05話 だけど高校で青春したい
暇ね…学校、行こう。
う~ん、いざ仕事を辞めてニートになると…。
……暇ね。
「お金の心配がないのは嬉しいけど、こうも暇だと普段の生活がおかしくなりそうだわ。」
リングの検証も終わり、今の時間は平日の昼。
よみちも夕希も学校だし、友達も皆仕事をしている時間帯だ。
このぐうたら生活を、私は望んだはずなのに…。
どうしよう、リングの力を使わず1日を終えるのは、何かもったいない気がする。
……やっぱりお金の次に欲しいものは、彼氏かしら。
いきついた答えが、彼氏であった。
では、どうやって彼氏をゲットしようかしら。
この前みたいに、異世界王子を召喚しようか?
思えばあれは、無計画過ぎたわ。
王子の生活も考慮しなければ…。
異世界王子もいいが、青春っぽい出会いも憧れるわね。
友達に彼氏との出会いを聞かれた時、おそらくどこで出会ったの?と聞かれるだろう。
その時に、学生の頃から付き合っていて~というのは、理想の一つだ。
うん、これはいいかもしれない。
よし、私も高校生活をやり直そう。
というわけで、夜。
よみちと夕希に、私は2人が通っている高校に編入する旨を伝えた。
「…姉ちゃん、正気か?」
失礼な弟だ。
「正気よ。私も楽しい高校生活をやり直したいのー!」
「姉さん、冷静に考えて。大学ならともかく、21歳の姉さんが高校生活は不可能だよ。イメクラだよ。」
コスプレと言わず、イメクラと言うところによみちの私へのドン引き具合が現れてるわね…。
「大丈夫、歳も16歳の高1にするから。」
さすがに私も、この歳この見た目で高校生活をリテイクするつもりはない。
というより、勝算がない。
残念ながら私はよみちのように絶世の美少女でもなければ、夕希のように頭がいいわけでもない。
「ちょっと盛った感じで高校生の見た目にするわ。2人はフォローよろしくね。」
「姉さんが、私たちの学校の学力についてこれるか不安…。」
「だからそこは、ステータスを盛るわ。」
よみちと夕希が通っている高校は、全国でも有名な進学校だ。
さらには文武両道が教育方針であり、部活動の成績も優秀である。
つまりは、並みの高校に通っていた私としては、内心2人が羨ましかった。
「姉ちゃんがオレより年下になって同じ高校に通うとか…悪夢だろ…。」
夕希が絶望したような顔をして呟いた。
そんなにショックな提案だっただろうか…?
「まぁまぁ。もし失敗したら、全校生徒の記憶を消してなかったことにするからさ。」
そうだ、ダメなら元に戻せばいいだけだ。
「面白そうだし、私はいいと思うよ。」
よみちは私の味方ね。
「ね、夕希も…。いいでしょ?ほら、学校でも私と一緒よ?」
「…それはたしかに。いや、姉ちゃんが心配だから、その方がいいってだけだけど。」
夕希の心はまだ葛藤の中にあるのか、煮え切らない返事だったが、先ほどよりは良さそうだ。
「じゃあ決まり!」
リングをつけていることを確認すると、私は左手を頭上に掲げポーズをとった。
さて、どう願うか…一度にたくさんの条件を付与してみようかしら。
「ドリームリングよ!私を天上高校に通う16歳の高1にして、見た目を16歳の頃の私より胸を大きめ、肌艶やかにして、勉強ができるようにして、誰も私の転入に疑問を持たないようにして!!」
我ながら注文が多い…!
が、ピカッとリングが光り、無事願いが聞き届けられたらしい。
私自身の身体が光り、次の瞬間、私の胸が大きくなっていた。
「これは…16歳の頃の私…!?」
「いや、整形状態みたいなもんでしょ。」
よみちの声を無視し、私は洗面所にダッシュした。
鏡に映った私は、間違いなく5年前に見慣れた私の顔だった。
…まぁ、あの時よりすこーしだけ顔がきれいで肌も潤い、胸も大きくなってるけど。
「夕希、どう!?私、可愛い!?」
後を追ってきた夕希に、感想を求める。
「…ああ、可愛いよ。16歳になっても、姉ちゃんは可愛い。」
口ではそう言ってくれたが、夕希の表情は少し寂し気だった。
…もしかして、夕希はあくまで年上の今の私の方が好みだったのだろうか…。
いやいや、だって血が繋がってないとはいえ、夕希は私の弟だ。
そんなそんな…でも、これで歳的には私が夕希の妹になったのか。
それ以上深く考えるとドツボにはまりそうだったので、お茶を濁しながらダイニングへと戻る。
「てことで、明日から私は天上高校の学生よ!よみち、一緒に登校しましょう!」
「姉さんと登校か~。あ、けっこう楽しみかも。夕希も久しぶりに一緒に行く?」
「…いや、恥ずかしいからやめとく。」
さて、これで私も再度高校デビューだ。
そういえばリングの力を1つ消化するだけで、願いを叶えることができたんだった。
かなり融通が利くリングね。
残り1つの願いで、ブレザーや通学カバンなど、必要アイテムの出現を願うことにしよう。
読んでいただき、ありがとうございました。
もっとキャラクターも増やしていけるよう、頑張ります。