66話 ラトス
あの青年に名前が着きました
キラッと短剣が閃き、襲いかかろうとした魔獣が吹き飛んだ。
ユナは倒したことを確認し、短剣の血を払い鞘に戻した。
「ユーナ、お前……。実は俺より相当強いんじゃないか?」
それを見ていたラーザがぽつりと呟く。
ユナはその声が聴こえていたが、聞こえなかったフリをしてしれっとした顔をしていた。
「魔獣、増えてきたね」
ユナのその言葉の通り、エンカウントは一度ではなかった。
ユナとラーザが襲ってくる魔獣を倒し、解体職人が手持ちの魔法袋に収納する。大量の魔獣や例の巨大な魔獣を収納できるよう、大きめのものを準備していたようだ。
「そうだな。つーか、お前が先に見つけて倒しちまうから俺があんま活躍出来ないじゃないか。報酬渡すからちゃんと受け取ってくれよ?」
「ギルドに預けておいて」
「ま、それが安牌だな」
オブシディアンを拠点にしているラーザはいいが、ユナ達は今回、まだ拠点を決めていない。それでも冒険者ギルドなら国を跨いででも繋がりがある。
そうこうしているうちに、ラーザの息子がいるという場所にたどり着いた。
ちなみに、リョウ一行とはまだ会っていない。
つまりラーザと行動を共にするのもここまでというわけだ。
「じゃあこれで」
着いてすぐに先へ進もうとしたユナだったが、ラーザは引き止めた。
「ちょっと待て。リョウを見てないか確認する。ついでに紹介させてくれや」
そう言うと、その場にいたひとりを連れて来た。
「コイツが息子のラトスだ。こっちは最近知り合ったユーナだ。お互い若い冒険者なんだ、仲良くな」
ラーザは完全に世話焼きのおばちゃんのような行動になっていた。
「ラトスだ。その、……親父が世話になってるみたいで」
ラトスと名乗った青年は多少緊張気味のようだった。セレナータの時もそうだったが、若い女性と何かあったのか、そんな挙動だった。
「ユーナ。ラーザは初めて会った時から親切にしてくれてるよ」
簡単な挨拶を済ませ、ユナは本題に入る。
「人探しをしているのだけど」
そう言ってリョウの特徴を話した。
「ああ、少し前に会った兄ちゃん達のことか?別嬪な姉ちゃんとゴツめの兄ちゃんの3人だったが」
ラトスはすぐに心当たりがあったようだ。
(セレナータ王女とその護衛も一緒に行動中ってことか)
「多分それ。どっちに行ったかわかる?」
同行メンバーからほぼリョウ達だと確信したユナは訊く。
「少し戻ったとこの迂回路に行ったよ」
「なんでまたそんな所に?」
「見た感じ、兄ちゃん達戦闘慣れしてなさそうだったからな。魔獣との戦闘避けられるようにって勧めたんだが……良くなかったか?」
良心でそう勧めてくれたのだろうが不安が残る。
「戦闘もだけど、森歩きにも慣れていない。
とりあえずありがとう、そっちに行ってみる」
ユナはそう言って戻る方向へ向かいかけ、振り向いた。
「ラーザ。あっち方向からそこそこの魔獣来てるけどどうする?」
ユナが示したのは向かおうとした方の逆方向だった。
「こっちでやるわ。ここまで付き合ってもらっただけでも十分だ、ありがとな」
「そう。じゃあ、気をつけて」
「そっちもな。リョウにもよろしく」
そう言って、ユナとラーザ達は別れた。
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「迂回路の小道ってこれか……。これは無理じゃないかな」
ラトスに教えてもらった小道を見たユナは、リョウ達が迷子になっているのではと、ほぼ確信してしまった。
そこは、森歩き素人では絶対に追えないような獣道だった。なんなら入口を見つけられたかも危うい程の。
それでも今までの道中ですれ違っていないということは入り口は見つけてここを進んだのだろう。
「迷ってるとしても魔獣の群れに突っ込んだりしてないといいけど。あの護衛の人が戦えるだろうとはいえ対魔獣戦できるとは限らないし」
ユナはそう呟いて、小道へと足を踏み入れた。




