15 猟銃
昨日、一昨日は、大変失礼いたしました。
どうか、懲りずに読んでくださいね。
15 猟銃
そんなある日、ガブリエルが、片付けられた瓦礫の最終チェックにやってきた。子どもたちにすっかりなじんだジョルジュは、女子たちの色めき立つのに驚いた。気づくとマリーもいつもより嬉しそうだ。ジョルジュは思わずガブリエルを警戒する。
「なんだよ、あいつ。女子にちやほやされやがって!」
「ジョルジュ、気にしなくていいよ。いつもの事だから。」
「お前は平気なのか?マリーにあんな顔されて。」
アレックスはちらっとマリーの様子を見て、ふぅっと息を吐くと、気を取り直してジョルジュに向き直った。
「平気だよ。だって、好きと憧れは違うからね。俺も団長さんのことは尊敬してる。俺たちの事を見捨てず、ずっとサポートしてくれているんだ。それに、イケメンだし、大人だからさ。女子が憧れても仕方ないよ。悔しくないと言えばうそになるけど、自分も人の役に立つ人間になって、彼女に認めてもらえるようになりたいんだ。」
「そ、そうなのか。」
はっきりとした答えに、ジョルジュはそう返すだけで、それ以上何も言わなかった。アレックスのマリーへの気持ちを聞いて、あれほどリディアーヌにこだわっていた自分は、いったいどんな気持ちだったのだろうと思い返していたのだ。
「おーい、畑仕事の手が空いた奴、少し手伝ってくれないか?ここの小石を片付けてしまいたいんだ。」
ジョルジュがガブリエルの声に答えると、フランシスもついてきた。
「ねえ、ジョルジュ知ってる?この向こうにおいしい木の実が成ってるんだ。後で一緒に採りに
行こうよ。」
「ああ、後でな。」
ガブリエルの元に駆けていくフランシスを追いながら歩いていると、足元に青く光るものが見え、そっと手に取ってみた。サファイアの原石だ。ジョルジュはガブリエルに声を掛けようと急いで向かっていった。すると、ズドンっと辺りに響くような大きな音がして、目の前のフランシスが弾き飛ばされた。
「フランシス!!」
ジョルジュはとっさに原石をポケットに入れ、フランシスに駆け寄った。その幼い腕が、あらぬ方向をむき、おびただしい血が流れ出ていた。
「大変だ!誰か!誰か来てくれ!!」
ジョルジュはすぐさま魔法鳥で聖女に応援を依頼した。そして、ありったけの声で助けを呼んだ。
「大丈夫か!何があった?」
「フランシスが、誰かに撃たれた。あれは猟銃の音だ!」
「分かった。私はフランシスを連れて、聖女の家まで転移する。ジョルジュ、お前はすぐに施設に戻れ。そして、みんなに建物から出ないように言うんだ!気をつけろよ!」
「分かった!」
本来なら、この状況で目の前の王子を置いて、子どもの命を優先するなど、考えられないことだった。しかし、それが今のジョルジュには小気味良かった。自分は信頼されている。そう思うと、力が湧いてくるように思えたのだ。
施設に戻って今あったことを説明すると、突然マリーが泣き崩れた。
「う、ウソ。フランシスは大丈夫なの?お願い、私も連れて行って!」
「マリー、落ち着くんだ。ガブリエルさんなら、きっと助けてくれる。聖女様が付いているんだ。」
取り乱すマリーをアレックスが抱きとめる。
「まだ状況は良く分からないけど、あの音は猟銃だと思うんだ。この辺りの猟は許可されていないはずなのに。」
ジョルジュの言葉に、子どもたちの顔色がさっと蒼くなった。彼らが孤児になった原因は、見知らぬ貴族からの襲撃だ。
「まさか…。」
マリーはハッとしたように顔をあげ、問いかけるようにアレックスを見た。そして、アレックスもまた、それにこたえるように頷いた。
「なにか、心当たりがあるのか?」
ジョルジュの問いかけに、きゅっと唇を引き締めて顔をあげると、今まで見せたことがないような凛とした表情で王子の前に出た。
「ジョルジュ殿下に申し上げます。私は、プランタード元男爵が娘、マリアンヌです。父は、王妃様への健康被害をもたらす農産物を献上したとして、ミストラル子爵に糾弾され、爵位を奪われました。我が領の農産物は、私たちも口にしていましたが、問題もなく、どうしてそのようなことが起こってしまったのか原因が分かりませんでした。しかし、元々穏やかな性格の父には、誰かに陥れられたなどという考えはなく、釈然としないまま領地を追いやられました。しかし、私には分かっていたのです。悪い噂の絶えないミストラル子爵の長男セルジュ様からの求婚をお断りしたことへの嫌がらせです。ご丁寧に、ご本人からそのように言われました。
パーヴェヴィラが襲われた時も、セルジュ様はいらっしゃいました。王弟バイヤール公爵様が味方だから、誰にも文句を言わせないなどと豪語して…。その時、剣だけでなく猟銃が使われたのです。」
「マリアンヌ・プランタード男爵令嬢。よくぞ教えてくれた。フランシスが無事に戻ってきた暁には、陛下にそのことを訴えよう!」
周りの子どもたちは、みな静かに体を寄せ合っていた。。アレックスだけが、そっと膝をつき、首を垂れていた。
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