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13話・悪役令嬢グレース

 グレース様は私たちのクラスを仕切る女帝のような存在。カレイラ侯爵家の末娘で、親兄弟から甘やかされて育ったからか我が儘で高慢な振る舞いが目立つ御方です。私たちは彼女から下に見られ、常日頃から非常に歯がゆい思いをしておりました。


『リオン様もお気の毒よねぇ。侯爵家のお生まれですのに、よりにもよって伯爵家ごときに婿入りだなんて! ああ、お可哀想!』


 ネレイデット侯爵家嫡男アルド様と婚約しているグレース様は、事あるごとに私だけでなくヴィルジーネ伯爵家まで馬鹿にしてきました。実際我が家は弱小貴族。高位貴族に睨まれたらひとたまりもありません。家を守るため、何を言われてもニコニコ笑って受け流すしかないのです。


 将来アルド様とグレース様、リオン様と私が結婚したら、彼女とは親戚となります。親戚ともなれば、生涯縁が切れないということ。顔を合わせるたびに蔑まれるなんて耐えられません。これも私がリオン様と婚約を解消したいと思った理由のひとつです。


 ところが、アルド様は出奔してしまわれました。この場合グレース様の立場はどうなるのでしょう。婚約者が行方不明では結婚できませんものね。


「グレース様はアルド様の行方を血眼になって探しているそうよ。何としても連れ戻すって意気込んでるみたい」

「それで、カレイラ侯爵家が騎士団に探索を要請したらしいんだけど、依頼を断られちゃったんですって」


 二人が色々と教えてくれるので、監禁中だというのに情報が得られて助かります。


 貴族に限らず、国民が危害を加えられたり営利目的で誘拐された場合には自警団や騎士団が迅速に対応してくださいます。


 しかし、今回はアルド様が自らの意思で家を出ているのです。内容までは公表されておりませんが、私室に書き置きが残されていたので事件性は無いと判断されたようです。となると、アルド様の捜索はネレイデット侯爵家やカレイラ侯爵家が私兵を出して行うほかありません。


 二人は顔を見合わせて肩をすくめ、悪戯っぽい笑みを浮かべております。いつも私たちを馬鹿にしてくるグレース様が大慌てでアルド様を探しているのです。心の片隅で『ざまあみろ』と思うくらい大目に見ていただきたいですわ。


「フラウ、休学して良かったかも。顔を合わせたらきっと八つ当たりされてたんじゃないかな」


 アリエラは眉尻を下げ、苦笑いしています。テーブルの上に置かれた両手でカップを弄っており、落ち着きがありません。


「今日も心配して声かけたクラスメイトに噛みつきそうな勢いで悪態ついてたもん。顔見せたら何を言われるやら」


 コニスはニヤリと口の端を上げて笑っております。私をあまり脅さないでほしいわ。


「フラウも一応ネレイデット侯爵家の関係者だもの。グレース様以外からも何かと探りを入れられそう」

「そーそー。休学して正解だと思う」

「そうね。私もあまり騒がれたくないし」


 少なくとも、アルド様の件が落ち着くまでは貴族学院に行かないほうが良いのかもしれません。


「私も休学したーい!」

「わたしも。フラウがいないと寂しいもの」

「いいわね、いっそ三人でここにいましょうか」

「「それはヤダ」」

「どーしてですの!!」


 いつもと同じ掛け合いをして、声を上げて笑い、楽しい時間を過ごしました。監禁中にも関わらず友人を迎えることを許してくださったことに関しては、リオン様に感謝しなくては。


「そういえば、今日の件を伝えに来たリオン様の従者さんからひとつ頼まれていたのよね」


 思い出したかのように、コニスがポンと手を打ちました。頼まれごととは何かしら。


「フラウがネレイデット侯爵家の別邸にいることは誰にも言うなって」

「わたしも口止めされたわ」

「行き帰りに尾行されてないか気をつけろ、とか注意されたんだけど」

「なんだったのかしらね、あれは」


 次の休みにまた来ると約束してから、二人は帰っていきました。新たに得た情報もありますが、そのぶん謎も増えてしまいました。


 どうやらリオン様は私が別邸にいることを秘密にしたいようです。監禁の事実が(おおやけ)になることを恐れているのでしょうか。アルド様に引き続き、リオン様まで醜聞(スキャンダル)で騒がれてしまいますものね。


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