この世界の結婚観
読みやすくなるよう頑張ります。
転載禁止です。
午後はゆっくりとしようと思っていたけれど…せっかくカリナさんが居るので魔法の練習に付き合ってもらおうとお願いしてみる。
共にゆったりとソファに座って手を合わせ魔力を流して貰うように頼んだ。マリアーナさんの時と同じようにお喋りしながら練習するのだ。
「聖女様はぁ全く魔力を感じ無いのですねー。本当に不思議ですぅ。魔力の無い世界があるんですねぇー。」
彼女の耳にも金色のカフスがキラリと光っていた。カリナさんにも婚約者がいるのね。
彼女の真っ白な肌と美しい金髪のなかで、小さな黒っぽい石が揺れてアクセントになっている。
「そうなの。全くわからなくて。
貴族の人は使えるのよね?羨ましいわ。」
「使えますけれどぉ聖女様とは比べものになりませんよぅ?特別な力をお持ちですしぃ」
「特別…かぁ。どんな力があるのかなぁ?凄く無くていいから使ってみたいよねぇ。」
「マサミ様もぉきっと使えますよぅ。どんな力をお望みですかぁ?
烏滸がましいですがぁ私だったら《治癒》の力が欲しいですねぇー。」
カリノさんは聖女に憧れているのかな?聖女の話になると目がキラキラしている気がしてそう思った。
あれ?でも、ドレスお菓子のときにもキラキラしていたかも…好きなものが沢山あるだけなのかもしれない気がしてきた。
「やっぱり《治癒》が1番聖女らしいのかなぁ?私は旅行するのが好きだから移動が早く出来るといいかなぁー。」
「移動…ですかぁ。マサミ様はぁそのような魔術をご存知なのですかぁ?」
彼女は不思議そうな顔をしている。どうやら移動に魔術を使うという考えが無いようだ。それはそうだよね…私も自力では思いつかない発想だもの。
私だって漫画やアニメのアイデアを流用しているだけで、その考えを最初に思いついた人はどれだけ凄い想像力の持ち主なのだろうか、と思うもの。どうも私は、頭が堅いのか新しい発想や物事に慣れないできない。それを何とかしようと、今は頑張っているけれど………。
「いいえ。知っている訳では無いの。
私の世界って魔法も魔術も無かったのよ。だけど魔法って言う概念はあったの。
使えないからこその想像であれやこれやの魔法が考えられてて、その空想の考えを知っているっていうだけなんだ。」
「魔術は無くてもぉ概念があるってぇ不思議ですねぇ。」
「本当にそうね。確かに。
何でそんな空想が生まれたのかなぁ…」
止めどなく続いた彼女とのたわいない語り合いは、思っていた以上に弾む会話になった。彼女はなかなか話題が豊富な話上手だわ。
「聖女様の魔術をお知りになりたいのでしたらぁ教会に行くのをお勧めしますぅ。
過去の聖女さまの記録もぉ残っていると言われていますぅ。」
「記録とか残されているものなのね。見せて貰えたりするかな?」
「聖女様でしたらぁいけそうですけどぉ。
本国には錫杖もございますしぃ」
「錫杖…そういえば錫杖って何?キラキラした杖を振るの?何に使うの?」
「錫杖はぁ神様から聖女様に与えられた聖女様にしか使え無い魔術具ですぅ。
朝お読みになった絵本にも書いてありましたけどぉお気づきになりませんでしたぁ?」
朝の絵本の絵を思いおこしてみると…確かに。神様が聖女に力を与える時に綺麗な細長い錫杖を渡していたような気がする。
「そう言えばそうだったかも。文章や文字で出てこないから気づかなかったよ。」
「またぁご説明あると思いますがぁ錫杖は聖教国にて聖女様に返還されるはずですぅ。
歴代の皆様にもそうされているらしいですぅ。実物なんて見た事が無いので肖像画で見ただけなんですけどねぇ。」
「肖像画なら見られるの?」
「廊下にぃこの国の建国時におられたぁ召喚されたぁ聖女様の肖像画がございますよぅ?
図書室に行く時にぃ通りましたよぅ?」
誰の肖像画か不思議だったけれど、あの絵の彼女が600年前の聖女なのか!しかも召喚聖女様!錫杖…持ってたかな?うーん。覚えていないや。意識して見ていなかったからかほとんど覚えていない。
「それは知らなかった!後で見に行ってもいい?」
「わかりましたぁ。ご一緒しますぅ。」
1時間ほどの練習が終わった。今日も私の力に進展は…無さそうだ。
休憩してお茶にする事となり、ヴァネッサさんがお茶と菓子を用意してくれる。
今日は花の香りのするブレンドティーのようだ。ふわっふわのシフォンケーキにたっぷりのホイップクリームをかけて頂く、贅沢なひとときだった。
紅茶はケーキがシンプルだからこその花の香りが活かされている。薔薇かな?ちょっと違うような…私じゃ、わかんないや。でも、幸せ。
ゆらゆらとカップを揺らして紅茶の香りを堪能して…水面に映る自分を見ていたら、先程考えていた事を思い出した。
「淑女講師のエストラーナ先生から聞いたのだけど、左耳のカフスは婚約中って事なんだね。知らなかったよ。
質問があるんだけど………やっぱり貴族って早く婚約するものなの?」
私の貴族知識は異世界転生の小説や漫画などの本か朧げな歴史からくる西洋貴族が中心だった。だからか、なんとなく貴族は早めに婚約して結婚して子孫を残すっていう固定観念があるみたい。
この世界はどうなんだろうと疑問に思ったので、カリノさんとお茶の準備に部屋に来ていたヴァネッサさんの2人に尋ねてみた。
「そうですわ。
私達貴族の子供は早めに婚約し、自身の立場を明確にしておきますの。貴族の義務は家を残し繁栄させる事ですもの。」
「そうですねぇ。ほとんどが10歳前後で婚約してますぅ。」
「早い婚約って一般的なんだね。
余計な事かもだけど、この世界の人は恋愛ってしないの?」
「平民なら半数以上はいるでしょうかぁ。貴族でもする人はいますよぅ。けれど子供ができてからぁ楽しむ人がほとんどですよぅ。
お家騒動にぃなってしまいますしぃ。」
「そうですわ。
けれど近年は無理やりな婚約をする事は少なくて、そういった外に恋人を作るといった話は以前と比べて少なくなりましたわね。」
「苦手な人と婚約しなくていいんなら良かった。そっかぁ。」
「派閥の兼ね合いや時世もありますもの。お家の都合で結婚出来ない場合も無くは無いですけれど、あまり聞いた事がありませんわ。」
「平民の方みたいにぃ恋愛結婚をする方も少ないですがいらっしゃいますよぅ。」
「恋愛結婚は一般的じゃ無いんだね。
何か本当に住む世界が違うって気がするよ。」
私にとって恋愛しない結婚なんて想像できなかった。友人と婚姻するなら"友達婚"になるのかな?あ。それなら結婚だけならできそう?
うーん。その時が来ないとわからないかも…黙考しながら2人を見て様子を窺う。
語る2人の顔はずっと穏やかで、今の結婚のあり方になんら不満は無さそうに見えた。それ程に私達は育った環境が違うのだとなんとなく思い知る。
「こればかりは生きてきた環境が異なりますから仕方ありませんわね。私達は国や家の為に生かされている共同体の一部ですもの。」
「え?!凄く、達観してるんだね。実は2人共、私よりずっと大人だったの?!」
「そんな事無いですよぅ。私はぁ17歳ですよぅ。ヴァネッサさんもぉ16歳でぇ私の1つ下ですからぁ後輩なのですぅ。」
「そうなのですわ。
私は去年学院を卒業したばかりで、侍女になって半年ですの。カリノさんは先輩ですが…私の方が爵位が高い事をお忘れでは?立場をお考え下さいな。」
ヴァネッサさんはカリノさんを睥睨し、冷たい空気を放つ。腕を組み、顎の下に人差し指を当て構えている姿は女王様の様な風格さえある。
「あ!学院とかもあるんだねぇ。貴族の考え方ってわからないなぁ。また色々教えてね。」
ヴァネッサさんがカリノさんを挑発し始めたので、私は焦って会話を無理やり中断して休憩を終えた。
不穏な空気は苦手なのよ。仲良くしようよ。ね?
口にする言葉には気をつけようと学んだ。
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