11 王子の訴え
11 王子の訴え
翌朝、ジョルジュが国内情勢についての講義を受けることになったというので、その隙にブリュノはサイト―家を訪ねた。
「ブリュノ殿、何かあったのか?」
「突然の訪問依頼をお受けくださって、ありがとうございます。」
不思議そうな顔の二人に、ブリュノは深々と頭を下げた。
「まずは入ってくれ。今日、王子様は来ないのか?」
「ええ、陛下からのお言いつけで、国内情勢について講義を受けられています。その、殿下は今のこの国の状態をほとんどご存知ないものでして。」
申し訳なさで小さくなるこの側近を、二人が攻めることはできなかった。
「君も大変だな。王子は体がすっかり大人らしくなっているから、違和感が激しいが、中身はまだまだ子供だ。」
「あの、もしかして、ブリュノ様がいらしたのは、子どもたちの宝物が無くなったことと関係があるのでしょうか?違っていたらごめんなさい。昨日、殿下をお見送りした後に、子どもたちの間でちょっとした小競り合いがあって、怪我をした子がいたんです。」
ブリュノはハッとした。昨日見たリディアーヌは、そのケンカの後のけが人の治癒の帰りだったのだろう。聖女と言えども、人間関係が壊れてしまっては治すこともできないのだろう。
「もし、そちらの手に子供たちの宝物があるのであれば、返してやってはもらえないだろうか。」
真摯なサイト―の態度に、ブリュノは腹を括った。持ってきたカバンから、取り出したそれは、間違いなく、子どもたちの宝物だった。
「困ります!旦那様はただいま来客中なのです!」
「邪魔だ、どけ!」
玄関でもめる声がする。サイト―が出ようとすると、逆にドアがバンっとあけられてジョルジュがやってきた。
「おい、サイト―!お前にちょっと聞きたいことが…!ブリュノ!どうしてお前がここにいる?これは!」
王子が見たのは、サイトーの手に渡った例の小岩だ。
「お、お前もグルだったのか!?どうりで、俺のやりたいことを全否定してくると思った。おい、サイト―!その岩は証拠物件だ!返せ!」
「悪いがこれは子供たちのものです。陛下から直接許可を頂いているのです。」
「そんな子供だましのウソが通じると思っているのか!」
ジョルジュは興奮してサイト―の胸倉をつかんだ。ブリュノは王子を諫めようと声を掛けるがジョルジュに聞く気はない。リディアーヌはとうとう見かねて二人を引きはがした。
「もういい加減にしてください! そこまでおっしゃるなら、陛下の前で話し合いましょう!ラザール、王宮の文官様に連絡してちょうだい。」
そうして、国王の許可が出ると、彼らは国王の執務室にやってきた。どういう訳か、エリクも呼ばれて居心地悪そうに同席した。
「随分急な会合だな。この時間、ジョルジュは講義を受けているはずだが、どういうことかな。」
落ち着いた国王の声に、王子の肩がピクリと動いた。
「まあよい。では、ジョルジュの訴えを聞こうか。国王たる私の指示に従わずに動いたのだ。よほどのことがあったのであろう?」
国王は薙いだ目で王子を見つめていた。怯みかけたジョルジュは、気を取り直して顔をあげた。
「以前お話したように、不正が行われていたようなので、それを正しにサイト―邸に向かったのです。彼らは、父上に報告もせず、フェムジットで産出された宝石を秘密裏に売買して私腹を肥やそうとしていたのです。卑怯にも、その作業に恵まれない子供たちを利用していました!その証拠の品を確保していたのですが、あろうことか、ここにいるブリュノまでが仲間に引き入れられ、私の机からこっそり盗み出してサイト―に渡そうとしていたのです。」
国王は、そっとサイト―に視線をやると、サイト―はこぶし大の岩を差し出した。
「ああ、それです!それこそが何よりの証拠!」
前のめりになって訴える王子に、周りの目は冷ややかだ。
「ああ、これか。これは、私が子供たちの頑張りに答えてプレゼントしたものだ。メゾン・デゼンファンの玄関に飾ることになっていたのだが、どうしてそれが、お前の手元にあったのだ?」
眉を顰め、サイト―達を糾弾すると思っていた国王が、当たり前のようにその岩の存在を認めてることに、ジョルジュは大いに戸惑った。
「そ、それは…、証拠物件ですから…。」
「まさかおまえが盗み出したのではあるまいな? これが誰の物か、その場にいた人間に確認しなかったのか?」
淡々と話す国王の様子に、焦りが募る王子は、ぽろりと本音を吐き出してしまった。
「こ、子どもたちは、自分たちの宝物だと言っていました。しかし、浮浪者のような子どもが持つには、高価すぎるだろ!」
興奮して立ち上がり、訴える王子に、国王は静かに指示を出した。
「ジョルジュ、明日からおまえは、あのフェムジットの現場で働かせる。寝食も子どもたちと共に過ごせ。扱いは彼らと同じだ。拒否権はない。ブリュノ、お前も肝に銘じておけ。決してジョルジュに手助けしてはならん。」
「そんな…、ではあの岩の内部にあった宝石はどうなるんです?」
「そのことならすでに報告が上がっている。しかるべきところで対処することが決まっているのだ。お前に決定権はない。もう一度だけ言う。お前の態度次第で、王太子が決まる。忘れるな。」
納得できないジョルジュは、なんとか体裁を保つように、宝石について問いただしたが、国王によって、簡単に往なされてしまった。
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