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3 信頼

おお、更新がちょっと遅くなってしまいました。汗汗

朝、8時ごろを目指していたのに…。

3 信頼


 翌日、フェムジットに向かおうと準備していた魔術師団の元に、文官が報告書を持ってやってきた。


「師団長殿、こちらを。」


 受け取ってすぐに中身を確認すると、思った通りアレックスが見つけた岩は、サファイアの原石であることが認められていた。国王は、あの施設を正式な国の施設とし、『メゾン・デゼンファン』と名付け、サファイアの収益の一部をこの施設の運営費に充てると記した。


「これで、彼らの生活も安定したものになると思われます。」

「ああ、そうだな。陛下がそう思し召しなら、ありがたい。」


 週末になり、魔術師団に混じって、サイト―とリディアーヌがフェムジットを訪れると、メゾン・デゼンファンはにわかに明るくなった。


「これなぁに? 緑色だけど、野菜じゃないの?」

「わぁ、甘くてちょっと苦くて、でもおいしいね。」

「お姉さんは聖女様? 小さい子が風邪をひいてるの。治せる?」


 食堂に集められた子供たちは、初めて出会う聖女様に大はしゃぎだ。めったに口にすることがなかった甘いお菓子に舌鼓を打って、小さな怪我などもすっかり良くなり、どの子も笑顔を見せていた。

 サイト―は、持って来ていた将棋盤を棚の隅に置くと、傍に居た子供にこっそり声を掛けた。


「これは、ショウギというゲームで使う道具なんだ。これから俺かリディが来たときに遊び方を教えるから、楽しみにな。」

「うん!おじちゃん、また来てくれる?」

「お、おじ…、あ~そうだな。時間を見つけてまたお菓子を持ってくるよ。」

「やったー!」


 声を掛けられた子供は、サイト―の手を取って飛び跳ねた。その手の小ささに、サイト―は胸を締め付けられた。こんな小さな子供が、親を亡くして子供たちだけで暮らしていたのかと。


「ゴホン。お前たちに一つ報告があるんだ。」


 ガブリエルが声を掛けると、子どもたちは一斉に手を止めてガブリエルに注目する。


「先日、アレックスが見つけて来た岩が「宝物」だと分かった。国王陛下がそれを認めてくださったんだ。これは、みんなの宝物として、ここに置いておくようにとのお達しだ。」

「わぁ、すごいなぁ!」

「アレックス、やったね!」


 子どもたちは口々に歓声を上げた。そんな中、アレックスだけは、驚いたように目を見開いて固まっている。


「団長さん、ありがとう。俺、…ホントは大人に取られてしまうかもしれないって、思ってた。だって、今までもきれいな服を着た大人は、みんなズルして大事なものを横取りしてきたんだもん。だけど、ここに住まわせてもらって、ご飯も食べさせてもらって、…、だから、団長さんたちなら、取られてもかまわないって思ってたんだ。それなのに…うっ、ううっ、団長さん、ごめんなさい。ちゃんと返してくれて、ありがとう。」


 ガブリエルは、思わずアレックスの頭をわしゃわしゃと撫でまわした。


「世の中にはいろんな大人がいるからな。だけど、私たちは、お前たちの味方だ。安心してくれ。陛下はこの施設をメゾン・デゼンファンと名付けられた。お前たちに、このままここの作業を続けてほしいとのことだ。お給金も出してもらえるぞ。それに、お金の計算と文字の読み書きも覚えてもらう。」

「ぼ、僕にもできるようになる?」

「大丈夫だ。出来るようになるまで教えるさ。」

「団長さんが先生になるの?」

「いや、もっと教えるのが上手な人に来てもらう予定だ。」


 ガブリエルは、心当たりを想像してにんまりと微笑んだ。



 フェムジットの施設に教育係が入って、一か月が過ぎた。荒野だった場所は畑や果樹園に整備され、子どもたちの仕事も農作業と勉強、そして、瓦礫として積み上げた場所から貴石や宝石を見つけ出す作業へと変わっていった。

 文字を覚えたり、数の勉強をすることは、子どもたちの知的探求心をくすぐり、みんな嬉々として学んでいる。そうすることで、力仕事ばかりにならず、生活のバランスも取れて行った。


「ジゼル先生!今日の分、全部できたよ!」

「あら、早かったですわね。見せてください。…、はい、全部正解です。よくがんばりましたね。」

「わぁ、すごいねぇ。アレックス、僕にも教えて。」

「そうね。分からないところは、分かった人に教えてもらうのもいい事です。みんなで協力してね。」


 子どもたちの様子を見まわして、ジゼルは満足そうに微笑んだ。すると、アレックスが部屋の隅に置いてあった四角い箱を取り出して、ジゼルの前に置いてニカッと笑う。


「先生、これ知ってる?サイト―おじさんが持って来てくれたんだ。今度教えてくれるって。」

「あら、将棋盤じゃない!ふふ、サイト―様らしいわね。じゃあ、やり方を教えてあげるわ。、午後の授業は将棋について学びましょう。」


 午後になると、ワガシを携えたリディアーヌがやってきた。


「みなさん、ワガシを持ってきましたよ。手を洗って、順番に健康観察をしますから、終わった人から召し上がれ。」

「やったー!」

「ねえ、聖女様。サイト―おじちゃんは来ないの?」

「ごめんなさいね。シュウジ様はお仕事が忙しいのよ。だけど、皆のためにワガシはちゃんと準備してくださったわ。」


 笑顔で対応するリディアーヌだが、子どもたちの視線は鋭い。


「聖女様、なんだか寂しそう。サイト―おじちゃんがもっと一緒にいられたらいいのにねぇ。」

「まぁ。ありがとう。でも皆さんがいてくれるから、平気よ。」


 確かにそう。一緒に住んでいるはずなのに、早朝からお仕事なさっていて、ご一緒できるのは夕食だけ。それも、くたくたのシュウジ様をお引止めできなくて、早々にベッドに向かわれるのを見送るばかり。フェムジットの魔獣が出なくなった今では、聖女が必要なのかどうかも分からなくなっているわ。


まだまだ序盤ですが、よろしければ、評価、ブックマークをよろしくお願いします。

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