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12巨大生物

(第4章 開発)

12 巨大生物


1.新住居

 青葉台周囲の柵は強化されて、高さ10㍍の白い城壁になった。その上に、透明なドーム状の構造物が載せられていた。丘の上全体を包み込む、超巨大ドームが完成したのだ。

 ドーム内を見てみると、丘の南東部に不時着している重巡青葉は巨大な白い蒲鉾型の建物に包まれて、今はその姿が見えなくなっていた。

 丘の中心部には、下が緑で上が透明の中型ドームが建設されている。その中には司令部の建物を中心に、幾つもの施設が建設されていた。そして乗組員の新住宅も完成した。

 重巡青葉の乗組員は全員船を降りて、この緑のドームに移り住んだ。船には保安要員が交代で駐在するだけになった。

 新住居は四角い形状の二階建て戸建てだ。遠隔操作も可能なオール電化住宅で、電力は全て自給できる。ライフラインは上下水道だけだ。一戸当たりの床面積はかなり広いものになった。艦内居住区の狭い船室とは全く比較にならない。入居者は充実した日々を送れそうだ。


 小人たちと同居する者も単身住まいの者と同じ扱いだが、この専有面積ならば十分だ。因みに、この頃になると小人との同居は原則6人までに制限されていた。

 なお近日中に各住戸に1台ずつ、家事用アンドロイドが配付される予定だ。小人たちは、これを心待ちにしていた。なお、執事アンドロイドの配付計画もある。漸くアンドロイドを生産出来るようになったのだ。

 青葉台ドーム内の北側には幾つかの中型又は小型ドームが建設されており、その中には各種の工場や機械設備、多数の倉庫が並んでいた。


2.昇格

 重巡青葉の乗組員たちが、この惑星に来てから既に1年の月日が流れていた。

 その日、新たに落成した会場で1周年の記念式典が開催された。

 半年前の式典は簡素なものだったが、今回の式典は広い立派な会場に多数の参列者を集めて盛大に開催された。正式な記念式典だと実感する内容だ。

 会場前の広場では簡単なゲームや競技が行われていた。これには亜人たちも大勢参加した。


 式典が始まると乗組員たちが次々と表彰された。この1年間の苦労に報いるために、全ての乗組員が何らかの表彰を受けた。皆に各種の賞状又は感謝状と副賞が授与された。一人で複数回受賞した者も何人かいた。

 大勢の亜人たちが招待されて式典に参列している。彼らの中からも多数の受賞者が出て、賞状或いは感謝状と副賞を貰った。彼らは渡された副賞を見て、小躍りして喜んだ。


 そしてこの日、幹部の人事異動が発表された。

 山本艦長は大佐に昇格した。副長は戦闘艦勤務20年を経過したため地上勤務扱いとなり、中佐に昇格して基地司令官に昇進した。


 勿論、彼らは地球から遠く離れて孤立している。この昇格人事は、重巡青葉幹部が独自に決定して実施したものだ。


 不破と緑川は、既に表彰状と副賞を幾つも手にしていたが、再び名前を呼ばれてステージに上った。 二人とも中尉に昇格したのだ。

 辞令と新しい階級章、それに記念品が贈られた。本来、緑川のコースでは任官後2年で中尉に昇格する。半年ほど早いのだが、シュメール星での彼女の活躍が認められて、この度めでたく昇格した。同時に計画室長の職名を拝命した。

 同じく、不破も通常よりも半年早く昇格した。


「おめでとう。二人揃って昇格して良かったわね」

 秋元保健長がステージから戻って来た二人に言った。緑川たちはお礼を言った。

「それにしても、あなたたち二人はお似合いだわ」

「何を言っているのですか。私たちは…」

「そんなに恥ずかしそうに赤くなって、しどろもどろで否定されても、ねえ」と秋元保健長は矢部軍医と顔を見合わせながら言った。矢部軍医もうなずいた。

「赤くなっていません」何をでっち上げるのかと緑川は思った。

「今の俺たちは、この人たちに口では敵いません」と不破は緑川にささやいた。

 不破は以前にも、二人のことで冷やかされている。否定するつもりは全くないので、言われるままになっていた。

「何、あきらめているのです」

「俺は緑川さんとのことなら、言われても構いませんよ」

「えっ」


 そのとき、会場のアナウンスで秋元が呼ばれた。彼女も技能中尉に昇格したのだ。

 秋元は戻ってくると緑川たちに言った。

「何で私まで昇格したのかしら」

「怖いからじゃないですか」と水谷少尉が口を出した。

「青葉の女傑三人衆の一人ですからね」と不破が言った。


 秋元は文武両道の女傑として知られている。実は彼女はエリート官僚だった。しかし冒険がしたくなり、惜しげもなく官職を投げ捨てて重巡青葉に乗り込んだのだ。しかし、適当な職種がなかったので、間に合わせで保健長をやっていた。皆、彼女には一目置いている。


「何、あ~、残りの二人は艦長と緑川さんね」

「え、私。矢部さんでは」

「私は非戦闘員だから違うわ。虫も殺さぬいい女ですから~」

「人は切るけどネ」と、メスを持つ手つきで凄んだ。彼女は外科医なのだ。

「怖い、やはり女傑四天王にします」と水谷少尉が訂正した。


 式典の後の宴会には、亜人たちも参加して親睦を図った。宴会は参加者多数で盛況だった。

 田中隊員も2曹に昇格した。マリーたちに祝ってもらい幸せだった。


 翌日、緑川は山本艦長に会ったときに昇格のお礼を言った。

「半年も早く昇格させていただきまして、ありがとうございました」

「戦時ですからね。でも、あなたの実績によるものですよ」


 山本も戦時につき、通常よりも早く次々と昇格を果たしてきた。そして今回は大佐に昇格した。

 山本は微笑みながら話し始めた。

「でも、私たちは人間社会から遠く離れてしまいました。帰還の目途が立たない現状では、これからも今までの制度や習慣、常識が通用していくとは限りません」

「そうですね。いつまで現在の規律を維持出来るのか分かりません…」

「私は事態が落ち着くまでの間、現在の制度や秩序を維持したいのです。しかし、やがては新しい体制に移行するかも知れません」

「重巡青葉の乗組員から、シュメール星の住民に変わりますか。軍人から民間人に戻るのですね」

「やがては、社会的な裏付けを失ったエリート制度は否定されないとも限りません。でも、能力が高い人ならば、実績を上げて実力を示して周囲を納得させればよいのです」

「はい。自己に有利な制度に頼らず、実績を上げるように心掛けます」

「これからも緑川さんは活躍し続けて、高い能力を示し優れた実績を残してください」

「はい、ありがとうございます。頑張ります」

「シュメール星住民の新体制については、何れ検討しましょう」



3.開墾

 ある日のこと。マリーが田中に相談事を持ちかけてきた。

「ヒトは青葉台の東で稲作しているよね」

「東部田園だな」

「あそこの水利施設から水を分けて貰えないかしら」

「何で」

「近くの土地に畑を作りたいの」

「何?畑。誰が耕すの」

 彼は、意外な話に面食らった。

「オークを雇って作物を栽培したいの」

「何を栽培するの」

「これ」

「サツマイモか」「確か品種名が紅トカゲとか」

「違う」

「石焼き芋、すごくおいしいの」「こんなに美味しいものは食べたことがないわ」

「他の食べ物でも、いつもそう言っているよね」

 彼女たちは初めて口にしたヒトの食べ物のほとんど全てで、そのように言っているのだ。

「このデザートは格別なの」「これを沢山作って沢山売るの」

 マリーは瞳を輝かせて言った。そして、大きな焼き芋を四分の一に割って、その一つの皮を剥いた。田中は渡された芋の大きな欠片を口に放り込んだ。確かに美味しかった。

「すごく美味いね。焼き方が良いのかな」

「焼き芋屋のおじさん直伝よ」

 マリーは得意そうに言った。

「焼き芋屋のおじさんて、戦闘隊長のこと?」「ア、今は開発隊長か」

「知っているわよ。芋屋のおじさんの隊長様」

 マリーは、クックックと笑った。

 以前、青葉台の食品検査棟で石焼き芋の試食イベントを行っていたときに、マリー達は毎日通って焼き芋作りを手伝っていたのだ。

 彼女は、その時すでにオークを雇い芋屋のおじさんに弟子入りさせていた。

 田中は、小人達が石焼き芋を喜んで食べる姿を沢山見ている。オークたちも喜んで食べていたことを思い出した。これは売れるだろうと思った。

「オークや他の小人たちを雇って、マリーが事業の経営をするのかい」

「まかせなさい」

『うんうん』と首を何度も縦に振って笑顔を見せるマリーを、彼はじっと見つめた。その仕草はヒトの仕草が移ったものだと彼は気付いた。彼女の行動は、まるで人間の様だと田中は思った。


「明日は、あなたのお仕事は休みでしょ。畑にする土地を見に行きましょうよ」

 明日は田中の休みの日だ。最近、休日はマリーたちを車に乗せて周囲をドライブすることが恒例となっている。

 ただし、車はキャタピラ付きのものだ。戦車のキャタピラの様な物の上に、長方形の車体が乗っている。だが、平坦地ならば時速100キロメートルは出せる。その上、緩衝装置の性能が良いので、客室では車の振動をほとんど感じることがなかった。車の乗り心地は良く、休日のドライブは彼女たちに好評だ。


 青葉台周辺には各種施設が多数設置されている。資源採取所や野生生物の監視設備、探検隊の中継基地などが点在しており、そこは安全地帯になっているのだ。それらの施設の敷地内や、その他の適当な場所を見つけて、皆でお昼のお弁当や間食を食べることが楽しみとなっていた。弁当作りには田中も積極的に参加している。明日のドライブはマリーの案内で現地を見に行くことにした。


 東部田園の近くに小高い丘がある。丘の上は平たん地で草原だ。背丈が2メートル程の草が生い茂っていた。丘へ登る道は大型車両が通行可能だ。しかし、その道以外の丘の斜面は急こう配なので恐竜は登れない。

「登り口の周囲に柵を設ければ、大型野生動物は登れないね」

「そうでしょ」

「飛竜や鳥対策に、防護柵を設置してハウス栽培にすれば大丈夫だ」

「でしょ。水源さえあれば、作物を作れるわ」

「青葉台のハウス栽培は水耕栽培だけど、ここでは土を耕して作物を栽培をするのかい」

「そうよ、ヒトの魔法で作る作物は美味しいけど、やはり土から生えてくる作物が安心なの」

「やってみるか」

 しかし、導入する給水パイプや水を丘に上げるための高圧設備などは田中の手に余るものだ。司令部本部が作ってくれなくては無理だと思った。田中は駄目で元々と思い、司令本部に事業計画書を提出した。


(バーチャル会議室)

「あっという間に、石焼き芋は品切れになりましたね」

「私たちの分しか生産していないのに、ほとんど亜人たちに食べられてしまいました」(泣

「私、1回しか食べられなかった」orz

「直ぐに在庫は加工用だけになりました、とさ」

「今年も芋を作りますので、また冬には石焼き芋が食べられますよ。でも、増産はできません。他の作物の生産で手一杯です」

などと皆が会話(チャット)していた。


「この事業計画は認可しましょう」緑川は決裁した。

「畑の土地は無料貸与ですね。この件は急いで処理します」

「あと、畑の開墾に必要な自動耕作装置を、申請者に無料で貸し出しても良いですね」と係員は確認した。


 申請から一週間後、意外に早く東部田園の水利利用許可が下りた。丘の開墾は支援事業として認可されたのだ。マリーと妹たちは、張り切って事業を立ち上げるための準備を始めた。とりあえずマーケットを回って、開墾に必要な物品を買い集めた。オークや小人を数人雇用した。田中も勤務外の時間は彼女たちに同行して手伝った。勿論、必要な資金は彼が用意した。




4.巨大恐竜

 南部鉱山地帯では山麓に住むオークが山に登り、開発中の鉱山に侵入して機材を破損し、備品や鉱石などを持ち去る事件が頻発した。

 水谷少尉(開発長)がオークとの交渉を担当している。彼をチームリーダーとして南部亜人対策チームが結成された。

 直ちに彼らは小型連絡艇で空路、南部鉱山地帯に派遣された。そしてその地に宿泊して、亜人との対応に当たった。現地には新造された護衛戦車など4両のほか、寝台バスと給水車が各2台追加配備された。


 南部鉱山地帯の亜人たちは、青葉台周辺の小人やオークとは異なる言語を話す。南部亜人対策チームは現地到着後、直ちに通訳の小人を通じて彼らと交渉を開始した。そして再び翻訳データの収集作業を始めた。


 水谷少尉が青葉台司令部に報告をしていた。

「青葉台近辺の小人を通訳として雇いました。南部高山地帯山麓の小人に接触しています」

「言語解析チームは、南部オーク言語データの収集を小人に依頼しました」

 通訳の小人たちから、南部小人たちに録音機が渡されていた。これで、南部小人とオークの言語データを収集する予定だ。

 

 そんなある日、南部亜人対応チームの調査隊は亜人たちと巨大恐竜に出くわした。草原で十数人のオークと巨人たちが、3頭の恐竜に襲われていたのだ。

 この恐竜は全長30メートルで2足歩行だ。肉食恐竜で、これ程大きなものがいるとは想定外だ。しかし、襲われた巨人が一飲みにされる様子を一行は目撃した。


「目標、巨大肉食恐竜。撃て」と水谷少尉は号令した。

 新造の護衛戦車が超巨大恐竜を攻撃した。これまで戦ったことのある恐竜とは違い、直ぐには倒れない。こちらの車列目掛けて突進してきた。しかし、100メートル手前で先頭の1頭がどっと倒れると、残り2頭も次々と倒れて絶命した。

 それまで逃げ回っていた巨人やオークたちは、これを見て呆然とした。しかし、直ぐに狂喜乱舞するのだった。そして、亜人たちの姿が次第に増えて遠巻きにこちらを見ている。

 調査隊は亜人に構わずに倒れた恐竜を調べた後、帰途についた。すると亜人たちは歓声を上げて倒れた3頭の恐竜に群がった。

 翌日、通訳の小人が帰ってきて、南部亜人たちからの申し出を我々に伝えた。彼らとの交渉は順調に進みだした。


(青葉台司令部の作戦室)

「機関砲は、あまり効果がありませんでした」

 パネルに写る水谷少尉が報告した。

「この恐竜の皮膚は非常に硬くて厚いので、機関砲の炸裂弾では撃ち抜くことができません」と矢部軍医(生物分析チーム長)は言った。

 矢部軍医は蒲鉾型兵舎にいるため、アバターでの会議参加だ。

「この惑星の生物に見合った武器を作ったはずなのに」と小川技術中尉は不満そうに言った。

「強力なライフル銃を装備してみますか」と不破中尉が提案した。

「そうですね。急いで製作します」


「こんなに巨大なやつ、何故、今まで見つからなかったのか」と加藤隊長がぼやいた。

「超ギガノトサウルスと名付けています。大陸の西部平原南部で発見していましたが、詳しい調査はしていません。短期間のうちに約4,000キロメートルを移動して東南部に来ました」とパネルの画像を操作しながら緑川が答えた。

「何しに来たんだ?」

「小人の話では、西南部が雨季に入る前に東南部の台地へ移動してくるそうです。営巣のためですね」

「西部平原南部は3月頃雨季に入りますが、平原が湖のようになってしまいます」

「因みに、私たちが南部鉱山へ進出したのは昨年ですが、超ギガノトサウルスが西南部へ戻った後でした」

「個体数は、どの位ですか」と水谷少尉が尋ねた。

「衛星写真の分析から、現状では南部鉱山の麓、西側200キロメートル圏の半円形内に約120頭の超ギガノトサウルスがいます」

「そんなに沢山いますか」

「掃討するには、援軍を出さないと無理だね」と島影管理室長(中尉)が言った。

「無人兵器が足らない」と不破中尉は両手を広げた。


「東部田園都市と南部鉱山に西部油田地帯と、併せて3個隊が宿泊中。青葉台近辺の田んぼ、巨人領の鉱山、オーク領の鉱山へ各1隊の作業隊や輸送隊を毎日出すから」と島影管理室長。

「宿泊している部隊は別として、青葉台から出す3個隊の護衛戦車をそれぞれ1両減らしても」と緑川。

「予備の護衛戦車が7両しかない」と不破中尉が言った。

「護衛戦車を量産しますか」と小川技術中尉が聞いた。

「お願いする」と加藤隊長。

「原材料は大丈夫ですか」と緑川が尋ねた。

「今は、かなり在庫がある。倉庫は、いっぱいだよ」と島影管理室長はニヤリと笑った。

 最近は資源開発が順調に進んでいた。青葉台の倉庫は、大小各種鋼材や炭素繊維の巨大なロール、各種石油化学製品の資材などで満杯になっていた。

「よし、ひとまず予備の護衛戦車を全部、南部鉱山に送ろう」と加藤隊長は決めた。



5.出動

 田中隊員は一日の勤務を終えて帰ってきた。

帰宅すると直ぐに、マリー(小人)を自室に呼んで話をした。

「何よ、改まって」

「実は近々、南部鉱山へ行くことになった」

「出張?」

「向こうに泊まり込みで勤務する」

「何時から。どの位の期間出張するの」

「分からないけど、2~3日中に出発かな。1週間くらいは現地勤務になるかも知れない。南部鉱山周辺に超ギガノトサウルスが来ていから、討伐することになる」

 超ギガノトサウルスの立体画像を見せながら言った。

「これは」「……」「行かないで」

 マリーは田中隊員に抱き着いた。

「この恐竜は巨人も敵わない。巨大で獰猛なやつよ」

「大丈夫だよ。こちらには武器がある」「先日、現地の調査隊がこの3頭を倒した」

 その時の立体映像を投射して見せた。

「凄い。でも気を付けてね」「私は、あなただけが頼りなの」

「施設が恐竜に襲われると、急に出撃命令が出て家に帰れなくなるかもしれない。マリーに連絡できないからね。そのつもりでいて」

 軍の行動は基本的に機密扱いだ。恐竜退治ならば情報公開して構わないのだろうが、その判断は上層部がすることなのだ。


部屋の外で小さな物音がした。ドアの外には、マリーの妹たちが聞き耳を立てて様子をうかがっている。田中を頼りにしているのは、マリーだけではないのだ。


 この新住宅に引っ越してきたとき、マリーとその妹たちは立派な建物とその大きさに目を見張って驚いた。屋内に入ると、その広さと豪華さに『凄い、凄い』を連発して大いに喜び乱舞していた。ここは、以前住んでいた重巡青葉居住区の2DKの部屋よりも、6倍以上も広いのだ。

 彼女たちは、この快適な住宅に住めることを心から感謝していた。田中は小人たちが、自分を称賛の目でみて出迎えていることを自覚していた。

 『私がいなければ、この子たちは、ここに住んでいられなくなる』彼女たちは人外だが、田中隊員は責任のようなものを感じた。既に家族になっていたのだ。

 『無事に帰らなくては』マリーを抱きしめながら、そう心に誓った。


 程なくして、巨大肉食恐竜は撃退された。獲物の多くは亜人たちに振舞われて、彼らとの友好関係を構築することに寄与した。

 田中は無事にマリーたちの元へ帰った。彼女たちに大歓迎されたことは言うまでもない。

 こうして彼らは恐竜や飛竜を追い払い、亜人たちと共にその生活圏を拡大していった。





                  了


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