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ショートショートプラザ

控室

作者: 手塚 英

私がこの控室に通されてから、ずいぶんと時間がたっていた。


当初、この控室には私の他にも何人かいたのだが、だいぶん前に皆それぞれのタイミングで呼ばれ、席を後にしていた。


そして私だけが、ポツンと部屋に残されていた。


私は掃除の行き届いた清潔な室内を見まわし、「なぜ自分はなかなか呼ばれないのだろう・・・」と考えていた。


この控室に通されたとき、私は非常に緊張していたが、あくまで平静を装い、職員が指示する通りおとなしく順番を待っていた。


しかしこう長時間またされると、どうしても気持ちがだらけてくる。


しだいに私は疲れてきた。


そして、もしや自分が忘れられたのでは・・と不安になり、思い切って部屋に入ってきた職員に「なぜ私は呼ばれないのですか?」と聞いてみた。


職員は落ち着いた口調で、「大丈夫ですよ」と答えたので、ひとまず安心したが、それからもあまりに長時間またされるので、また不安が増してきた。


しかし何度も聞くのも失礼にあたる、きっと向こうにも何か都合があるのだろう。

そして私も腹をくくり、姿勢を正し、ひたすら自分が呼ばれるのをこの控室で待つことにした。









「○時○分 ご臨終です・・」


医師の声が白い部屋に響き、そのかたわらでは息子夫婦や孫がすすり泣いていた。

そして息子は「親父・・長い間頑張ったな・・」と一言つぶやいた。


ここはとある病院の分室、もう助かる見込みのない患者が治療を止め、緩和ケアに特化した部屋である、この部屋に入ったものは遠からず天に呼ばれることから、病院内ではひそかに

「墓への控室」と噂されていた。


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