70話 炎
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「洗脳を解く方法はいくつかある」
現状を悩むリョウに、ユナはなんでもない事のように言う。
「え?」
「その前に確認したいことがあるのだけど。
来栖燎原って名字変わった?」
「なんで知ってるんだ?」
不意にフルネームで呼ばれたリョウは困惑したまま反射的に答える。
それを肯定ととった。
「昔の名前って、もしかして『炎』?」
「いや、だからなんで知って」
「なら割と簡単に解けるかもしれない。
それと、多分昔に会ったことあると思う」
ユナは軽い感じで続ける。
「親の知り合いのおじいさん家が炎家で、一度行ったことがある。その時に同い年くらいだからって紹介された気がする。
燎原なんて名前珍しいし、もしかしたら程度にしか思ってなかったけど。それに、もし本人でも名前変えてまで家を出ているなら掘り返さない方がいいかなって」
「悪いけど、全く覚えてない……。というか、じいちゃん家に居た時の事自体、ほとんど覚えてないな。小学の途中まではじいちゃん家に住んでたはずなのに」
小学校の途中ならば、覚えていてもおかしくはない。というより覚えていないとおかしいだろう。
リョウは不思議そうに考える。今まで忘れていた事にすら疑問を持っていなかった。
「両親の方が家業を継がせたくないって言っていたらしいから、その関係かもしれない」
一般人として生きて欲しいと思われていたなら記憶操作くらいはされている可能性はある。
本人の同意があったか否かはユナの知るところではないが。
裏に関わる、またその周囲の者は大変だな、と自分の事は棚に上げて考える。
「家業って?」
「さっき炎魔法食らった時に確信したのだけど、」
そこまで言って、ユナは突然言葉を切った。
「どうやら他の利用者が近くにいるから、込み入った話はまた後で、かな」
数人が広場へと向かっている気配を感知した。
「え、こんなに話が微妙な、めっちゃ気になる感じなのに!?というか俺、マジで何やってんの!?」
もっともな発言をするリョウだった。
間もなくやってきたのは3人。
全員がフードを深く被っているという、怪しい風貌だった。
そしてその人物は、ユナたちに声をかける。
「数日ぶり、だね」
そう言ったのは雫。そして、その後ろにいたのはルーともうひとり。
ここにルーが来てくれたのは都合がいい。
そう思ってユナはルーを呼んだ。
「ちょうど良かった。お使いを頼んでも?」
「大丈夫なのです。ボクは案内して来ただけなのです」
それを聞いて、ユナはメモに何やら走り書きをする。
「この内容の伝言を頼む」
内容はサリーとダイオプサイトの神子に向けての現状報告。
夕方までに戻るつもりが、その時間はとうに過ぎてしまっていた。
「了解なのです」
ルーはそう言うと、雫へ一礼して森の中へ姿を消した。
「ちょっといいかしら。この子が用があるって」
そう言われてもうひとりがフードを取りながら前に出てくる。
「ああ、雫のとこの。……ごめん、名前忘れた」
ユナはその顔に見覚えがあった。
ちゃんとは覚えていなかったが。
「お久しぶりです。雫さんの補佐をしています、アリスです」
「アリスね、お久しぶり。
用って?」
ユナにとっては何の印象もない人物だったのでフラットに返す。
「協力して欲しいことがありまして。
それにあたって、そこの彼女を引き渡して頂きたいです」
そうアリスが示したのは、セレナータだった。




