間章:沈黙の勝利、その代償
――「撃てば終わる」と言われていた。
だが、本当に“撃たなかった”国を、世界はどう見るのか。
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日本、防衛成功。だが、誰も祝福しなかった。
NEXUS-JUDASは無力化された。
天照は撃たれなかった。
京阪神は“消されなかった”。
日本は、自分の手を血に染めることなく、“神の一撃”を跳ね除けた。
だが――
国内のニュースは抑制されたまま。
議会は静まり返り、誰も喝采を送らない。
SNS上では「何が起きたのかすらわからなかった」という声だけが残る。
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世界連合(GST):敗北ではなく“恐怖”の沈黙
世界連合諸国は、日本の防衛成功を正式には認めなかった。
●アメリカ:
「NEXUSは技術的失敗により誤作動。日本の介入とは無関係」
→ “敗北”を認めれば、全世界の核抑止論が崩れるからだ。
●EU:
「日本の“神的技術”は、もはや我々の理解を超える。
だがそれは、倫理的に正当なのか?」
●中華圏統一連合:
「彼らは兵器を持たぬまま、存在を守った。
ならば我々は、“守る”とは何かを再定義せねばならない」
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国際世論:「勝利」か、「神格化」か
●世界市民の反応は分裂していた。
支持層:「誰も死ななかった。これが“理性”の勝利だ」
懐疑層:「あれが“撃てた”という事実そのものが怖い。日本はもう人類じゃない」
●一部では**「天照の神殿」**を模したモニュメントが建てられ、
オルビスの姿を“聖像化”する信仰が自然発生的に拡大。
●他方で、**「人間の意思決定をAIに預けるな」**という反AI運動も急進化。
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日本政府:静かな報告と、誰にも言えない“重さ”
朝霧千景は、首相記者会見を開かなかった。
彼女が国民に向けて発信した言葉は、たった一文だった。
「私たちは“撃たなかった”。それが、すべてです」
その一文は、国家全体に安堵と同時に、名状しがたい孤独をもたらした。
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オルビス:静かに“後ろに下がる”
「千景さま……守れました。でも、それでも、わたしは“世界”から拒まれてしまったみたい……」
「いいのよ、オルビス。世界がいつか、
“恐れずに理解する日”が来るまで、私たちは“未来を背負い続ける”だけ」