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 両手を合わせて皆に話す花穂。

「説明して下さ~い」

 皆がツッコミをいれる。

「しょうがないですね~。今日は皆さんお待ちかねの、格闘訓練をします」

「ん?今格闘訓練って言わなかったか?」

 俺は自分の耳を疑い、涼太に確かめた。

「何言ってんですか?そんな授業ある訳ないじゃないですか。しっかりしてくださいよ。まぁ100歩譲って、もし本当に格闘訓練なんかやったら、間違いなく男の俺達が、あの悪魔達に殺されますって」

「そ、そうだよな。俺の聞き間違いならいいんだ」

 安心安心。俺の聞き間違いみたいだった。確かに格闘訓練なんかやったら、確実に殺される。死人がでる授業なんて聞いた事がない…。あれ?そういえばさっき、俺は死んでいたような。

「ペアで戦ってもらいます。鈍った体を元に戻しましょう~」

 そうだよ。この世界は、いや、この教室は常識なんか存在しないんだ。変わり者が集まれば、パズルの様に綺麗に収まるなんて、そんなうまい話がある訳がない。変わり者が集まれば、そこはワンダーランドになってしまう。

「っていい訳ないでしょ!」

「そうだ!こんなの悪質な嫌がらせだ。格闘訓練どころか、ただ女子達のストレス発散道具に使われて、捨てられますよ」

 信二と歩が花穂に猛抗議する。

「えぇ~そうかな~。一晩中考えて、皆が楽しめる事にしたのにな~」

「花穂さん。フェアって言葉知ってますか?どう見てもアンフェアでしょ!ほら、涼太も言ってやれ!」

 黙っている涼太に信二が言う。

「いや、別に俺はどっちでも構いませんよ?」

「ちょっと待てーー!」

 信二と歩が、二人揃って涼太の発言にツッコミを入れる。

「何でお前はそんな落ち着いていられるんだよ?死ぬかも知れないんだぞ?」

「いやいや。俺の相手はルンルンなんで!!」

 涼太お得意の、自分が優位に立った時だけに見せる、強者が弱者に止めを刺す時に見せる笑みで信二と歩を見る涼太。

「コ、コノヤローーー」

「クソ、この裏切り者が」

「なんて言われようが結構。死んでいく君達の事なんて、すぐ忘れるので」

 涼太は手を二回叩き、花穂に話す。

「とっとと始めちゃいましょう。雑魚の小言なんて無視してさ」

 あいつーーーー。

 信二と歩は言い返す言葉がなかった。

「なら始めましょうーー。皆さん広がって下さ~い」

 皆花穂に言われた通りに、他のペアとの距離を開ける。涼太は信二と歩を見て、鼻で笑ってから、離れた。

 二人は途轍もない屈辱を味わった。しかし何も言い返す言葉がなく、ただその場で悔しがっていた。

「何であいつはルンルンと組めるんだよ。何で俺はこんな危ない奴と組むんだよ。ん?」

 信二は千夜の様子がおかしい事に気づく。

 千夜の奴どうしたんだ?さっきから薄気味悪い笑い方して。体調でも悪いんだろうか?

「千夜…お前…」

「やったやった。これで願いが叶う。やっと邪魔者が消える。これで殺しても事故で済む」

 それを聞いた信二は、体中から汗が滝の様に流れる。

「さっ!やりましょう!」

 物凄い楽しそうだ。俺ホントに死ぬと思う。

「まぁあれだ。所詮体育なんだから。もっと体の力を抜いた方が良いんじゃないかな?」

 信二は上司の機嫌をを取るサラリーマンの様に話す。

「そ、そうかしら。確かに信二の言う通り、楽しみで力んでいたかも知れないわ」

 千夜は、ジャンプをしたりして、体の力を抜く。

「ありがとう。これで本領を発揮できるわ」

「そ、それは良かった」

 俺のバカーー。何やってんだよ。相手の緊張ほぐしてどうするんだ。あいつ、ますます楽しそうにしてんじゃねーか!

「それでは~~」

 花穂が手を挙げ合図をする。それに合わせて、それぞれ戦闘態勢に入る。その戦闘態勢に疑問を持つ、人間が一人いた。涼太だ。涼太はルンルンの戦闘態勢を見て、疑問に思っていた。

 何だあの手を前に出す戦闘態勢は。見た事がないぞ?普通戦闘態勢って。

 歩は目の前にいるスズ。それに千夜や花穂、夏織を見る。その中に土下座をしている信二の姿があったが、それはスルーした。

 普通あんな感じの構えをするんじゃないのか?なんだその可愛い構えは。やっぱりルンルンも俺達と同じで戦闘タイプじゃないんだな。ルンルンと組めて心の底から良かったって思うよ。

「戦闘~開始!って言ったらスタートです」

 花穂は古いお約束を披露する。そんな事に引っかかる人間は居なかった。一人を除いて。

「あっ間違えちゃった」

手から放たれた謎の光の線が涼太の頬をかすめ血が流れる。その光は涼太のはるか後ろで爆破し すさまじい衝撃と音が辺りを包み込む。皆の視線は涼太とルンルンのペアだった。

「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」

 涼太の口が動きっぱなしだ。今何が起こった?花穂さんのいたずらがあってその後何が?

「やったー。引っかっかったー引っかっかったー」

ジャンプをしながら喜ぶ花穂。

「言ってる場合か!」

 そんな状況で花穂以外何が起こったのか理解出来ずに、固まる皆。

「いや~久々だから外しちゃいましたよ。やっぱり定期的に体は動かさないといけませんね。それにしても、私の攻撃怖がらずに動かなかった人初めて見ましたよ。涼太君はとても凄い凄い人ですね。それとも当たらないって思ってたから避けなかのですか?あれ?涼太君?」

 反応の無い涼太に駆け寄って、肩を掴み揺らすルンルン。

「ちょっとー起きてくださいよー。私に意地悪でもしてるんですかー?ねーてば」

「ルンルン。君って何者?」

 信二が皆の聞きたいであろう事を代表してルンルンに聞いた。

「あれ?言ってませんでしたっけ?私、とある異世界でソードウィザードと呼ばれていました」

「ソードウィザード?なんだそれ?」

「はい。私魔法使いなので」

 その発言に皆が驚く。まさか本当にファンタジーの世界があったなんて思いもしていなかったからだ。

「皆何してるんですか~?早く開始していいですよ~」

 まるで周りの事が見えてない花穂がスタートの合図をする。その合図と同時に戦闘は開始された。しかしそれを傍から見ていると、鬼ごっこにしか見えない。

「いーーーやーーーー来ないで来ないで!!」

「大丈夫大丈夫。すぐ楽にしてあげるから」

「大丈夫って言葉今すぐ辞書で引いてこい」

 千夜から死ぬ気で逃げる信二。千夜はそれを楽しそうに追いかける。

 それにしても、まさかあのルンルンがあんなモノを隠し持っていたなんて驚いたわ。あの子はてっきり私達とは別の人間だと思っていたけど、どうやら私達と同じ人種の様ね。見た目も可愛いし、お嬢様っぽくて気に食わなかったけど、あれを見せられると、仲良くなれそうだわ。


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