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17 答え合わせ

17 答え合わせ


「ブリュノ、メゾン・デゼンファンの住所は分かるか?」

「ええ、把握しております。お手紙でもお出しになるのですか?」

「うん、ルーアに到着したら、向こうの絵葉書で手紙を書こうと思うんだ。」


 馬車の窓から外を眺めるそのサファイアの瞳は、景色の向こうの友達に思いを馳せていた。


 王宮を出発して4日目、やっと国境の検問所に辿り着いた一行は、門番に声を掛けた。


「エルヴィシウス王国のジョルジュ王子が、留学先の貴国に入国する。」

「えっ…ジョルジュ王子ですか? あの、申し訳ございませんが、ルーアには入国許可が出ていません。大変心苦しいのですが、お引き取りください。」

「ちょっと待ったー!おいおい!誰に物を言ってるんだ! こちらの方は、次期エルヴィシウス王国の国王になる方だぞ!」


 突然割って入ったのは、どこかで馬を調達してきたエリクだった。


「おまえ、もしかして新人か? 他国の王子に門前払いなんかして、問題にならないとでも思ってるのか?」

「ええっ!」

 

 門番が戸惑っていると、ブリュノが慌てて止めた。


「すまない。こいつは部外者なのに勝手についてきているだけなんだ。とりあえず、何かの行き違いがあったのかもしれないな。失礼する。 殿下、一旦王宮に戻りましょう。」


 ブリュノはすぐさま御者に指示を出して、馬車の向きを変えさせた。エリクはまだ不満そうだったが、ブリュノに捕まってそのまま馬車に乗せられた。


「エリク、そろそろ本当のことを話してもらおうか。殿下や一緒に同行した…君、名前は?」

「ルフェーヴェル子爵が娘、コレットと申します。」


 長い道中の世話のためにと、同じ馬車に乗せられていた侍女のコレットは、以前、ブリュノに胃薬を勧めた人物だった。


「うむ、コレットも証人としてこの話し合いに参加してもらおう。一緒にいた人々の前で、お前の心当たりを話してもらおうか。」

「え?何の話ですか?」


 うそぶくエリクにブリュノの目は冷たかった。


「言い方を変えよう。ルーアから出禁を食らうほどの悪行を、本当にやっていたのは誰だと聞いているんだ。」


 途端にエリクの目が泳ぎ出した。


「ブリュノ、エリクはよくやってくれていたぞ。言い寄ってくる貴族令嬢や、それに反対する貴族たちに対応していたのは、こいつなんだ。」

「殿下、あなたほどのお立場で、影が付いていないとでもお思いですか?」


 ぴしゃりと言い放ったブリュノの言葉に一番驚いていたのはエリクだった。


「か、影?」

「ああ、王位継承権1位の殿下をお前だけに守らせるわけがないだろう。」

「いや、だって。護衛はついていたじゃないですか?聞いてないよ。」

「お前が知る必要のない事だからな。そういう事だから、ここで答え合わせをしようと思ってな。」


 エリクはみるみる顔色が悪くなり、うつむいて自分の腕をさすっていた。


「まずは、先ほど殿下がおっしゃっていた貴族令嬢のことだが、あれはどうやって集めたんだ?」

「…ルーアの貴族にも派閥があって、その駆け引きを使ったんだ。ジョルジュ殿下はお妃探しに来ているんだと噂を流して、他の派閥に出し抜かれる前に王子に会わせてあげるって…。」


 震える声でぼそぼそ呟く内容に、ジョルジュの眉がピクリと動いた。


「おい、俺はお妃探しなんかしていないぞ。」

「いや、だって。殿下はお年頃だから、ご令嬢に囲まれるときっと喜ばれるからって。」


 ジョルジュに睨みつけられて、亀の様に頭を引っ込めるエリクだった。


「では、殿下が市井に下っておられた時、無銭飲食をしていたのは、どういういきさつだ?」

「え、先輩どうしてそれを?」

「いや待て!ルーアの国王陛下から、留学期間中はすべて国費で賄うから、市井をじっくり見て回って、売られているモノも自由に使っていいと言われたのではなかったのか?王宮に請求するようにと、俺はずっとそうやって…」

「う、うわぁ、ごめんなさい。ごめんなさい。後でこっそり支払う予定だったんです。だけど、殿下の浪費がひどかったから、賄いきれなくて…。」

「うっ、悪かったな。確かにあの頃の俺は、めちゃくちゃだった。人も物も湯水のように使い捨てていた。」


 真摯な言葉を漏らす王子に、エリクは戸惑った。しかし、ブリュノは黙っていない。


「それはおかしいですね。殿下は市井で城でも買ったのですか?エルヴィシウスの国費から出ていた滞在費は、そんなものではないはずです。」

「だって、俺にはあんな大金管理できないから、先輩に相談して、手伝ってもらうことにしたんです。」


 その時、ブリュノの目が光った。


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