4話
この世界に俺は色々期待しすぎていたのかも知れない。恋愛したり、クラスの皆で何かに挑戦して達成したり。そんなキラキラした学園生活を送れると思っていた昔が懐かしい。
そもそも俺らの居るD組の校舎は、本校舎とは別で、本校舎の目の前にある山の中だ。確かに景色は良くて、夏も涼しい。けど、俺が思う学園生活とは程遠い。
女とも出会えないしな~。この教室にいるのは、ほとんどがゴリラだ。千夜はいつも俺らの事をゴミを見てるような顔で見てくるし。スズはそもそもあんまり話さないし。唯一話せるのは夏織くらいか。あ…そう言えばもう一人居たな~。俺らと気さくに話してくれる天使みたいな人が。まだ来てないみたいだけど。
「夏織。あの新人君はまだか~?」俺は近くに居た夏織に聞いた。
「新人君って呼び方やめなさいよね~。それにここに来たの、もう3か月前よ?もう新人でもなんでもないんだけど」
「そうだぞ信二。いつまであの子を新人呼ばりしてるんだ?」と歩が信二に言う。
「まったく人の名前も覚えられないんですか?ぷっぷ。伊藤先輩の脳みそは3KBぐらいしか無いって事ですね」涼太はにやけながら信二を見る。
「なんだとコラ!MBぐらいはあるわ!そう言うお前らだって覚えてんのか?」
「そりゃ~クラスメイトの名前くらい…なんだっけ?」
「お前も覚えてね~じゃねーか!」指を指しながらツッコむ信二。
歩は頭に手を置いて考える「あっ…思い出した!確か齊藤マコだった気がする」
「え?違くないですか?」と涼太が言う。
「どこが違うって言うんだよ」
「いやどこがって言われても。全部違いますよ。彼女の名前は栗原明美ですよ。フンッ。俺の方が頭いいですね」
「全員間違ってるからーーー」夏織が会話に割り込んでくる。
「彼女の名前はルンルン」
「どうした~?テンション高いな夏織は」
「きっといい事があったんだろう。お金を拾ったとか」
「そうそう来る時お金を拾って…じゃなくて!名前がルンルンなの!」
そう言い張る夏織を見て思った。そんな訳がない。ルンルン?そんなふざけた名前聞いた事がない。どんな世界観か。もしその名前が本当なら作者は楽しすぎだろう。
「おいおいそんな訳無いだろう?ルンルンなんて名前が存在する訳」
「私がどうかしました~?」
急に割り込んできた白き長い髪の女に俺達は悲鳴を上げた。俺は真相を確かめるべく恐る恐る聞いた。
「あの~ルンルンって?」俺の質問にその女は天使のような笑顔で、心地良くなるような声で言った。
「はい私が異世界から来ましたルンルンです」と。俺は続けて聞いた。
「その名前誰に付けてもらったの?まさか親な訳ないよね?きっといじめられて、そう呼ばれ続けたから、その名前が本当の名前だと思ってるんだよね?」
「いえ。ルンルンって名前は、お父様お母様が一生懸命考えて付けてくれた私の正真正銘の本名です」
それを聞いた俺は開いた口が閉じなかった。
「ね!言った通りでしょ?」夏織が顔を信二の肩の上に乗せて、にやけながら言う。
「何かあったんですか?」ルンルンが心配そうに聞く。
「ううん。信二達がルンルンって名前が本名って信じて無かったみたいだったからさ」
「なぁ~あんた。本当にルンルンって名前なのか?いまいち信用出来ないんだが」歩も会話に入ってくる。
「なるほど…私の世界では皆さんこんな感じの名前ばっかりだったので違和感無かったのですが、この世界だと変わった名前なのですね」
落ち込んで居る訳ではないがそう話すルンルンにすかさず夏織がフォロ―を入れる。
「いやいやそんな事無いよ。とっても可愛い名前だと思うよ。ほら信二。あんたも何か言いなさいよ」夏織は信二の耳元でそう言った。
「そういえばルンルンの世界はどんな世界だったの?」俺は話題を変える事にした。我ながらナイスフォロー。
「私の世界は争いの無い豊かな世界でしたよ。この世界と同じく春夏秋冬があって、とても素敵な世界でしたよ」
そう話すルンルンの顔が少し寂しそうに見えた俺はある事を聞いてみた。
「ルンルンは元の世界に帰りたいとか思うか?なんかルンルンが寂しそうに見えてさ」「え」「え」「え」どうしたものか。俺がルンルンに聞きたい事を聞いた途端周りから「え」と言う言葉が聞こえてくる。何か俺、変な事でも言ったのか?
「おいお前。本当に信二か?熱でもあるんじゃないか?」歩が心配そうに俺を見てくる。
「後で脳に異常が無いか確かめておきます」と言う涼太に夏織が「頼んだよ。でも無駄かも知れない。今日地球が終わるかも知れない」と言う。
そうか。そういう事か。
「お前らぶち殺すぞ。何だよ。俺が真面目な事言っちゃダメなのかよ」
「うんダメ」と教室中から帰ってきた。
俺は膝を着き泣いた。やっぱりこの世界は大っ嫌いだ。
「そうですね~。この世界に来たばっかりの時はいつも帰りたいって思っていましたが、今はもう思ってませんよ。この世界には皆さんが居ますし毎日楽しいです。だから寂しいなんて思いませんし、前の世界に帰りたいとも思いません。あの世界では、私は一人でしたから…」
俺達はこの世界に来て、一つ気付いていることがある。いやでも気付いてしまうものだ。この世界に来た俺らの共通点は、それは自分の世界に居た時は孤独だったという事だ。これが何の役に立つか分からないが、きっといつか俺らがこの世界に来た訳を知れた時に分かるのだろう。
「はーーい皆さん注目~」
声がいきなり聞こえて振り返ると俺らD組の担任が教卓の前に居た。
「出席取るんで席に着いて下さ~い」
この先生の名は、泉花穂。学級委員長の夏織の実の姉だ。一緒に異世界から飛ばされて来たらしい。正直二人が本当に血が繋がった兄弟なんて、とてもじゃないが信じられない。まずこの人の見た目は俺が見た中で一番の美人だと思う。高い身長に長く綺麗な髪の毛。見た目はパーフェクト。どんな生徒にも友達のように接し、生徒から大人気の先生だ。そういう性格だからこそ俺達は、先生を花穂さんと呼んでいる。ただ問題なのが…。
「では皆さんおやすみなさ~い」とお辞儀をする花穂。
「おねーちゃん、おはようでしょ」立ち上がりすぐさまツッコむ夏織。どちらが妹か分かったもんじゃない。
「おやすみなさーい」と言って歩と涼太が帰ろうとする。
「あんた達も真面目に!もうおねーちゃん。真面目にやってよ。普通そこ間違える人いないでしょ」
「めんめん」花穂は手を合わせて、笑顔で謝る。
「だから、ゴが足りないってー!」
朝から夏織のツッコミが連発してるな~。
花穂は出席名簿を広げ「さて」と言った。
「今から待ちに待った、出席確認をしまーす。泉夏織さ~ん」
「まぁ元気ですけど」とツッコミ疲れた顔をして机に肘を着きながら言った。
「後は皆元気~?」「元気で~す」と元気なさそうに答えた。
「はいじゃ~終わり」と出席名簿を閉じた。
この時何で私だけで終わりなの?というツッコミは心にしまった夏織だった。
「どうしたの~?みんな元気無いね~。何か良い事でもあったのかな?」
「それを言うなら、悪い事でしょ」そう夏織にツッコまれた花穂はキョト~ンとした顔をした。
「なに言ってるか分からない顔しなーい!まったくもうおねーちゃんは」
「夏織。あの人は昔からあんな感じなのか?」興味本位で聞く事にした。
「うん。もう産まれた時かららしい。二本の足で歩くよりも先に、二本の手で歩いてたらしいし。抜けてるなんて次元じゃないよ。おねーちゃんは」
「そこまでいくと、頭の中検査したくなるよな~。涼太、お前と俺で脳検査出来る機械作らね~か?」一つ後ろの席の涼太に聞いた歩」
「それは意味無いと思いますよ。あの人の頭の中を見ても、たぶん何も無い真っ白だと思いますよ」