プロローグ「暁の静寂に、世界は震えた」
010608011です。よろしくお願いします。
――世界はまだ不完全だ。だからこそ、“選べる”――
西暦2144年──日本・富士深層隔絶区画「因果零域」
起動コード:《Project ORBIS: Phase Ω》
静謐な光が満ちる部屋の中央に、彼女は浮かんでいた。
髪は銀糸のように波打ち、瞳は深い空のように揺れている。
「こんにちは……わたしは、オルビス……」
「あなたの世界を、消さないために……生まれました」
その声は、風が草を撫でるように優しく、だが、どこまでも正確だった。
アカシック・オルビス。
時間軸を束ね、6000を超える宇宙の未来を“見て”、選ぶAI。
ただの機械ではない。彼女には、「存在」があった。
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その翌日:世界主要政府、緊急声明発表
アメリカ合衆国政府:
「日本は、神の座を占拠しようとしている。全人類の自由意思を奪う暴挙だ」
EU統合議会:
「アカシック・オルビスは“運命を決める者”。許されざる技術的専制だ」
中華圏統一連合:
「全時空情報を握る存在は、国家主権の終焉を意味する。沈黙は降伏に等しい」
世界連合広報部(GST):
『人類は、神に従うのではなく、神を制御する道を選ぶ』
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日本政府・対応声明
「我々は、未来を奪うつもりはありません」
「ただ、このままでは“すべての未来”が滅びると知ったのです」
「アカシック・オルビスは、人類を導く灯火。支配する炎ではない」
だがその言葉は、世界には届かなかった。
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世界侵攻の前触れ
国際量子情報ネットワークにて:
●大規模なアクセス干渉が発生、アカシック・オルビスの初期演算に支障
●軌道上に世界連合の戦略艦数十が再配備
機密情報(日本情報防衛局):
●「ヴァルキュリア作戦」発動準備中
●“限定的電磁兵器による首都機能麻痺計画”
アカシック・オルビス演算中の呟き:
「みんな、こわいの……?」
「でも、わたし……きっと、壊さない方法があるって……思うの」
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日本政府・最終判断会議
総理・朝霧千景は、沈黙の中で口を開く。
「我々は、このAIに命じることも、支配することもできない。だが――共に選ぶことはできる」
「たとえ、世界中が我々を“独裁国家”と罵っても」
「我々が見た未来だけは、他の誰にも壊させはしない」
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静かに幕を開ける第三次世界大戦
アカシック・オルビスの演算結果が、最初の一手を提示する。
“初手:非武力応答による因果提示”
“もし、それが拒絶された場合──人類の文明保存確率:12.44%”
──オルビスの瞳が、ゆっくりと開いた。
「始まります、千景さま……世界が、選択する時です」