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インヘリテンス  作者: 梅太ろう
20/64

第20話【変貌】

 そこに現れたのはサオだった。


(今だ! 死ね化け物め!)


 テツがサオに目を奪われた一瞬の隙を付き、ソウダはテツに襲いかかった!


「きゃあー!! テツ君!!」 


「!!」


 地面へと、数滴の血が落ちた。


「ぐ、ぐげがが……」


 テツはソウダの剣をかわし、手刀を首に突き刺していた。


 手刀を抜くとソウダはその場に倒れた、そしてテツはサオを見てニッコリと笑った。


「サオ! 無事だったんだ! よかった!」


 サオはテツの元に走り抱きついた。


「サオ?」


「テツくん! 駄目よ! もうこれ以上殺さないで! もう! ……テツくんが……殺されちゃう……お願い……もう……これ以上暴れないで……うわあああぁぁぁぁぁ!!」


 サオはテツを強く抱きしめ、泣きながらテツに訴えた。


「サオ? な、なんで? どうして?」


 テツはまたも混乱している。


「お願い……もう……これ以上暴れないで……アンジが、きっとアンジがなんとかしてくれるから……お願い……」


「サオ……」


「はっ……! い! 今だ! 取り押さえろー!!」


「おおおおお!」


 すると警備隊が一斉に飛びかかり、二人を引き離しテツを取り押さえた。


「テ、テツくん!!」


「サ、サオ……」


 そしてテツの両腕に異常に大きな手錠がはめられた。


「いやーぁぁ!! テツくーん!!」


 そしてテツはそのまま警備隊に連れていかれてしまった。



 ――ガルイード王国東側


「はあはあ! はあはあ!」


 アンジはサオとテツを探に一旦家に戻ろうとしていた。


(サオ、テツ、どこにいるんだ? 一体なにがあったんだ? 無事でいてくれ)


「……わー! わー! きゃー!」


「なんだ!?」


 なにやら人の騒ぐ声が聞こえた。


「……いや、今はまず家に戻らなければ!」


「ぎゃああ! わー! きゃー!」


「……」


 アンジは気になる気持ちを押し殺し、家へと足を進めた。


「怪物だぁぁああ! 犬の怪物だぁぁああ!」


「!! 怪物!?」


 アンジは再び足を止めた。


(まさか……あのラギットやメザックの怪物と同種の……?)


 アンジは暫く考え込んだ。


 「……くっ!」


 アンジは騒ぎの起こっている方へと走っていった。



 ――――


「あ、あれは!?」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


「きゃあぁぁ! わああぁぁあ!」


 そこでは普通の犬の何倍も大きく、爪や牙が肥大した犬の怪物が街で暴れていた。


(間違いない、島で見たラギットと同じ目をしている……奴はあの島で見た怪物等と同種だ……)


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


 犬の怪物は王国をどんどんと破壊している。


(くっ! 早くなんとかしないと、王国がめちゃくちゃにされてしまう……)


「タロー! タロー!」


「!!??」


 その時、怪物に近づき何かを訴えかけている少年を発見した。


(あ、あれは、トビくん?!)


「タロー! タロー! 分からないの!? 僕だよ! お願いだ! 思い出しておくれよ! タロー!」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


 怪物はタローの訴えには耳もくれずに王国を破壊し続けていた。


「グルルル……ガアアァァ!!」


 その時、怪物はついにトビに襲いかかった!


「危ない!」


 アンジはトビに飛び付き、そのまま怪物の陰へと転がり隠れた。


「グルルル……」


「なにをしているんだ! 殺されるぞ!」


「ア、アンジさん……う、うわああぁぁぁ! タローが! タローがああぁぁあ!」


「ト、トビくん……あれが君の連れていた犬……? い、一体どういう事だ? なにがあったんだ?」


「う、う、ぼ、僕は、イジメられっ子なんです、それで僕をよくイジメている子がまた僕に絡んできて、それをタローが助けてくれて、でも……そしたらイジメっ子がタローに暴力を振るったんです、そしたら、そしたらタローは動かなくなっちゃって、でもそれでもイジメっ子はタローへの暴力を続けようとして、そしたらテツくんが現れて、助けてくれたんです」


「テツが!? テツにあったのか? テツはどこへ行ったんだ?!」


「わ、わかりません、急に目の前から姿を消してしまいました……」


「そ、そうか……すまん、話を続けてくれ」


「は、はい、僕が泣いているのをみて、テツくんが動く様にしてほしいかって聞いたんです、僕はタローを助けてくれるんだと思って、お願いしました。そしたらテツくんはタローになにかしたらしくて、暫くしたらタローは僕の目の前であの姿へと変化して、暴れだしたんです……」


「なっ……!? ……っくぅ……」


 アンジは拳を強く握り考え込んだ。そして島での出来事、王国での出来事、全てを思い繋げ、一連の怪物騒動の真相を悟った。そしてテツが普通の人間で無い事も、恐るべき力を秘めている事も、全てを理解した。


「トビくん……そのイジメっ子はどうなったんだ……?」


「は、はい、こ、殺されてしまいました……で、でもそれは僕を助ける為に……」


「……他にテツに変わったところはなかったか?」


「警備隊の人達に追われていた感じでした」


「そうか……」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


「!!」


「タ、タロー!」


「トビくん、タローは僕がなんとかする、君はここにいるんだ!」


「で、でも……」


「ここにいるんだ!!」


 アンジは強めのにトビへ言い放った。


「君が殺されてしまっては元も子もない、またタローと一緒に遊ぶんだろう?」


「う、うぅ……」


「大丈夫、タローは僕がなんとかする!」


「ふぇぇええ……タロー……」


 トビはその場に泣き崩れた。


「……」


 アンジは立ち上がり、タローの元へと走って行った。


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


 タローは破壊を続けている。


(くっ、とは言ったものの、一体どうすれば……!?)


「あそこだー! 急げー!」


 すると大勢の警備隊がタローの元へ駆けつけて来た。


「いたぞー! あれだー! 怯むなー! 仕留めろー!」


「おおおお!!」


 大勢の警備隊が一斉に剣を抜き、タローへと向かっていった。


「な!? ま、まずい、タローを殺す気だ!」


「うをををを!!」

 

 警備隊達は剣を振り上げ一斉にタローに飛びかかった。


 !!!!


「なっ??!!」


 しかし、タローを覆う毛が剣を跳ね返した。


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


「ぐわぁぁあ!」


 警備隊達は皆タローに吹き飛ばされた。


「ば、化け物!! ひぃぃ……」


「え、ええーい! 怯むな! 切れんなら突け! 突き刺せー!」


「やめろー!!」


 アンジは警備隊達の前に出て叫んだ。


「!!?? な、なんだあいつは??」


「殺しちゃ駄目だ! 殺さないでくれ!」


「なにを言っているんだあいつは? 危ないからそこ離れていろ!」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


「ぐわあ!!」


 アンジはタローに吹き飛ばされた。


 警備隊達はアンジを無視し、再びタローに突撃をした。


「……いけー! 突き殺せー!」


「おおおお!」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


「ぐわぁぁあ!」


 しかしことごとく吹き飛ばされた。


「ぐぬぬ……ま、魔法弾! 投げろー!」


 タローに向け、数発の魔法弾が投げられた。


「グヲオオオ!!」


 タローは大爆発に少し怯んだ様子を見せた。


「や、殺ったか!?」


「ガアアァァ! ゴアアァァァ!」


 しかしすぐにまた警備隊に向かい咆哮した。


「くそっ! もっとだ! もっと投げろ!」


 警備隊は立て続けには魔法弾をタローへと投げた。


「グヲオオオ!!」


「ぐっ、くっ、や、やめろ……やめろー!」


 アンジは立ち上がり警備隊達を止めに走った。


「やめろ! やめるんだ! 殺すんじゃない!」


「な! なんなんだ貴様は! どけ! どいてろ!」


 アンジは突き飛ばされた。


「ぐっ!」


「化け物は弱っているぞ!! 今だ! 突けー!」


「おおおお!」


「グヲオオオガアアアアア!!」


「ぐわぁぁあ!!」


 またしても警備隊達はタローに吹き飛ばされた。


「くそっ! 魔法弾! 放て!」


 そして、またもタローに向かい魔法弾が投げられた。


「ぐっ!」


 アンジは咄嗟に落ちている石を拾い投げ、魔法弾がタローに当たる前に爆発させた。


「貴様!! なにをする! 邪魔をするなら切るぞ!!」


「あの犬は! ある子供の大切にしていた友達、いや、家族なんだ! 頼む! 殺さないでくれ! きっと元に戻す方法がある筈だ!」


「犬―? どこが犬だ!! どうみても化け物だ! 貴様はこの王国を潰す気か!! ええーい! どけい!」


「グヲオオオ!!」


「!!」


 タローが二人に襲いかかってきた。


「危ない!」


 アンジは警備隊の男を抱きかかえて飛び、タローの攻撃を避けた。


(くそっ! どうすれば……そうだ!)


 アンジはタローへと向かって行った。

次回第21話【雨】

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