幕間 エリック
エリック・ライモンドはライモンド男爵家の次男として生まれた。
既に兄が跡継ぎとして両親の期待を一身に受けていてエリックは放置状態で過ごし寂しい幼少時代だったがそんな彼の生きる糧になったのが錬金術だった。
『錬金術師の才あり』とある占い師に言われ独自に錬金術の勉強をした。
その結果、国家資格である錬金術師の資格を得た。
その試験会場で出会ったのがミラーゼだった。
勿論、公爵令嬢であり王太子の婚約者であミラーゼは貴族社会では有名だったのでまさかこんな所で会うとは思っていなかった。
しかしミラーゼは気さくな性格ですぐに打ち解けた。
更にミラーゼの家庭事情を知ると自分と重ね意気投合した。
結果、身分関係無く親しくなり貴族学院では密かに錬金術サークルを作り学院生活を楽しんでいた。
その学院生活も終わり兄のサポートをしながら錬金術師として活動していく、筈だった。
しかし、卒業パーティーで起きた婚約破棄騒動の余波がエリックの身に起きた。
当時、エリックの兄は城の文官として働いていたのだがミラーゼの妹の魅了にかかってしまったのだ。
魅了魔法は解くのが難しく思考にも影響も出ていて跡継ぎとしては不適切と国が判断、療養施設に強制的に入れられる事になった。
そして跡継ぎはエリックとなったのだが溺愛していた長男が跡継ぎで無くなった事に両親は意気消沈となり部屋から出てこなくなってしまった。
エリックはそんな両親の代わりに領主代行として忙しい日々を送ることになってしまった。
「ただいま」
「おかえりなさいませ坊ちゃま」
ミラーゼの家から帰ってきたエリックを執事が出迎えてくれた。
「ポーションの専売契約を取ってきた、これで少しは我が家も潤うだろう」
「流石は坊ちゃま、まさか追放されたミラーゼ嬢が近くに住んでいたとは思いませんでしたな」
「そこら辺は王太子には感謝だな、それで公爵家に対しての裁判はどうなってる?」
「被害は他家にも及んでいますからな、こちらの請求を飲むしかございませんでしょう」
実は同じく魅了の被害を被った貴族達でミラーゼの実家である公爵家を訴え損害賠償を請求しているのだ。
勿論、公爵家も魅了の被害を受けたのだが娘を管理しなかった責任がある。
結果として公爵家は潰れる可能性があるのだがそれは自己責任としか言いようがない。