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「確かに!完成度高いコスプレだな~」

 ルンルンは楽しそうに杖を上に一振りした。

 すると、床から光の玉で形成された大きなクジラが高く跳ねた。クジラは天井に到達すると落ち、床に消えていった。まるで床が海の様に水しぶきを上げた。これには拍手と歓声が起きた。魔法とは思う人はいなかったが、ARを使ったマジックだと思っていた。

ルンルンを頭を下げた後、スズの隣に座った。

「ひょっとしてD組って凄い楽しいクラスなんじゃないかしら」

「俺もD組に行きたくなって来た」

 D組が問題児で作られたクラスだって事は、全員忘れていた。

「でもD組って男がヤバいんでしょ?覗きとか色々問題起こしてるらしいよ?」

「そうなのか。クソ~女の子は可愛いのにな~」

「お待たせしました」

 颯爽に表れたのは男達だった。

 さっきまで覗きとか言っていた記憶が全て吹き飛び、目がハートになる。

「キャーーーーーーー!」

 女子の悲鳴が体育館に響き渡る。

「あの顔なら、ジョニーさんの所にいるよね!」

「うんうんうん!後でなんてグループか聞かないと」

 男達は爽やかな笑顔のままD組の所に、何事もないかの様に座った。

 え?誰?

 それがD組の女子生徒の頭の中だった。

「あの~誰ですか?ここ。D組ですよ?」

 夏織が話しかける。

「何を言ってるんだベイビー達。ここは僕の席であり。生まれた前からの僕の定位置は…君の隣さ」

 信二号は夏織の手を握り言った。

「何言ってるんですか?貴方なんか知りませんけど」

「ここは合わせろよゴリラ。俺が振られたみたいになってんだろ」

 それは聞いて、3人の正体が分かった一同。

「ね~?何でこんなバカな事やってるの。ね~?」

「いや、ちょっと待って下さい夏織様」

 夏織は信二号の指を掴み、折ろうとしていた。

「俺達の話も聞いてくれ」

 歩がD組の生徒に事情を説明した。

「それなら仕方ないか。D組の評判下がるのは嫌だし。でもバカな事はしないでよね!」

「任せてくれ!」

 信二はグットラックをし、ウィンクをした。

 しかしそんな事を信二が守る訳がなかった。

 今回の全校集会の目的はクラススローガンの発表だった。順番に代表者が発表していき、最後のD組まで来た。信二号は台に上った。

「キャーーーーーーーーー」

 それだけで歓声が響く。

「俺の女達。俺の時間へようこそ」

「キャーーーーーーーー」

 信二号の一挙一動のいちいち歓声が上がる。そしてニヤケル信二号。そんな姿を見て、何故だかD組の女子達はイライラしていた。

「俺達D組のスローガンは、王の裁きを受けるが良い一般生徒達よ。わははははは!です」

 信二号は両手を前に伸ばして訴え掛ける様に話した。その心は女子生徒を虜にした。

「ねー何でかしら。なんかムカムカしてくるんだけど」

「それはうちも同じなんだけど」

 その場で足組をして、イライラを抑えるD組の女子生徒だった。

 全校集会が終わり、D組の校舎まで戻って来た一同。最初に行われたのは説教だった。

「いい?今後こんな事しないでちゃんと出なさいよね!」

「はーい」

 正座をさせられて、反省する男達だった。

「でもそんな格好で、なんでうち達の前には出られたの?」

 スズに言われた信二達が答える。

「そりゃだって。お前達の前で隠し事なんかする必要ないだろ?」

「そ、そうなんだ。まぁ行くよ!次は体育だからね」

「なんだあいつ」

 夏織は照れ隠しに走って校庭に行った。

 体育祭まで時間は着々と近付いていった。

 そして前日にD組のユニホームが完成した。

「何とか完成したな」

「そうだな。それなりにいい物が仕上がったんじゃねーか?」

 そんな会話を放課後にしていると、夏織がやって来た。

「完成したの~?見せて見せて」

「見せる訳ねーだろ。それは当日のお楽しみだ」

「そんな~。ならこっちの横断幕も当日のお楽しみだね。まぁどっちにしろ、もう本校舎の係の人に渡したから、もう手元にはないけどね。お互い当日のお楽しみって事で」

「そうだな。もう明日だもんな」

 体育祭までの準備期間、色んな事があったけど過ぎるのが早く感じる。きっとそれなりに楽しめたって事かな。

「まだ残ってたの?もう帰るわよ」

 そこに来たのは千夜だった。

「あぁ~。もう用が済んだから帰るとこだ」

「そう」

 俺達はアパートまで一緒に帰る事になった。

「このメンバーでこうして話すなんて久しぶりね」

 千夜が珍しくそんな事を言った。なんの風の吹き回しか?

「確かにそうだよな。最初はこの4人だったからな」

「それが今となってはクラスにまで増えて、あの時には考えられなかったよね。この世界がこんなに楽しいなんて」

 夏織の言う通り、俺も、うざいが仲間が増えて楽しいと思った事は認めよう。

「ああ。楽しいし。おまけにこんなに綺麗だ」

 俺達は足を止めた。

 山から見る夕日が美し過ぎたのだ。夕日が街を照らし、活気付いているのが分かる。この街に何人住んでいるのかは分からないけど。それでもこの街は、この世界はこんなにも美しい。

「ここから見る景色は絶景だな~」

「それも何一つ変わらないからな。俺達もこんな風にいつまでも一緒に居れたらいいよな」

「そうだね」

 歩の話に夏織が同感した。

「俺はこの世界に来れて良かったと思う。そりゃ~最初はこんな世界嫌だったけどさ。こんなに綺麗な街があって、お前らがいて。これ以上求めるのが野暮ってもんだ」

「なんだ。珍しく素直じゃねーか」

歩がにやけながら、チャチャを入れる。

「笑いたきゃ笑えよ。俺はこのクソみたいな世界が好きだ」

「否定はしないがな」

「私も好き!」

「わ、私も」

きっと俺達が見ている世界なんて極一部なんじゃないかと思う。世界なんて関係ない。場所なんて関係ない。そこに居る人間で、その場所の価値が変わる。俺はこれからもこの街の為に動けたらいいと思う。

 翌朝。俺は焦った。集合時間を過ぎ、既に開会式が始まっている時間だったのだ。

「ち、遅刻だーーーーーーーー!」

 俺は慌てて準備し、家を出た。

「あっ」


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