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らな」

「おいそれってどういう事だ」

 こいつらにとって、俺はどんな風に見えてるのだろうか。

「まぁとにかく、これを使えばここから脱出出来る」

 歩は俺に似せた人形のお尻にあるスイッチを押した。

「なんでそんな所にスイッチあるの~」

「お前にとことん似せているからな~。こっちのサイズまで正確だ」

 歩はその人形のズボンを下した。

「見せんじゃねー!それに気持ち悪いんだよ。ほら、涼太だってあまりの気持悪さに吐いてるぞ」

 あれ?でもこれは物凄く複雑な気分だ。俺の体を見て吐いているのは、それはそれでムカつくぜ。

 スイッチを押された人形は宙を浮き始め、校門の方へ向かった。見た感じ校門から空気を出して飛んでいるようだ。まったくこいつのセンスはやっぱりおかしい。才能の使い所を間違っている。

 ゆらゆら飛んで行く、信二号を見て涼太は心配そうに言った。

「本当に伊藤先輩なんかで止められるんですか?俺には銃弾の雨を防げる人間には見えないんですけど」

「う~ん。理論的には大丈夫だと思うのだが、なんせ信二だからな~」

「っすね」

 こいつらは何を言っているんだ?」

「何で俺の写真がネックになってんだよ。写真一枚で何が変わるんだよ。そんなに言うならお前らのモデルで作れよ」

「それは断る」

 二人は即答した。なんの迷いもなく、言い切った。

 その時だった。何かの機械が動く音がし、信二号が赤いレーザーに包まれた。一切隙間なく、信二号はこれからの惨劇を語るかのように、真っ赤に染まった。

「目標ポイントだ。銃撃が始まるぜ」

 サイレンサーを付けた、静かな銃弾が信二号を襲った。その瞬間だった。俺の体に銃で撃たれたような激痛が走ったのだ。

「痛い痛い痛い。どうなってんだこれ。あーーーー痛てーよ!」

 俺は立つ事も出来なくなり、床に顔を着けた。

「あぁ~言い忘れた。あの人形を壊されない為に考えたんだが、人形の受けた衝撃をモデルの人間に流す事で、人形を壊されずに守り通す事が出来るんだ」

「さすが佐藤先輩。やっぱり持ってるモノが違いますね」

「あぁーーーーーーー痛い痛い痛てーーー」

「まぁ時間なかったから、この機械にはネックがあってさ」

「それは何ですか?」

「ずばりデザインだ」

「あぁ~なるほど。確かにかっこ悪いですもんね」

 ネックは…今お前らの後ろにあんだろうが。舐めてんじゃねーぞ殺すぞ。

 涼太は信二号が撃たれ続けている状況を見て歩に話した。

「まだ銃弾あるんですね。てっきりすぐ終わるのかと思ってました」

「奴らもバカじゃないって事だろ。ここは気長に待とうぜ」

「そうですね。今お茶でも持ってきますよ」

 涼太はお茶を入れて戻って来た。二人はお茶を飲みながら、マダムの優雅な食事の様に会話を楽しんだ。信二の叫び声は二人にとって空気と何一つ変わらなかった。生まれた時から存在して、あって当たり前のモノでしかなかった。

 10分位して銃弾は止み、信二号はゆっくり地に落ちて行った。

「さて雨も止んだ事ですし行きますか。このパラシュートで安全になった空から脱出しましょう」

 涼太は歩の作ったパラシュートを背中に背負い言った。

「そうだな。だがその前にやる事があるだろ?」

 そう言われた涼太が首を傾げる。

「合唱だろ?」

「あぁ~なるほど。確かにそういうのはしっかりやらないとですね」

「俺らが助かるのは、代わりに誰かが犠牲になってくれたおかげだからな。犠牲になる人数は変えられないもんさ」

 二人は手を合わせ、地に落ちて行った信二号に合唱した。

「さて行くか」

「そうですね長居は不要です」

 二人は窓枠に足を掛けた。

「ガァーーーーーーー。オマエドコイク?」

 そこに居た信二はもう人と呼べるようなモノでは無かった。目の中は光を吸い込んでしまいそうな純黒となり、言葉もカタコトだ。誰かを恨んでいるのか体からは黒いオーラが出ていた。

「おい急ぐぞ」

 歩と涼太は慌てて窓から飛び立った。肩の所に付いている紐を引っ張り、パラシュートを展開した。

「ふ~。何とかあの悪夢から逃げられましたね」

「まったくだ。一時はどうなる事かと思ったぞ」

「そうですね。このまま学校の外に出られれば。ところで一つ気になった事があっるんですが…。俺ら、沈んでません?」

 そう言われた歩が周りを見る。確かに沈んでいると気付く。

「ま、まぁ~パラシュートっていうのは落ちて行くものですもんね?」

 涼太が心配をしながら歩に聞く。

「そ、そうだな。飛んでいるんじゃなくて、カッコ良く落ちてるだけだもんな。このパラシュートが一人の体重しかカバー出来ないのは関係ないもんな…」

 二人は恐る恐る足元を見た。何故ならそこに違和感があったからだ。そして違和感は確信に変わった。

 二人の足に悪魔が掴まっていたのだ。

「オマエタチ、ドコイク。イッショニ、チノハテマデランデブーシロ」

 それを聞いた二人は血の気が立つ。

「蹴り落とせ!」

 二人は悪魔の手を蹴り、引き離そうとした。しかし悪魔は一向に離さない。あの痛みを食らった悪魔にとって、人間の蹴りは、何も感じないのだ。

「全く落ちないですね。このままだと俺達諸共地獄行きですよ」

「俺はとんでもないモノを作ってしまったのかも知れないな」

「ここでそのセリフ吐くな!!もっといい所で言ってください!って言ってる暇も、あぁーーーーー!」

 三人は学校の外に出る事なく、地に足を着けてしまった。凄まじい爆発音がその夜、山を越えて町まで響き渡ったそうです。

 翌日二人はすぐさま花穂に呼ばれた。三人は土下座をし、訳を話した。

「なるほどなるほど。ならしょうがないですね」

「花穂さん」

 その天真爛漫かつ色々と分かってくれる花穂に三人は涙した。

「ってそんなんで良い訳ないでしょ!」

 夏織は花穂の代わりに説教を始めた。

「あんた達、何でどう脱出するかを楽しんでるのよ。何で宿題を完成させるって発想が無いのよ」

「そんな事言ったって、あれを仕掛けたのはお前らだろ?」

「そうだ!言わば俺らは被害者だ」

「うるさーい1まぁあなた達の意見も分かったわ。で宿題はやったの?」

 その質問に三人は同時に答えた。

「やったけど燃えて無くなりました」

「そんな良い訳が通ると思っているのーーー!」

 夏織はホウキで三人をボコボコにした。

「全くあのバカは」


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