3話
「フン!無駄なモノか」信二は手を地面に着けながら、暗い声で言った。
「「まだ俺らは負けてない。勝負ってのは、諦めるまでは絶対に負けない。そうだろ?お前ら」その言葉に二人は「信二」「伊藤先輩」と言った。
信二は涙を拭い、立ち上がり言った。「涼太、あれを使え」と。
「あれって…。まさかあれを使うんですか?」
「それ以外にあるかー?」と言われた涼太は、早速パソコンをいじり準備に入った。
「おいおい。二人で何盛り上がってるんだ?あれってなんだよ?」話についていけない歩が信二に聞く。
信二は腕を組み、自信満々の顔で答える。
「俺が考案したプログラム。ゴッドアイ!とでも言っておこう」
「ゴッドアイ。すまん中二臭くてまったく分からん」と歩が言う。
「ゴッドアイとは、すなわち神の目。あのドローンで撮影した映像を元に、今後の動きを予測して画面に映す事が出来るプログラムだ!」俺は何て素晴らしいいプログラムを作ってしまったのだろう。まぁプログラムを作ったのは涼太なのだが、部下の成功はリーダの手柄。部下の失敗は部下の責任。俺はこの言葉が大好きだ。
「すいませーん。いまいち理解できませーん。もう少し分かりやすくお願いします」
まったくこれだからバカの相手をするのを大変だぜ。まぁ天才の言葉を凡人が理解出来る訳無いか。仕方ない、この俺が凡人語に変換して答えてやろう。
「つまり…」分からね~~。そう言えばどういう理屈で、どういう事が出来るのか聞いてなかった~。まぁ~聞いたところで理解できないだろうから関係ないだろうけど。でもこのままではリーダーの立場がー。
「これは俺の言う事では無いな。作った本人に聞くのが早いだろう。涼太答えてやれ」
「ぷっぷっぷ。信二。お前詳しい事理解してねーんじゃねーの?」
「てめー。よくも俺のタブーを言ってくれたなボケが。シバキまわすぞボケが」
「なんだとこの脳無しが。お前がリーダーやれるのは俺達のおかげだって事を忘れんなよ
宇宙規模のバカが」二人は互いに胸ぐらを掴み、頭をぶつけながら、悪口を言い合う。
その喧嘩を他所に涼太は説明を始める。
「ゴッドアイはドローンで撮影した、メス〇…クソ女の」
「おい今、あいつメス〇って言わなかったか?」
「あぁ~確かに言った。その後言い直したが、まるで直せてないな」信二と歩は口に手を当てながら、涼太に聞こえない声で話した。
そんな事を知りもしない涼太は説明を続ける。「映像から性格、表情や体。また動きなどなどの情報を使って、次にどんな動きをするか予想して、それを映像にするプログラムです」
「おぉーう。凄いやつやん」信二と歩は二人揃って言ってしまった。
「ゴッドアイを使えば、例え今の教室の映像が撮れなくても、今の教室の映像が見る事が出来ます」
「でもそれって、所詮ゴッドアイが今後の動きを予想してつくりあげた偽物の映像なんだろ?」歩が涼太聞く。
確かに歩の言う通り偽の映像だ。そう考えると、何か冷めるな。
「いえ。偽の映像なんかじゃありませんよ?」
「どうゆう事だ。もっと分かりやすく言えよ後輩」「そうだぞ後輩」信二と歩が涼太に詰め寄る。
「ゴッドアイは予測可能範囲が100%なんですよ。つまり今起きている事と、ゴッドアイで作られた映像は100%一致なんです」
「ほーうなるほどなるほど。で後どのくらいで見れるんだ?」信二は顎に手を当てて言う。
「そうですね。後20秒程で」
「そうか。まったく出来た後輩で頼もしいな~。そういえば後でそのデータくれよ」と言う歩
「おいちょっと待て。そのデータは俺が貰う予定だ」とすぐさま反論する信二。
こんな変態に渡したら何に使うか分かったもんじゃない。ここは何としても、紳士な俺が貰う。
「おいおいお前なんかに渡して何の意味がある。それこそ猫に小判だ。こっちに渡せ。それは今後の研究材料として使う」と歩が涼太に手のひらを上に向けて言う。
「猫に小判だって?まったく、お前にはガッカリだよ歩君。この映像は小判なんかよりずっと価値があるモノだ。その価値はダイヤの原石といい勝負になるだろう。もしこの映像が世に出れば世界の経済を大きく変えてしまうだろう。そんな危険なモノお前なんかに渡したら大変な事になってしまうだろう。ここは俺が持っとくのが一番安全だろう。って事だ涼太。それを俺に渡してくれ」
二人は涼太の方へ手を出した。
「いや。どっちにも渡さないですよ?」え?と言う表情をしながら言った涼太に対して二人も「へ?」と言う。
「いやいや当たり前じゃないですか。なに勝手に話進めているんですか。そもそもこれ作ったの俺ですし。なんで二人にあげなきゃならないんですか?それにこの映像、Blu-rayに落として、大量生産して売るつもりなんで。残念ですけど諦めて下さい」涼太は目を大きく見開いて、不気味な笑顔を浮かべながら、勝者のような顔をして二人を見下す。
あのクズが~。年上に向かって何つー態度だ。まったく出来の悪い後輩だぜ。
「甘いなお前らは」と不気味な笑みを浮かべながら話す歩。
「甘いのはお前の考えだろう!」「そうですよ。先輩のくせに生意気なんですよ。あんま調子乗ってるとシバキますよ?」と信二と涼太からツッコミをもらう歩だったが、その言葉を無視して話を進めた。
「実は俺は秘かに進めているプロジェクトがあってな。そのプロジェクトの名は、人類アンドロイド計画だ」
「人類アンドロイド計画?なんかお前って実は中二病だよな」と信二が一言。
「知らない人間は、知っている人間をそう呼びものだ。知っているか?世の中には二種類の人間がいる。知らない人間と知っていた人間だ」そう自信満々に話す歩に二人は憐みの目を向けた。
「そのデータが手に入れば、D組の生徒のアンドロイドを作ることが出来る。アンドロイドと聞けば機械っぽい感じがするが、俺が作るアンドロイドは感触はもちろん、表情などもコピーし、本物の人間と見分けがつかないレベルだ。どうだ?渡す気になったか?」
「仰せの通りに」信二と涼太はそう言って、映像を歩に渡す事に決めた。
「もう完成したみたいですね」涼太はそう言って画面を切り替えた。
「おぉ~ついにか。どれどれ」三人は画面を覗き込んだ。
ついにこの瞬間が来た。実に長かった。俺はこの世界に来て、ロクな事に巻き込まれず、この世界が嫌いだった。だが、やっと好きになれそうだ。俺は夢と希望を持って、ゴッドアイが作り上げた、映像を見た。
「あれ?教室は映っているけれど、肝心な女子達が居なぞ?おいおいホントにこれ、しっかり機能してんのか?」ここまで来て、見れないなんて御免だぜ?
「壊れるなんて事は…女子達の居る画面に切り替えますね」涼太は画面を切り替えた。するとそこには、屋上が映っていて、俺達がパソコンを見ている映像が流れている。しかもなんでだろうか。俺らが女達に囲まれている。俺らは恐る恐る顔を上げた。するとそこには4匹の鬼が居た。
「あんた達、覚悟さなさい」夏織が指をポキポキ音を鳴らしながら近づいてくる。
「遺言書かせる暇すら与えないわよ?出来るだけ苦しむように殺してあ~げる」千夜が短刀を持ちながら言う。
「ひえぇ~~~~~」三人は固まって悲鳴を上げる。しかし、そんな悲鳴を聞かずに、男達をボコボコにして、屋上から投げ捨てたのだった。
次の日三人は頭などに包帯を巻きながら登校してきた。
「まったく昨日はひどい目にあったぜ。ゴッドアイがもう少し早ければこんな事には」
「俺の作ったモノに文句があるんですか?ほとんど役に立たなかったくせに」涼太は信二を憐みの目を向けて言う。
「なんだとコラ。お前のその髪全部刈り取るぞ」
二人はにらみ合い、間で火花が散る。
「おはよう~」歩が教室に入ってきて、夏織が「おはよう」と返事をする。
「どうした?朝から喧嘩か?」
「そうなんですよ。このゴミが色々うるさくて」「誰がゴミだ!」
「おーい誰か塵取り持って来てくれ」
このゴミども、いつか必ず殺してやる。
「少しは反省した?」夏織の質問に「反省しました~」と答えた三人だった。