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「それはそうなんだけどさ。ってそんな事よりそっちは片付いたのか?」

「大方片付いたと思うけど…もういなかったよね?」

 夏織に聞かれた千夜が木に寄り掛りながら答えた。

「もういなかったわ。これで全滅したんじゃないかしら?」

「そう。ならこれで完全解決。帰って美味しい物でも食べようかな」

 のん気な事を言うスズ。

 ちょっと待てそれはフラグって奴では?

「露骨なフラグ草。そんな事ある訳ないじゃないですか」

 涼太は笑いながら言った。自分がフラグを完成させていることも知らずに。

「お前もやめろ!」

 その直後、凄まじい地鳴りが起き、俺達は近くの木に掴まって耐えた。

「ホラ!こんな事になっただろ!どうしてくれるんだーー!」

 その地鳴りの原因はすぐに分かった。

「ちょっと何あれ」

 地面を突き破って出て来たのは、それはそれは巨大なあやかしだった。

「おいあれどうやって倒すんだよ。無理だろ。だからフラグ発言はやめろって言ったんだよ」

「それなら勝てるフラグを言えばいいんだよ。ルンルン何か言ってあげたら?」

 スズに言われたルンルンが、顎に手を当て考える。

「ん~~。必ず帰るから…とかですか?」

 それ死亡フラグ。その場にいた全員が思った。

 でかいあやかしは、タコみたいに足が何本もあってゆらゆらしている。その足の一本が俺達目掛けて、落ちて来た。

「おいーーーーーーーー」

 俺達は走って逃げる。逃げれないと分かっていても逃げなければならない。男には無理だと分かっていてもやらなければならない事があると聞いたが。まさに今、その時だと俺は思った。

「おいどうすんだ信二。このままだと皆やられ」

 そこまで言った歩は足に掴まって連れてかれた。

「「い、伊藤先輩。マジでヤバくなって」

 涼太まで足に掴まってしまった。

「なんだあれ?口か!」

 あやかしは大きな口を開け、二人を食べようとした。

「お前ら逃げろーーーー!」

 俺は二人に向けて叫んだ。しかしその言葉は二人には届かなかった。

「俺を食べても不味いぞ!食べるならあっちだ」

「何言ってんですか!あっちの方が美味いに決まってますよ!ホラ、ケチャップ掛かってるし」

 と言いながら涼太は歩にケチャップを全部飛ばした。

「おい何すんだ!ん?」

 歩は気付いた。あやかしがケチャップの掛かった自分をよだれを垂らしながら見ている事に。

「ちょっと待ってね。この赤いの辛いから。食べても美味しくないから」

「クスクス。美味しく食べられて下さい」

「ブチューーーー」

 歩は効果音を出しながら、マヨネーズを涼太に掛けた。

「え?」

 その言葉を最後に二人は同時に口の中に入れられ、飲み込まれた。

「結局食われてんじゃねーか!」

「ねー信二ホントに助けねければならないの?正直どうでも良くなってきたんだけど。

「あ~俺もそう思ってた」

「どうするの?信二」

 千夜が俺に聞いてきた。なんでこうも大変な時に俺を頼るんだ。あ、主人公だからか。しょうがないな。

 俺はやる気が100上がった。

 あいつはすぐ再生する。いっきに決めないとダメだ。けど俺らの中に、そんな事出来る奴なんて…。いるじゃないか…。転校生が。

 俺達は走りながら作戦を伝えた。

「ルンルン!バラバラに散った物をさらにバラバラにする事は出来るか?」

「あ、はい一応出来ます。魔力も十分あるので」

「よし、夏織!お前はまだ元気か!」

「もちろん。それだけが取り柄だから」

 よし。ならこの作戦は上手くいくぞ。

「お前ら配置に付いたか?」

 その言葉に全員が返事をした。

 確かにこれは地球レベルの危機だな。けど食事に夢中な今なら。

「おーーーーい!!!こっち見ろよ!美味しそうだろ!!」

 信二は上半身を脱ぎ、ケチャップとマヨネーズを塗った。それはお好み焼きの様にいい色のケチャネーズになった。

「普通に美味しそうなんだけど」

 隣にいるスズがそんな事を言った。一方、千夜と夏織はあやかしの方角に走って行った。「ホントにあの男は無理するわね」

「それは昔からだよ。しかもバカだし」

「そうね。自分を餌にするなんてバカじゃないと務まらないわ」

 夏織と千夜はそんな会話をしながら走っていた。

 今思い付いた作戦だが、中々いい出来だろう。あの足が全て、千夜と夏織に向くのはさすがにヤバい。だから俺が囮になって少しでも、足をこっちに使ってもらう。そして俺に飛んで来た足は。

「バン。バンバンバンバン」

 スズが足を撃ち、弾き返す。

 また夏織の方に行った足は、千夜に切り刻んでもらってどうにか夏織にあやかしの所まで行ってもらう。

 夏織と千夜は、信二の方へ飛んで行った足に飛び乗り、本体を目指す。

「あと少し。あと少し」

 口ずさみながら走る夏織。その時、夏織達が乗っている足に沿うような形で正面から足が飛んで来た。

 千夜はそれを抑えて止めた。

「乗って!!」

 夏織は走った勢いのまま、千夜の肩をジャンプ台にしてあやかしの本体の方へ飛び、さらにあやかしの頭を踏み台にして、真上に飛んだ。危機を感じたあやかしは、全ての足を夏織の方へ持っていく。しかしもう既に遅し。

 頭と足を軸にして、3回転して力を溜めた。

「これで終わり」

 夏織の姉譲りの、強烈なパンチがあやかしを粉々にする。

 あやかしの破片が宇宙にたくさん舞う。千夜や歩。夏織と涼太は魔法でその場から離される。

「今こそ集え光達。闇を振り払い、その力を持って悪を成敗せよ!ソーラーショット!」

 ルンルンはそう言いながら手を挙げた。すると天高くから大量の光の矢が降ってくる。それはバラバラになったあやかしをさらに細かくする。からの大爆発で、あやかしは完全に消滅した。

「これで終わったな。早く帰って風呂に入りたい気分だ」

「それは俺のセリフだ信二」

「そうですよ。俺達なんて、あの気持ち悪い奴の中に居たんですよ?」

 確かにこいつらの体からは変な臭いがする。

「とにかく皆無事で良かったよ」

 夏織が安堵したように話す。

「少なくとも俺達は無事じゃないんだけどな」

 歩が悲しそうに言った。

「そういえばルンルンは?」


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