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「了解。ではこれより、体育祭実行委員を決めようと思う」

 信二は教卓を両手で叩いた。

「なんであんなに気合い入ってるの?」

「普通は体育祭って気合が入るモノじゃないのかな?うちは体育祭なんてやった事ないから分からないけど。この世界では大きなイベントらしい」 

「それはそうだけどさ~。またバカな事考えているんじゃ…」

 納得のいかない夏織だった。

「え~実行委員は男と女一名ずつの二人です。男は俺と言う事で決まっているが…。女でやりたい人~」

「実行委員やる訳ないじゃん」  

 夏織は肘を机に着きながら、そんな言葉を言った。

 誰も手を挙げないなか、一人。ピンと手を伸ばす物が一人いた。

「千夜?あなた…。なんで手を挙げているの?」

 千夜は夏織の疑問を無視して手を挙げ続けた。

「千夜以外にいないか~?なら千夜と言う事で」

 涼太は、パソコンに実行委員…伊藤信二。飯村千夜と名前を書き込んだ。

「千夜。こっちに来てくれ」

「はい」

 信二に呼ばれた千夜が返事をして教卓へ向かう。この状況には全員が驚いた。

 千夜が返事?どうしたの千夜?何か悪い薬でも飲んだんじゃ…。

「これは雨どころか、隕石でも降って来るんじゃ?」

「そ、そうだよね。あの千夜何かおかしいよね。どうしたんだろう」

 信二は千夜に書類を見せて、鉛筆を持たせた。

「実行委員になるにあたって、この書類にサインを」

「はい」

 千夜はその書類の内容を見る。

「ちょっと何にサインさせようとしているのーーー」

 千夜は既に名前を書こうとしていた。

「千夜もよく分からないのにサインしな~い!」

「おいおい。部外者は引っ込んでくれるかな?」

「一応このクラスのリーダーだから。リーダー権限で、その契約を教えなさい」

 夏織は声を荒げて言った。

「仕方ない。歩。読み上げてくれ」

「了解。第1条実行委員として協力し、男子実行委員に従う事。第2条実行委員として体育祭に参加する事。第3条女子の中でも最高権力者となり、女子の話をまとめ上に報告する事。以上だ」

「ちょっと待って!!!あんた達そんな契約を千夜に結ばせようとしてたの?」

「そうだ。これが実行委員会の契約だ」

「そんなの誰が結ぶって言うのよ」

 夏織は熱くなり、立って会話していた。

「お前は関係ない。この契約を飲むかどうかは千夜だ。さ~千夜。どうする?」

 千夜は迷う事無く、サインを書き終えた。

「早すぎるんですけどーーーー!」

 信二はにやりと笑って言った。

「契約完了」 

 言ってて思ったがこんな契約を千夜に結ばせるなんて。信二。お前は何をやったんだ?

 さすが伊藤先輩です。こんな私欲まみれた契約を結ばせるなんて。政治家ですか?

 歩と涼太は改めて、信二のカリスマ性に驚いた。

「実行委員も決まった事だしこれからは俺と千夜が進行しよう。歩は席に戻っていいぞ?涼太はそのまま書記を続けてくれ」

 信二は仕切り直して、話を始めた。

「今日決めたい事は二つある。まず、くらすスローガンを決めたい。そこで男子と女子に分かれて、それぞれ話し合って二つの案に絞ろう」

 言われた通りに男女で別れ話合いを始めた。

 まずは女子チーム。まずは千夜の事情聴取が始まった。

「どうしたの千夜?あんな人達の言う事を聞くなんて」

「そうですよ。いつもの千夜さんなら。何?殺すわよ?っていつも言ってたじゃないですか」

 ルンルンの迫真の物真似があまりのも似ていて、一気に笑いを取る。

「似すぎ!!どうしてそんなに上手いの!!」

「ププププププ」

 その時、初めてスズの笑った顔を見たのだった。

「スズ。貴女って笑えるのね?」

「そうですね。初めて見ました」

 そう言われたスズは一瞬で顔をいつもの無表情に戻した。

「うちはいつも笑ってるし楽しんでる。ただ顔に出ないだけ」

「じゃ~今のは死ぬレベルの笑いだったのね?」

「そうだね」

 と言いながら鼻血が出てくるスズ。

「鼻血鼻血。テッシュとか持ってないの?」

 鼻を抑えながら、こくりと頷くスズ。

「テッシュ位、女なら持ってきなさいよね~」

「テッシュなら男の方が持ってるんじゃないの?」

「何で?」

 と不思議そうに聞く夏織。その質問にスズがそのまま答える。ボイス全てピーーーーになるような言葉を連発した。

「あーーーーーあわわわわわわわ」

 夏織とルンルンは顔を真っ赤にした。

「ちょ、何言ってるのスズ!!!」

「そうですよ!いきなりびっくりしたじゃないですか」

「うちは理由を聞かれたから答えただけだよ?」

「そうなのかも知れないけど、レディーならもっと慎みをもってさ~」

 夏織は困った感じに言った。

「何々テッシュがどうしたの~」

「もっとめんどくさいの来たーーーー!」

 花穂が来たのだ。これは夏織にとって最悪の出来事だ。

「なぜ男がテッシュを愛用しているのかを論議してたのです」

「論議してないからーーーー!!!」

 と大声を上げて、両手を振りまくり話を逸らそうとする夏織。しかし花穂には通じなかった。

「そうですね~。これは教えるのも教師の務めですね」

 花穂はそこから、スズの言った事とはレベルの違う事を言い出した。分かり易く言えば、スズが顔面モザイクだったら、花穂は全身モザイクだ。

 その破壊力に夏織とルンルンはノックアウトした。

「あれ~?気絶しちゃいましたね~。何か間違っていましたかね~?」

 首を傾げて悩む花穂。

「何も間違ってませんよ?花穂さんは全て正しいです」

 千夜はすかさずフォローした。千夜にとって花穂は全てであり絶対なのだ。

「二人とも起きて。スローガンを決めないと」

 千夜は二人の体をさすり、起こした。

「あれ?私今まで何してた?確かスローガンを決めようとして…。何か凄い事を言われた気がする」

「と言う夢を見たんだよ」

 スズは二人の記憶からさっきの出来事を削除した。

「まぁスローガンを決めましょう」

 夏織が仕切り、意見を求める。

「ん~雑草魂とか使う学校は多いらしいですよ?」

 ルンルンは体育祭というモノを知らなかった。だから勉強して、今や色んな学校の事情まで知っているのだ。


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