
私の表情を見つめながら皇太子は片眉を上げて怪訝そう?なお顔をした。そしてまるで諭すかのように私に述べ始めた。
「何とも負に落ちない表情だね。
それでも、この世界では聖女殿はそういう立場だと理解しておいた方が過ごしやすいと思うけれどね。」
「過ごしやすい…ですか?」
「そうだね。
そういうものと受け入れたほうが疲れ無い事ってあると思うのだよ。世の中にはね。無理に跳ね除けても、よく無い方に自分に返ってくるだけじゃ無いかな。」
「そういう考え方もあるんですね。」
「色んな考えかたがあるのだけれどね。
無理しないで下さいね。聖女殿。」
「はい。何だか相談に乗って頂いたみたいで、ありがとうございます。」
「ほら、また言っているよ。もっと軽くでいいと思うけれど。その内慣れるといいさ。」
「はい。」
何かある度に、ごめんなさいとありがとうが癖になっているのかも。
「うん。今日はこの位かな?焦らずこの世界に慣れてくれたらいいのだよ?」
焦っているのかな。
焦っているのかも。
未だ私の足場はグラついているから、安定しないから成果が欲しいのかも。人の信頼を求めているのかも。
本当に人の事よく見えているのだわ。これが人の上に立つ皇太子様であるって事なんだろうか。凄いなぁ…と、そうただただ感心する。
皇太子様は私の思考を読んだかのように、ゆっくりと紅茶を飲んでいた。
私の魔力練習をヴァネッサさんは一言も口にする事無く、見つめ続けるだけたった。
♢ ♢ ♢
お昼まで時間が空いたので、ヴァネッサさんとお話ししながら魔術練習をする事にした。数をこなしつつ、魔力の相性のいい人を早く見つけたい…。
「うーん。何も無いなぁ。」
「そうなのですか?どんな方なら相性がいいのでしょうね?」
「ねー。ヴァネッサさんは婚約者の方との相性はいいの?魔力は?。」
「相性…程々ではないかしら?言われてみれば魔力練習はした事ないですわ。」
「え?そうなの?もし試したらどんなだったか教えてね!。」
あら?恥ずかしいのかな?何だか耳が赤い?ヴァネッサさんは婚約者の事が好きなの?あらー、そうなんだ!
「あぅ。試したらお知らせ致しますわ。マサミ様はどんな方がお好きですの?。」
ヴァネッサさんは露骨に話題を変えてくる。それにしても、好み?好みかぁ。全くわからない。
「誠実なひと?顔にこだわりは無いかも。程々でいいかな。後はなんだろう。うーん。あっやっぱりちゃんと好きになってくれる人かな!。」
「好きに…恋愛をしたいという事なのですわね。マサミ様にとって、そんなに人を好きになるというのは大事な事なのです?」
「前の世界は、恋愛結婚が普通だったからね。どうしてもそこの意識からは…離れられない気がするんだ。」
納得できない結婚になぜか嫌悪感がある。これが思い込みなのか自分の素直な感情なのかもわからないんだけれど…。
「そうなのですね。世界の違いって…色んな意味で大きいのですわね。」
「私には…兄が居ますの。今日は帝城に来ていますの。会ってみませんか?もしよろしければ、ですけれど。」
彼女の兄に会う目的。合わせたい目的があるの?どうして突然に言い出したのだろう。彼女の水色の瞳からは真剣さが伝わってくる。冗談を言っている訳では無さそうだ。
「うーん。わかった。お兄様は何しにいらしてるの?。」
「今日は出仕ですわ。官吏ですの。」
「何を話せばいいかわからないんだけど…。」
「私も居ますから問題ありませんわ。マサミ様は普通通りにして下さいませ。」
「うーん。よくわからないけど、わかった。」
何らかの意図がありそうだけど、説明してもらえないらしい。終わったら教えてくれるだろうか?と考えはするものの、言わない理由があるのだろうと思い仕方なく諦めた。
そのまま練習が終わりになる。彼女の白く綺麗な手の平は夏なのに…とても冷たかった。
どうなること
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