訪問者がやって来た
暗殺未遂から数日後、今日も今日とてバージョン作りに励んでいると玄関を叩く音が聞こえた。
「はい、どちら様ですか?て、エリックじゃない」
「ミラーゼ久しぶり、元気そうでなによりだ」
彼は錬金術師仲間のエリック、貴族学園の同級生で密かに錬金術サークルを作っていた同士だ。
「これ、この間送ってくれたポーションの鑑定結果だ、事務員に頼まれた」
そう言って封筒を渡してくれた。
「ありがとうね、良かったら中にどうぞ」
心許せる友達の訪問に嬉しくなり私はエリックを家の中に入れた。
「もしかしてポーション作ってた? 邪魔だったか?」
「いいえ、ちょうど一息入れようと思っていたから」
私はエリックに紅茶を出した。
「あんまり落ち込んでないみたいだな、安心したよ」
「えぇ、面倒な事から解放されたから充実した日々を送っているわ」
「だろうな、婚約破棄言い渡された時、笑いを我慢しているのが見え見えだったぞ」
「あら、抑えてなかった? 表情は変えない様にしていたんだけど?」
「わかるやつにはわかるよ」
そう言って笑うエリック、彼は男爵家の次男坊で家を支える為に錬金術師になった。
タメ口なのは私から言い出した事、錬金術師協会で偶々出会って意気投合して学園内でも密かにサークルを作り腕を磨き上げた仲だ。
「お家の方はどう?」
「それが大変だったんだよ……」
「え? 何かあったの?」
「婚約破棄騒動の余波が家にも拡がったんだよ、お前の妹のハーレムに家の兄貴も入っていたみたいで……」
「え〜……」
そういえば将来有望な令息に声をかけてる、て聞いた事があるような……。
「検査をしたら魅了にかかっていた事が発覚してね、両親は国に報告して兄貴は身柄が更迭されて療養施設行きだよ」
「それは大変な事に……、あれ?じゃあ妹が魅了持ちだという事がわかったの?」
「あぁ、そうみたいだよ。 まだ表沙汰にはなってないけどこれから大変な事になりそうだ」
王妃様が動いたんだろうな、という事はすぐにわかった。
エリックの耳にも届いている、という事はもう処分は確定しているのかもしれない。