21 歳の離れた姉弟
いよいよラスト2話です。
21 歳の離れた姉弟
ジョルジュの乗った馬車が、コロージオの検問所を通過した。馬車を降りると、ジョルジュはすぐに今までとは違う扱いに気が付いた。どこに行ってもエルヴィシウスの王子として丁重にもてなされていたとは思っていたが、ここコロージオの従者たちは、みな笑顔で迎えてくれたのだ。
「ジョルジュ殿下、ようこそお越しくださいました。こちらのお部屋でおくつろぎください。」
部屋に通されると、侍女たちがさっと頭を下げる。しかし、その表情が明るく、歓迎されていることが直に伝わってくるようだった。
「ブリュノ、これは俺の勝手な印象なんだが、俺はルーアでもエルヴィシウスでもこんな風に暖かな歓迎を受けた覚えがない。みな恐れるようなピリッとした雰囲気だったと思うのだが。」
「殿下、それはグレース王妃のお人柄ではないでしょうか?」
侍女が紅茶を運んできた。
「失礼いたします。こちらはコロージオ名産の紅茶でございます。お供にこちらのショコラをどうぞ。」
「これもコロージオで採れたものか?」
「はい、さようでございます。」
紅茶にそっと口をつけると、豊かな香りに思わず目を見張った。南北に長い国土を有するコロージオの中でも、標高の高い山で栽培されている茶葉だという。一方、ショコラの原料は南にも領土があるコロージオならではの物だった。ひとかけを口に入れると、想像していた以上の味と香りに驚きを隠せないでいた。
「な、なんだこれは?俺が今まで食べていたショコラとは全く別物だ!」
「ふふ、気に入ったようね。ジョルジュ、元気にしていた?」
振り向くと、グレースが戸口に立って笑っていた。
「あ、姉上! 」
ジョルジュはすぐさま席を立ち、グレースの前まで進み出ると、静かに頭を下げた。
「おr、いや。僕の愚かな行動のしりぬぐいを、今までずっとしていてくださったと聞いた。本当に申し訳ない。」
「まぁ、お父様たちのおっしゃっていたことは、本当だったのですね。ごめんなさいね。この目で確かめるまでは、どうしても信じられなくて。」
ぽかんとするジョルジュに、グレースはふふっと笑いながらソファを勧めた。
「ルーアの王女から、いろいろ教えてもらっていたから、気が気じゃなかったわ。だけど、留学してすぐからあんな態度ではなかったでしょう? もともとは素直で優しい子だったもの。」
歳の離れた姉は、大切な弟の変貌ぶりの陰になにかカラクリがあるのではと気を揉んでいたという。
「それで、わざわざここに来たという事は、何かお願い事があるのでしょう?」
「ああ、迷惑をかけたルーアにもう一度出向いて、ちゃんと謝罪をしたいと思っている。そこで、姉上に力を貸してもらえないだろうかと。」
姉に懇願する姿は、帰国時のジョルジュとは別人の様だった。
「そうね。ルーアの国王陛下にお目に掛かるところまでは手伝ってあげられるけれど、あなたは今までの行いについて、どんな風にお詫びするつもりなの?」
「そ、それは。誠心誠意頭を下げるつもりだ。」
「それだけ? あなたはもう少し自分の国の事を勉強しないといけないんじゃないかしら。例えば、コロージオは南北に広い国土だから、なだらかな北の斜面では良質な茶葉が取れるし、南ではカカオが収穫できるの。さっきのショコラ、素晴らしいでしょ?そういう物を献上できたらいいのだけど。」
「姉上なら何が良いと思う?」
グレースは呆れた様に諭した。
「貴方が思う特産品でなければ、意味がないのではないかしら?」
「あ…。」
ジョルジュは胸ポケットにある小さな箱を思い出した。確かに鉱脈があることは、帰国中に習っていたが、ここまで良質の宝石があったとは、知らなかった。
「これは、どうだろう?」
ジョルジュは、小さな箱をそっと差し出した。グレースがその箱を開けると、目を見張った。
「あなた、これをどこで手に入れたの?」
「これは、フェムジットで畑仕事をしているとき、転がっていたのを見つけたんだ。父上がきれいに整えて、僕の働きの報酬だと言って、渡してくれたんだ。」
箱の中では小さいながら深い青の石が輝きを放っている。どう見ても最高級の宝石だ。フェムジットにあるメゾン・デゼンファンのことはすでに知らされていた。
~ジョルジュが畑仕事をするとは…~
グレースは、微笑ましい気持ちでちらっと弟を伺って問う。
「これをルーアに献上するの?」
「そうだ。これなら、自分が働いた報酬としてもらった物だから、堂々と渡せると思うんだ。」
グレースは大きく頷いてほほ笑んだ。
「分かりました。では、早急にルーアの王女に連絡を取ります。一緒にルーアに向いましょう。」
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次が最終話です。




