64話 迷子の迷子の
リョウサイドの話
「…………」
「…………」
「…………」
3人は黙ったまま、森の中を歩いていた。
「……迷いましたわ」
「……迷ったのか?」
「……申し訳ありません、迷いました」
セレナータ、リョウ、護衛の3人は王都へ行く途中、迷っていた。
何故、こうなってしまったのか。
少し前に遡る。
ーーーーーーーーーー
「道が、塞がっていますわね」
そう言ったセレナータが視線を向けた先には、大きな魔獣の死体があった。
「おう、兄ちゃん達。悪ぃな、ここはしばらく通れねえ」
呆然とそれを見る3人に気がついた、近くにいた青年のひとりがこちらへやってきて、そんなことを言う。
「これは、何があったのでしょうか?」
護衛が1歩前に出て会話を引き継いだ。身分を隠しているとはいえ、セレナータは王女だ。見知らぬ男と会話させる訳にはいかないのだろう。
「見ての通り、道の近くにコイツが出たんだ。幸いデカいだけでそこまで強くはなかったんだがな。まあ、そのデカいってのが問題でな。俺たちじゃこの大きさを処理しきれねえんだわ。仕方がねえから仲間を近くの町に走らせて、応援を呼んでもらってる。
それを待ってるんだ」
青年はそう説明する。
「これを避ければ通れるのでは?」
「兄ちゃん素人か?処理しきれてねえって事は魔獣の死体が放置されてる状態って訳だ。まだ来ちゃいねえが、少し離れた場所から様子を伺ってるヤツが居る。
巻き込まれたくなけりゃ、悪いことは言わねえ。引き返すんだな。あんたらが来た方向からはまだコイツを狙ったヤツは来ていなさそうだ」
護衛の言葉に青年は呆れたように続ける。
つまりは魔獣の死体を狙って、別の魔獣が集まってこようとしているという事だ。
「まあ、どうしてもこっちの方向に行きたいのなら、少し戻った所に細いが道はあるんだわ。冒険者ならたまに使うんだがな。その道に沿って行きゃあ上手いことここを迂回できるぜ」
「その道は安全なのでしょうか」
「ここを通るよりかは安全だろうな。今んとこ風上になってるからな。そっちからは来ねえだろうさ。
まあ、確実な事は言えねえがな。道と言っても獣道のようなものだし。行きゃ分かるだろ」
青年はそこまで言うと、セレナータへ目を向けた。
「えらい別嬪さん連れてるからな。魔獣だけじゃなく、人にも気をつけろよ。
ここんところ盗賊の話は聞かねえが、ここまでの美人が歩いてりゃ変な気起こすやつも出てくるだろうよ」
目は向けたが直接話しかけることは無い。そんなことをしたら逆にそういう人だという扱いをされると判断したのだろう。さすがは冒険者といったところか、面倒事への危機回避には優れている。
護衛とリョウに向かってそう言った。
「お気遣いありがとう。気をつける」
裏をかいて狙っているのではと考え込んだ護衛に変わってリョウがそう返した。
「おうよ。兄ちゃんもな。しっかり守ってやれよ!」
青年はそう言いながらリョウの背中をバシバシと叩いた。
何回か叩いて満足したのか、青年は仲間の所へ戻って行った。
「どうしましょうか」
護衛はセレナータへと判断を仰ぐ。決定権はセレナータにある。
「現役の方の意見を尊重した方がよろしいでしょう。この騒ぎが落ち着くまで町で待機するか、教えていただいた迂回路を行くか、ですわね」
考えながらリョウへと視線を向ける。
「俺としては、迂回路に行きたい」
リョウはそう即答する。どっちの選択肢がいいか訊かれたのがわかったのだろう。
サリーとユナの事を考えるならば、その選択肢一択だった。
「リョウ様がそう仰るなら、そちらにしましょうか。いいですわね?」
セレナータは護衛へ確認をとった。
「はい」
護衛としても、早く王都に戻るに越したことはない。
そう考えて肯定の返事を返した。
そして冒頭に戻る。
教えられた小道を見つけ、そちらへ向かった3人は途中で道を外れてしまった。
冒険者や森歩きに慣れている兵士だったら話は別だっただろうがここにいるのは、温室育ちの王女、城勤めの兵士、日本育ちの学生だ。
道から逸れたことに気が付かず、そこそこの距離を進んでしまった。
気が付いた時には既に遅く、元の道に戻ることすら出来なくなっていた。
もともと街道を真っ直ぐ進む予定だったのだ。地図すら持っていなかった。
この青年、ぱっと出のキャラの予定だから名前なしなんだけど、書いてて楽しかったので名前ありに昇格させようかな?




