60話 新たな予知と心配
久しぶりの人達
「は?嘘でしょ?」
日課として祈りを捧げていた神子は思わず声をあげた。
「なんで、王都が壊滅するのよ……。まだ未確定未来のひとつだし、猶予も結構あるみたいだけど。
ウィスタリアの勇者と連絡取らないとよね」
そう呟き、祈りを切り上げて立ち上がる。
前に視たオブシディアンの惨状とよく似ていたので、リースベルトの勇者が関係しているはずだと判断した。
しかし普段は持ち歩いていた念話の魔法具はうっかり自室に忘れてきてしまっていたので、はやく取りに行かないといけない。
「急用が出来たの。今日の予定、保留にしていて。一旦部屋に戻るわ」
後ろの方で待機している付き人にそう告げた。
「畏まりました。各所への連絡は必要でしょうか?」
「そうね。……いいえ、そちらも保留にしていて。確認したいことがあるの。目処が着き次第連絡するわ」
一大事ではあるが悪戯に騒ぎを起こすのは、と思い、連絡を控えてもらった。
まずはウィスタリアの勇者と連絡をとって、現状と予定を確認しよう。
現在別行動しているとは知らない神子は、自室へと急いだ。
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少し前のこと。
リョウは王都へ呼び出されたふたりがなかなか戻ってこないどころか何の連絡も寄越さない事が気になっていた。
それを近くで見ているセレナータは、リョウがそわそわしている原因を察しつつ、ふたりが戻ってくる予定がないことが分かっていた。
その事をどう伝えるか、伝えないのか。そのうえでどうすればリョウとふたりきりで行動できるのか。
そんなことばかり考えていた。
「なあ、レナさん。王都に行ったふたりっていつ頃こっちに戻ってくるとか聞いてたりします?」
ついに直接訊いた。
敬語でなくていいとセレナータは言っているが、王族であるという事実が邪魔をして、中途半端に敬語が抜けきれないでいる。
「ええと、詳しいことは、聞いていませんわ」
どうこたえるかまだ決めかねていたセレナータが焦って答える。
「そうなのか。
えっと、実はちょっと心配になってきたから様子を見に……迎えに行こうかって考えてるんです。どうかな?」
「それは……」
止めるように、と言いかけて理由を訊かれたらどうしようと思い言葉を止める。
まだ良い言い訳が思いついていない。
「流石にもう1人の護衛の人に行って貰う訳には、だろ?レナさんの傍を離れる訳にはいかないだろうし」
リョウのその言葉を聞いたセレナータは、護衛がいる限り本当に2人きりでの行動は出来ないと思い立った。
それならば、護衛を王都に行かせてしまえば。その間にリョウと既成事実を作ってしまえばと考えた。
「そうですわね。たしかにいつ頃戻ってくるのかくらいは知っておきたいですわよね。
護衛に声をかけてみますわ」
そうと決まれば、とセレナータが行動を起こした。
そして、リョウの返事も聞かずに視界の端で待機している護衛の所へと向かった。
「護衛、行ってくれるそうですわ」
戻ってくるなりそう言った。
上手くいったはずなのに、セレナータの表情は優れない。
「条件を出されましたの。わたくしも一緒に王都へ戻るようにと。やはり、単独行動は許されないみたいですわ……」
本来ならユナとサリーと共に王都へ戻っている予定だったのだ。
護衛もさっさと任務を終わらせたいと思っていたので、セレナータの提案は渡りに船、と乗った。やっと帰れる、という本音はセレナータに隠していたが。
「それに俺も同行出来ないか?」
リョウは護衛の方へちらちらと視線を向けながらそう訊いた。
「わたくしは構いませんわ」
リョウと行動したいセレナータはそう即答した。嬉しそうな表情を浮かべながら。
護衛の方はあまり良い表情をしていなかったが、その気になってしまったセレナータを説得するよりも、リョウを連れて行くことによる面倒を受ける方がマシかという考えに至り、同意した。
面倒事は上に押し付けてしまえば良いだろうと。
多少はお咎めがあるかもしれないが、それは甘んじて受け止めてもいいかとそう考えた。
「そうと決まれば、すぐに……はもう遅いですわね。明日、出発しましょう!」
セレナータがそう宣言した。




