96話 セレスティス入国
「ただいま」
ユナは野営をしていたサリーとルーに合流した。ちなみに言うと少し王都方面へ戻った。
「わ、びっくりした! 早かったのね。用事は終わったの?」
「うん」
「これからの予定は?」
「一応変更なし」
「なら、ボクは先に行って雫さまに話を通しておくのです」
話を聞いていたルーがそう言ってすぐに姿を消した。
「よろしく」
ユナが言った声は届いたか分からない。
「打ち合わせしてたの?」
「してない。けどいつもの事だから」
あまりのアクションの速さに驚くサリーだったが、思い返してみるとルーはユナに対する行動が速かった気がする。
「夕飯は?」
「少し前に済ませたよ。もう少ししたらお茶してから休もうかって話してたの。ユナは?」
「ちゃんとは食べてない。お茶するときに軽くつまもうかな」
酒場居座り代として注文したおつまみが結構腹持ちが良かったからそこまでお腹は空いていない。
「ちゃんと食べなきゃダメだよ! とは言っても野営だとそこまでちゃんとしたものは食べられないよね」
「魔法袋に出来立ての料理も入れてるから食べようと思えば食べられる」
「えっ! あれ容量拡大だけじゃなくて時間停止もついてるの!?」
「ついてるのもある。作るのはちょっと大変だけど。
……この世界にあったかは分からないけど」
ユナの親の伝で作って貰った魔法袋だから、今いるこの世界に時間停止魔法袋が存在するのかは分からない。
ちなみにいえばユナの自前の収納魔法では時間停止も可能なのでこっちの魔法袋は食材専用にしている。
「へー、便利なのね。そういえば前に借りた魔法袋にレトルト食品とかインスタント食品とかも入ってたわね」
「既製品用の魔法袋だね。食べ物は大事だから」
「それはそう」
結局夜食はインスタントのうどんとノンカフェインのルイボスティーだった。
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「さて! そろそろ出発しましょうか!」
朝になり、軽めの朝食を済ませたふたりは目的地へ向けて移動を開始した。
ちなみに朝食はおかかの焼きおにぎりとインスタントの味噌汁。焼きおにぎりはご飯全体に鰹節を混ぜ込んで醤油を塗って表面をカリカリに焼いたもの。いわゆる居酒屋の焼きおにぎりだった。
「朝に温かいもの食べると1日元気に過ごせるような気がするよね」
面倒だから時間がないからと抜きがちな朝食だが、食べたときと食べなかったときのコンディションの差は大きい。
「そうだね」
食へのこだわりがあるくせに食生活は崩壊しがちなユナはそう答えながら目を逸らした。
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そんなこんなで数日の徒歩移動。何事もなく目的地であるセレスティスへと入国した。
「ここが! ……でも風景はあまりの変わらないのね」
国境の関所を越えたとはいえ、まだ各町を繋ぐ道である。
周囲の森を切り開いただけの道にはそんな大差はない。
「またただの道だし。……道の整備はセレスティスの方が優秀かもしれないけど」
少し道を歩いてみて分かったこと。魔物避けの魔法具の設置が比較的多く、ちゃんと機能もしている。
道沿いに進めば魔物の脅威はほぼないだろう。あるとしたら他の通行人とのトラブルか。
リースベルトではそれを避けるために森を突っ切って来ていた。
道は悪いが人的トラブルがない。
魔物は多少出現したが、ユナの脅威になるような相手ではなかった。
「道中で結構狩ったよね。素材って売るの?」
「うん。僕には必要ないから」
中には価値の高い魔物もいたのでだいぶ懐は潤うだろう。
「それで、合流場所ってどこだっけ。まだ遠い?」
「雫の隠し拠点のひとつって言ってた。名もなき村の跡地って。この辺りからだと、あと1日かかるかかからないかくらい」
「そうなのね」
え?飯の話ばっかしてるって?
焼きおにぎり美味しいよね、久々に食べたくなった




