72話 神滅の炎
「どこまで話してたんだっけ」
「えっと、じいちゃん家の家業がどうとか?」
ユナに訊かれ、リョウが答える。
「ああ、その辺りか。
燎原は家系の血をかなり引いている。両親には悪いけど、燎原にその気があるのなら、おじいさんにちゃんと稽古つけてもらうべきだって助言したいくらいには」
「その、家系の血っていうのは?」
「『神殺し』」
ユナは一息ついて、そう答える。
「神、神格を滅ぼす事を生業にしている一族だよ。炎の家は」
「神、殺し?」
「そう」
そこまで話して、ユナは黙った。
言いたいことはまだあるが、一度整理する時間を作った方がいいだろうと。
その間に野営用のシートをもうひとつ出して準備を整えた。
「とりあえずリョウはこれ使って」
そう言ってリョウをそこに座らせ、ユナも元々出していたシートに腰をおろした。
「続きをお願い」
今までの話をなんとか納得させたリョウがそう言った。
「さっき、炎魔法を食らった時に確信した。
燎原は間違いなく『神滅の炎』の末裔。ただ、本来の力を抑えられている」
「『神滅の炎』?」
「そのイキった厨二病みたいなやつが炎家の二つ名だよ」
突然出てきたトンデモワードを訊き返したリョウに、ユナは真顔で返した。
「イキった厨二病って」
「思わなかった?」
「……それは、思ったけど」
思う所はあるけれど、一旦置いておいて話を続ける。
「最初の話だけれど。燎原がちゃんと力を使えるようになったら、洗脳くらい簡単にかき消せる。相手が魔神なら尚更」
「……なんか、全部に突っ込みたいんだけど、相手は魔神なのか?」
「さっき知ったけれど、そうらしい。
発動した後に効力は消えちゃっていたけど、『神を殺せる者』って条件を召喚陣に書き加えられていたのはきっとこの為だったんだね」
ユナは召喚部屋に潜入した時のことを思い出していた。
誰が仕込んだのかは分からないが、次元を越える魔法に手を加えられるのは相当な実力者だろう。
それに、そんな細工をするという事は少なくとも敵の敵ではあるはずだ。
が。魔神とやらが別の神を相手にしたいからそうしたとも考えられるから、期待しすぎない方がいいけれど。
「ちゃんと召喚陣を調べた訳じゃないから確かな事は言えない。けれど、召喚後は洗脳される隙はなかったから、かけられたのは召喚時かその直後だと思う」
夜に来てはいたけども、それはユナとサリーに向けてのものであったので考えない物とする。
そもそも追い返したのだからそこで何かされていたというのは考えにくいだろう。
そして、その後はすぐに追い出されている。
となると、残った可能性は召喚時ということだ。
別行動をとり始めてからというのも考えられるが、オブシディアンで獣人を見た時の反応を思い出すと、その時には洗脳済みだったと考えるのが自然だ。
あの時黙り込んでいたリョウからは、獣人に対して嫌悪感が滲み出ていたのだから。
「あのさ、そもそもなんだけど。
ユーナさんはなんでそんなに詳しいんだ?その、雫さんたちと話していた時から思っていたんだが」
リョウがそんな事を訊いた。
そういえば、リョウにはまだ色々とバレていなかった。バラしているのは名前くらい。
ユナはその事について失念していた。
「うちも一般人の家系ではないから。それに、召喚も初めてじゃない」
全部をまた説明するのは面倒だからと簡単に答えた。
「どんな家系なんだ?」
好奇心でそれを訊いた。
「両親共に、異世界出身」
そんな事を軽く答えた。
「それは、」
「今は僕のことよりリョウの事だね」
驚いて色々訊こうとしたリョウを察して、発言を遮った。
今、ユナについての話を始めたらまたこんがらがってしまう。
そもそもユナはそれ以上の事を話すつもりもなかったし、流されて話過ぎたかもしれないと思っていた。




