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何度召喚されるのか  作者: 美川彼方


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73話 置いてけぼり

どうでもいいけど、このタイトルの妖怪いたなって

 サリーはひとり、宿でむくれていた。

 むろん書き置きひとつで置いていかれたことについてだ。


「いくら私が寝てたからって、置いていかなくてもいいのに」


 実はユナが出かけてから、割とすぐにサリーは起きていた。

 あとほんの数十分、起きるのが早いか出るのが遅ければ間に合っていたかもしれなかった。


 書き置きには、過労と魔力消耗で倒れた事、結界が張ってあるから出来れば外出しないで欲しい事、夕方には来客予定でそれまでには戻る予定だという事等が簡潔に書かれていた。

 そして、それに添えるように食料と暇つぶし道具が入った魔法袋が置いてあった。


 とりあえずお腹は空いていたので、入っていたエネルギーバーとスポーツドリンクでお腹を満たす。

 ちゃんと食べ慣れた、日本メーカー産のものだった。


「ユーナちゃん、どれだけ非常食持ち込んでるんだろ」


 携帯食だけでなくカップ麺やレトルト食品、ごはんパックやインスタントスープなんかも入っていた。

 電気ポットのようなものもあったが、魔力で動かすタイプだったので使い方が分からずにお湯は諦めたが。


 ちなみに、異世界に飛ばされがちなユナは非常食どころか、調理済み食品もストックしていたりする。

 それらに関しては作りたてを時間停止機能がついた魔法袋に保管している。



 日本育ちの舌であるのは間違いないので食べ物にはこだわりがある。

 もちろん異世界産のものでも美味しいものはたくさんあるが、食べ慣れた味にはどうしても勝てない。

だから調味料や米もしっかりと持ち歩いているのだ。

重量がほぼゼロになる魔法袋様々である。


 本人曰く、「食って大事だよね」とのことだった。





「で、夕方過ぎたんだけど」

 外はだいぶ暗くなっていた。


 暇つぶし道具として入っていた電子書籍のおかげで退屈せずに過ごせた。


 が、夕方には戻ると書いてあったユナはまだ戻ってきていない。

 ついでに来客もまだない。


 神子に関しては神官たちを撒けずに外出出来ないでいるだけだが、サリーの知るところではない。

 そもそもサリーと神子は面識すらないのだ。ユナの居ないところで初遭遇となってしまっては気まずいものがある。



 そのうち外は完全に日が沈み真っ暗になっていった。


「ユーナちゃんは帰ってこないし、予定の来客もない、と」


 電子書籍をスリープにしたサリーはそう呟いて立ち上がる。

 ちなみにこの電子書籍も魔力で動くタイプに改造してあり、使用者から自動で必要分を吸い上げるようになっている。

 必要分の魔力といっても大量に必要なわけでもなく、そもそも事前にユナが魔力を込めているのでサリーの負担はほとんどない。

 むしろ自然回復量の方が多いくらいだった。


 夕飯はユナの帰りを待つつもりだったが、帰ってこないので何か摘もうかと魔法袋に手を伸ばした時、コンコン、とノックの音が聞こえた。


「ルーなのです。サリーさん、いますですか?」

 ノックの後にはそんな声が続いた。


「ルーちゃん?どうぞ」

 サリーはすぐにドアを開けた。来客ってルーの事だったのか、と勘違いしながら。



「ししょ……ユナさんから伝言を預かって来たのです」

 ルーは入った後、自分が入ったことで綻んだ結界を調節しながらそう言った。

「伝言?」

「はいなのです。ちょっとトラブルがあったので今日中には戻れない、ということなのです」


「そっかー。伝言ありがとう。

 ところでルーちゃん、これから暇?もし暇だったらお喋りにでも付き合って欲しいんだけど。今日ずっとひとりだったから人恋しくなっちゃって」

 オタク気質で漫画や活字を与えておけばいくらでも時間を消費できるサリーでも、性格は陽寄りなのでお喋りも好きなのだ。

 オンラインゲームでもソロプレイより協力プレイを好むタイプ。それも通話ありで。


「神子さんは来ていないのです?」

「神子さん?」

「はいなのです。夕方頃に来る予定だってきいているのです」


 夕方頃ときいて思い当たるものがあった。

「あ!夕方頃の来客ってその人の事だったんだ。まだ来てないよ」

「そうなのですか。きっと忙しいのです。

 それと、しばらくは時間があるので、お喋り大丈夫なのです」


 むしろ戻るまでさりげなく護衛しといて、とユナに言われているので都合がいい。

 影からの護衛の方が慣れてはいるが、護衛対象の傍にいる方がやりやすいことは多い。

 とはいっても、信頼できる人の紹介した宿でバチバチに結界を張っているこの状況で何か出来る人がいるとは考えにくいが。


「やった!じゃ、ここ座って座って!」

 サリーは椅子に案内しながら、魔法袋からペットボトルのお茶を取り出した。

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