57話 今後の方針
「サリー。今後の行動方針について話しておきたいんだけど、いいかな?」
アリアドネとの手合わせという軽い運動も終え、ある程度落ち着いたところでユナがそんなことを言った。
「今後?早めにここを出る予定だったって言ってたよね」
「そう。いくつか候補は考えているのだけど、サリーはどうしたいかなって」
「ちなみにその候補っていうのは?」
「1つ目は、そのままオブシディアンに戻ってリョウと合流する。これはリースベルト側の相手とも合流することになるからちょっとリスキーかもしれない。
2つ目は、ウィスタリアに行く。ここなら僕の信頼出来る拠点もあるから比較的安全に活動できるはず。
3つ目は、もうしばらくここで身を隠しておく。これはリアの負担にもなるし、見つかった時のリスクが高いからあまりおすすめしない。
4つ目は、全部ほっぽり出してさっさと帰還しちゃう。これは一応かな。前にも言ったけど、いつでも帰れる手段はあるよってことで。
考えてるのはこの辺り。
他にやりたいこととかあったらなんでも言って欲しい」
「ちなみに、ユーナちゃんはどうしたいの?」
サリーは質問を質問で返す。
「個人的に1番楽なのは帰還かな。諸々無視することになるから心残りにはなるけれど。
次点だとウィスタリアかな。そこなら割とのんびりできるし、そこでリョウが条件満たすの待っててもいいし」
端的に言うと、あんまり動きたくないなー、ということである。
それと、サリーの安全性も考慮してか。
「ユーナちゃんは帰りたいの?」
「それはどちらでもいいかな。家族とかも、また呼ばれたなーくらいしか思ってないだろうし」
「頻繁に帰るって選択肢出してくるからてっきり帰りたいのかと。というか心配してないんだ……、うちはどうなんだろ」
「多分大丈夫じゃないかな。その辺りの調整もされてるだろうし」
本人は知らないが、サリーの家族も異世界の存在を知っている部類だ。前回のこともあって多少の心配はあるかもしれないが、ユナも一緒にいるだろうという連絡を受けているのである程度は納得しているだろう。
「リョウのことは心配だけれど、アリアドネさんの話を聞いたことを考えるとそう簡単に合流すべきかってなるよね」
そう呟いて考える。
「少しリョウの様子を確認して、良さそうなら合流、ダメそうならウィスタリア行きかな。帰還はまだ考えてないかも」
「リョウの方は、ルーに様子見てもらってるから近くまで行けばすぐ確認できると思う。ただ、バレそうになったら離脱するように言ってるからもしかしたら情報不足になるかもしれないけど」
保険としてそう言ったものの、大丈夫だとは思っているが。
「ルーは獣人だからね、どうしてもリースベルトの人とは相性が良くない」
そう付け加えた。
「結構安全第一の指標立てるよね、ユーナちゃんって。ついでに訊いちゃうんだけど、ダメだった場合の想定は?」
「お国柄、洗脳はかけられてる可能性は高いかな。というか、多分召喚の時点で多少の暗示はかけられているって考えた方がいいかもしれない。
問題はその内容だけど……戦争目的なら亜人差別系はありそう。勇者対策が目的なら、他国勇者に対する悪感情を植え付けるとかかな。一応本人には正義の名のもとに行動してると思わせていた方が操りやすいだろうし」
初めて獣人を見た時のリョウの反応を思い返してみると、亜人に対する何かは既にありそうだった。
それをベースに考えると、亜人は皆殺しにしようという思考にさせられる事も考えられる。
そうなった場合にどうするのかはちゃんとは考えていないけれど、ユナは物騒な結末を選択する覚悟を既に持っている。まあサリーの手前、出来れば選びたくないと思っているが。
「すごいポンポン出てくるのね。……戦争に巻き込まれるのは、嫌だなあ。今まで見た獣人の人達も可愛かったし、雫さんと敵対もしたくないよね」
「雫はリョウに恩を売ってるし、それを踏まえて敵対の意思を見せるようなら完全にアウトだろうね」
「恩を売ってるって、言い方...... 」
「というか、リアの話からすると、僕と敵対するように言われてる可能性が高いよね。その時にサリーがどの位置に立つのかっていうのも考えておいて欲しい」
「私は、ユーナちゃんと敵対する意志はないよ」
サリーはそう即答した。
なんといってもユナからは常に好意的な感情が向けられていることが目に見えて分かっているから。それがなくても信じたいと思う気持ちは大きい。
「それは、たすかる。ありがとう」
ユナはそう言いながら顔をそむけた。




