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インヘリテンス  作者: 梅太ろう
13/64

第13話【組み手】

 ――調査隊訓練場 


「メダイ隊長!」


「アンジさん」


「ご苦労様です、どうですか訓練の方は?」


「ええ、ビシビシやっていますよ、一日のうち二十時間は訓練に当てております」


「ひえー! それは凄い」


「武器の方も剣に槍、斧に弓と、順調に集まっております」


「さすが、すばらしいですね!」


「いやぁ、とんでもない……? その子は? お子さんですか?」


「あ、いや、あー、ああ、親戚の……」


「アンジ! 親戚って?」


「しっ! しー!」


「そ、そうですか、して今日は何用で? まさか例の新しい武器が出来上がったんですか?」


「ええ、まあ、まだ完成って訳ではないんですが、これです」


「これは?? 玉??」


「ふふっ、どこか広い場所に移動しましょう」


 三人は訓練裏にある空き地へと移動した。


「これだけ広ければ大丈夫ですね、ではいきますよ、少し離れて、よく見ていてください」


 アンジは大きく振りかぶり魔法弾を投げた。  


 すると魔法弾は大爆発を起こし、黒煙を上げた。


「うをっっ、こ、これは」


「うっわー! すっげー!」


「今ので一番威力の低いものです、火薬の量を調整することで自在に威力を調整する事が出来ます」


「す、すごい、このサイズでこの威力……これを大量に作り各兵士に持たせれば」


「ええ、もしかしたら訓練すらいらないかもしれないですね!」


「すばらしい! これはすばらしい武器ですよ!」


「ふふふ」


「ところでアンジさん」


「はい?」


「大丈夫ですか……?」


 アンジの半身は丸焦げになっていた。


「え、ええ……お構いなく……」

(い、一番火薬が少ないやつでこんな威力あるのね……)


「あはははは! アンジ焦げてるー!」


「……」



 ――訓練場内


「へー、いろんな訓練方法があるんですね」


「ええ、今回は場所が孤島ですからね、気温や気圧の変化、様々な地形、いろんな環境の変化に対応するべく訓練をおこなっております」


「なるほどー、さすがはみなさん、選ばれた精鋭だけあってどれもそつなくこなしてますね」


「いやぁ、訓練を始めてもう二週間以上が経ちましたからね、ちょうどみんな慣れてきたってだけですよ」


「いや、それでも凄いですよ、感服しました」


「恐れ入ります、よければ剣術の訓練も見て行きますか?」


「ええ、是非!」



 ――剣術場


「我が国の剣術は大陸内でも高く評価されております」


「ええ、存じ上げてますよ、そのなかでもメダイ隊長はこの国随一の剣士だと」


「滅相もありません、私以上に優秀な剣士はまだまだ沢山おります」


「そんなに謙遜なさらずに、その腕前と頭脳を買われ、既に国の兵隊長であるにも関わらず、今回島の調査隊隊長との兼任を仰せつかったのでしょうから」


「いや、誠に恐縮次第であります」


「ねえアンジ! あれ見て!」


「ん?」


 二人が話していたすぐ側の広場では、数十人の訓練生が一斉に素振りをしていた。


「はあっ! はあっ! はあっ! はあっ!」


「みんな同じ動きしてるよ!」


「はあー、なかなか息の合った」


「こちらは和の国の木刀と呼ばれる刀を使用した、素振りの訓練です、木刀はその形状、重量共に素振りの鍛錬に適しております」


「なるほど……」


 隣の広場へと行くと、今度は訓練生同士が立ち会いを行っていた。


「きえー!!」


「せいや!!」


「もの凄い迫力ですね」


「こちらはタゴの木を加工して、我が国の剣により近い形状と重量で作った、サガネという模刀を使用して行う、実践向けの組み手です」


「はあ!」


「せい!」


「うーん、勇ましい……どの人からも計り知れないアークを感じる……」

 

「へ? アンジなんで? あの人達みんな魔法使いなの?」


「ん、ああ……アークってのはなにも魔法使いの専売特許ってわけじゃないんだよ、言ってみればエネルギーだからね、自身のアークを爆破的に増幅する事で、身体能力を上げて闘うって人もいる、剣士や武闘家なんかはみんなそうだよ」


「へー……」


「元々の才能もあるけど、身体を鍛え上げる事でもアーク量は上がっていくから、まあ、要はアークがいっぱいある人、イコール強い人って感じかな」


「そうなんだー……」


「ときにアンジさん、アンジさんも剣術の腕前が達者であると聞いておりますが」


「いやいやいや、私は調査でいろんな島に行くことが多く、野生の獣から身を守る程度に身につけたもので、国に選ばれし調査隊のみなさんに比べれば全然対したことは……」


「しかし、聞く所によると数年前に一度、国の大会で優勝した経験をお持ちだとか」


「いやいや、随分と昔の事ですし、もう何年も剣など握ってはおりませんので」


「アンジさんこそ謙遜なさらずに、どうです? ここは一つ組み手をされてみては?」


「いやいやいや、私など相手になりませんよ」


「アンジ戦うの!? やってやって!」


「あのなあ……俺は怪我人なんだぞ?」


 アンジはふと怪我をした自分の腕を見た。


(しかし、最近腕の調子も私生活には差し支えないくらいに良くなってはきている、現場に戻れるか確認する良い機会かもしれない……)


「メダイ隊長、やっぱりやります、やらせてください!」


「決まりですな、誰か! アンジさんにサガネと防具を!」


「はっ!」


「やったー! ワクワク!」


「組み手と言っても軽く、防具も着けますし、お怪我はさせないようやらせますので」


「はい、どうぞよろしくお願いします」


「サルバ!」


「はっ!」


「お相手は、我が調査隊副隊長を務めるサルバにございます」


「調査隊副隊長サルバであります! よろしくお願いします!」


「え? 副隊長さん? あ、よろしくお願いします」


「ではよろしいですかな?」


「アンジがんばれ!」


「始め!」


 ……シーン……


 一瞬で場の空気が張り詰めた。


 サルバは刀を構え相対した瞬間、アンジの大きな力量を理解した。


(そうとうな手練れだ……油断をすればやられる……)


 二人は一定の距離を保ち、円を書き移動している。


「……」


「……」


「アンジー! 早くやっちゃえー!」


 アンジはテツの一声に一瞬動揺した。


(あんの馬鹿!)


「はあ!」


 次の瞬間、物凄い早さでサルバが刀を振りかぶってきた。


「うを!」


 上下横と縦横無尽に攻撃してくるサルバの刀を、アンジはなんとか受けかわすが、防御に手一杯で攻撃に転じられない。


「はあはあ……」

(まったく隙がない、素晴らしく速くて正確な攻撃だ……そう長くは受け続けていられない……しかし、下手に攻撃をすれば絶対返されやられる……どうしよう……)


「せい!」


 サルバは刀を横殴りに打ってきた。


「うわあっ!」


 アンジはなんとか後ろに下がり交わすも、体制を崩してしまった。


「はあ!」


 サルバは体制を崩したアンジに振りかぶり、刀を打ち下ろした。


「ぬを!」


 サルバの刀が大きく床を叩いた。


「んがっ!」


 間一髪刀を左に避けたアンジは、次の瞬間左足でサルバの刀を踏みつけた。


「うを!」


 刀を踏まれたサルバは体制を崩した。


「はあ!」


アンジはすかさず刀を横薙ぎに打ち放った。


「くっ」


 サルバは瞬時に身体を沈め刀を避けた。


「はあ!」


 そして体制を戻しつつ、アンジの足もろとも刀をすくった。


「うわあ!」


 アンジはバランスを崩し、体制を立て直そうと右足で跳ね、地面に着地しようとした瞬間、すばやくサルバにその右足を足で弾かれた。


 するとアンジは派手に転んだ。


「あいたた、はっ!」


 見上げるとサルバはアンジの眼前に刀を突き付けていた。


「それまで!!」


 サルバは刀を引くと、その場から一歩後ろへ下がった。


「はあはあはあ……」


 呆然と、アンジはサルバを見上げていた。


 道場中に拍手が響き、メダイが近寄りアンジを抱き起した。


「いや、素晴らしい! 副隊長であるサルバ相手にここまで渡り合うとは、相手がサルバでなかったらどうなっていたか、聞きしに勝る腕前ですね!」


「はあはあ……いや、さすが副隊長、もう少し善戦出来ると思っていたんですが……情けない限りです……」


「いえ、もしアンジさんが全盛期であればどうなっていたか!」


「素晴らしい組手でした! 皆! アンジさんにもう一度拍手を!」


「いやー、ははは……ん? どうしたテツ? なんだ? もしや今の組手見てビビっちゃったのかー?」


「違うよ、なんであんな動きの遅い人に一発も当てらんないのかなーって思って」


「はあ?! なに言ってんだテツ? 今の副隊長の動きのどこが遅いんだ? 刀なんて、なんとこさ受けれた位のスピードだぞ?」


「えー、そんな事ないよー、あの人もアンジもふざけてやってたんでしょ?」


「あのなぁ……」


「はっはっはっ! いやアンジさん、子供の目線と大人の目線、ましてや組手をしてる本人と見ている人間とでは、また見え方も感じ方も違うでしょう、どうだいテツくん、君も組手やってみるかい?」


「良いの?! やる!」


「いや、メダイ隊長!」


「大丈夫ですよ、ちゃんと怪我をさせないよう手加減させますから、ああは言っても所詮は大人と子供、少し戯れる程度で終わらせますよ」


「えええ……はあ……」

次回第14話【説教】

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