71話 アリスの目的
「引き渡す、というのは?」
ユナにとってセレナータは、どちらかというとどうでもいいと思っている部類だが一応訊く。
「やっと監視の目が外れたのに、国に戻す訳にはいかないのです」
「というと?」
「アリス、それじゃあ足りないわ。ユナはリースベルトに着くことはないのだから最初から話してしまった方がいいと思うの」
雫が、明らかに説明の足りないアリスのフォローに入る。
「ユナ様は良くても、そこの人は?仮にもあの国で召喚されたという、勇者的な存在ですよね?それだと……」
アリスが言いにくそうに視線を向けたのはリョウだった。
「ああ、意志とは関係なく裏切るかもって?」
遠回しに洗脳の事だと気がついたユナのその言葉にアリスは頷く。
「目処は立っているとはいえ、今すぐは難しい」
雫たちが来たことで中断したが、ちょうどその事について話していた所だった。
けれど、その話を他人のいるところではやりたくはない。結構踏み込んだ話になるから。
「雫。アリスは信頼出来る?」
だから、そう雫に訊いた。
「もちろんよ。それに、私もアリスのやりたい事に協力したいと思っています」
雫はその問いかけに、迷うことなく即答した。
「そう。それなら僕としては連れ行って貰って構わないし、説明も後でいい」
そう言ってアリスに視線を戻す。
「いいのですか?」
アリスは話の流れから説得には時間がかかりそうだと思い込んでいた。
「僕が信頼している雫が信頼している人なら、今はそれでいい」
本心でもあるが、ちょうどいい口実でセレナータを押し付けられたと思っているのは秘密である。
「ユナ……」
雫が頬を染めていたが、見ないふりをして話を続ける。
「そのまま連れていきたいならこれを使うといい」
そう言ってユナが取り出したのは魔法具。
「護衛……多分監視してた人かな?その人が持ってた、睡眠管理の」
ラーザが拾っていて、去り際にユナに渡したものだった。
「あの国が好きなやつね」
「有難く使わせてもらいます」
アリスがそれを受け取った。
ユナにとっては不要物だったので、押し付けられてラッキーだと思っていることも秘密である。
「そういう事だけど、いいよね?」
空気になりつつあったリョウに同意を求めた。
「あ、ああ」
とんとん拍子に進んだ話に今更ケチをつける理由もなく、同意した。
「あ、これは先に伝えておかないとでした」
アリスはそう言ってユナに近付き、耳打ちした。
「敵の魔神がこう言っていました。『フォレストの精霊は絶対に滅ぼす』と。心当たりがあれば」
「そう」
それを聴いたユナは表情を消した。
内緒話を終えたアリスはセレナータの方へ行き、受け取った魔法具を起動させ、宝物に触れるように抱き上げた。
その時、ずっと無表情を貫いていたアリスがふっと柔らかく綻んでいたのを、ユナと雫は見ていた。
「それじゃあ、お騒がせしました。ユナ、また後日お話しましょうね」
雫がそう言って、セレナータを抱いたアリスを連れて去って行った。
雫たちが完全に居なくなってから、ユナはリョウに言った。
「それじゃあ、中断した話の続きをしようか」




